表示件数
1

空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その①

全高約30m、両脚が翼のように変化した上下逆さの巨人のような、鉱石質のアリエヌスが、パッセリフォルムズの“天蓋”に衝突した。鋭い爪を具えた両手が障壁に衝突し、火花が飛び散る。
何度かの攻撃の施行の後、アリエヌスがふと顔を上げた。上空から、小さな影が迫っている。轟音を響かせ、小さな『脅威』が、確実に接近している。
「どっせりゃああああッ!」
気合の入った掛け声とともに、脚甲のブースターで超加速された蹴りが、アリエヌスの肩に叩き込まれた。身長約165㎝、決して恵まれた体格ではないながらも果敢に一撃を決めたその少年は、手に鎖の先端を握りしめている。鎖は慣性に従ってアリエヌスの首の後ろに回り込み、別の少年が鎖から繋がった刃を、アリエヌスの背中に叩きつけた。刃は深々とアリエヌスの身体に突き刺さり、鎖使いの少年はそこに着地する。その小脇に抱えられた毒蛇を模した金属製の杖を握った少年が、蛇の咢をアリエヌスに向けた。
「発射!」
蛇の毒牙から腐食液が発射されアリエヌスの体表から煙が上がる。アリエヌスが咆哮をあげながら身を捩り、鎖使いと蛇杖使いは空中に放り出された。その二人を脚甲使いの少年が空中で受け止める。
「ナイスキャッチだリーダー」
「あいつデカ過ぎんよリーダー。おれの腐食液が弾切れしちゃうよ」
“リーダー”と呼ばれた少年、カズアリウス・カズアリウスは“天蓋”の上に着地し、ニタリと笑った。
「何、問題無ぇ。俺達はとにかく真っ先に突っ込んで、ヤツらの周りをウロチョロしくさりゃ良いんだから」
「そういやリーダー、ケイ先とゾッさんは?」
鎖使いの少年、サジタリウス・サルペンタリウスが尋ねる。
「あの二人は高校生だからなァ、何か、定期テストでどうしても抜け出せないんだと」
「はぇー、大きくなるって怖いなぁ。できれば早めに殉職したいもんだ」
蛇杖使いの少年、ピトフーイ・ディクロスが呟いた。
「お前なぁ、怖いことを言うんじゃありません」
「ゴメンナサイ」
その時、3人の背後から巨大な斬撃エネルギーが飛来し、アリエヌスを両断した。
「……終了、お疲れ!」
「今の誰かなぁ」
「規模と威力的に“鳳凰”か“八咫烏”じゃねッスか?」
3人は墜落していくアリエヌスに背を向け、駄弁りながら帰還を開始した。

0

飛龍造物茶会 Act 17

「トゥイーディア、これはお前のためでもあるんだ」
どうか許してくれ、とキャスは槍をキヲンに突き刺そうと槍を持つ腕を上げる。
「や、やめてくれ、やめてくれキャス」
コイツは本当になんでもないんだ、ただの…とトゥイーディアはキヲンに覆い被さる。
だがキャスは気にせず槍を振り下ろそうとした。
トゥイーディアは思わず目をつぶってキャスから顔を逸らすが、何も起こらない。
その代わり、甲高い金属音と誰かが倒れる音が聞こえた。
「…?」
トゥイーディアが恐る恐る顔を上げると、キャスが黒髪黒目でゴスファッションを身に纏い、背に黒い蝙蝠のような翼を生やしたコドモが、地面に倒れているキャスに覆い被さるようにして、蝶が象られた黒鉄色の大鎌をキャスの首に向けている。
そしてキャスは自らが持つ槍で大鎌を防いでいた。
「…アンタは」
「ナ、ツィ?」
トゥイーディアが言う前に、キヲンが声を上げる。
黒髪のコドモはキヲンたちの方を気にせず、テメェ、なにしてやがると呟く。
その大鎌を持つ手にはキャスの槍を押し切らんばかりに力を入れていた。