「っ‼︎」
トログは大剣の形に変形させた“Reginae Gladio”をアカとクリスの前に掲げ、光のバリアを展開して飛来してきたアリエヌスを防ぐ。カマキリのような体高数メートルほどのアリエヌスはトログのレヴェリテルムを押し返そうとするが、彼は負けじと“Reginae Gladio”に力を入れて踏みとどまる。それを見たモザとロディはそれぞれのレヴェリテルムを向けてエネルギー弾を発射し、アリエヌスをトログから遠ざけた。
アリエヌスが後方へと飛び退くと、トログは力が抜けたようにへたり込んだ。
「トログ!」
我に返ったクリスは慌ててトログに駆け寄る。
クリスに「大丈夫かお前……」と訊かれるトログは「へーきへーき」と笑うが、その顔は青ざめている。クリスは心配そうに「無理すんなって……」とトログの両肩に手を置いた。
その様子を見るアカは口を真一文字に結んでいたが、悲鳴のような声を上げて突進してくる先ほどのアリエヌスに気づきそちらへ駆け出す。そしてそのアリエヌスが飛びかかる前に“Aurantico Equus”でそのアリエヌスを切り裂いた。
そして仲間たちが驚くことにも気にせず、アカはそのまま天蓋を蹴って宙へ舞い上がる。クリスが呼び留める間もなく、アカは上空より飛来するアリエヌスの群れへと突っ込んでいった。
「はぁぁぁぁ?いいじゃん別に、譲ってよ。」
どうしてこんなにブチギレているのかというと···
----回想----
「あのさ、うちら足遅いんだよね。7か8番目がいいんだけど。」
「は?いや、無理だけど」
ということだ。
でもここでの小競合いのことを多く語る時間はないので飛ばします。
「っっしゃあああああ!」
見事7番目を勝ち取ることになったのは···
「ふざけんなああああ」
さっきまで言い合いしてた男子···
譲ってくれればいいのに···
結局12番目という微妙に大事なところに収まったのだった···
「アカ‼︎」
近くでレヴェリテルム“Reginae Gladio”を構えていたトログがそう声を上げると、先ほどアリエヌスを両断した人物ことアカはちらと彼の方に気付いて、刀型になっているレヴェリテルム“Aurantico Equus”を握り直す。それを見たクリスは「おい」とマシンガン型に変形させたレヴェリテルム“Caeruleum Diadema”を担いでアカに近付いた。
「アカ、一体どこ行ってたんだ」
「心配したんだぞ」とクリスはアカの襟首を掴んで尋ねる。アカはなにも答えず、それを見ているトログは「ちょっとクリス落ち着いてよ〜」と慌てる。
「ボクたちも出撃命令があったのに上に上がるまで時間がかかっちゃったから……」
「そうじゃない!」
トログの擁護に対し、クリスはそう声を上げる。トログは一瞬驚いて動きを止め、モザやロディも驚いたような顔をする。クリスは続けた。
「勝手な行動で死なれちゃ困るんだよ‼︎」
「もしそうなったらどうするんだ……!」とクリスはアカの目を見る。アカは相変わらず無言のままだ。
「俺は、俺たちは……もう仲間を失いたくないんだ」
「だから1人で勝手に行かないでくれ」とクリスは声を震わせる。トログ、モザ、ロディはその様子を静かに見ていたが、アカは「……そんなの」とポツリと呟く。
「自分には関係ない」
「そんなの!」
「関係ないものは関係な……」
クリスの言葉をアカが遮った時、「危ないっ!」とトログの叫び声が聞こえた。2人がハッとして辺りを見回そうとした時、そばで甲高い金属音が響く。
私の心の中から出ていかないで
私を1人にしないでください
あなたがいてくださるから私は生きていけるの
ラニウス ブケファルス Lanius bucephalus
年齢:14歳
身長:152cm
カテルヴァ:未所属
レヴェリテルム:Uccello balla lingua cento
普段は薙刀であるが、斧に変形させることができる。
備考:年齢よりも幼稚な部分が目立っていたが、最近は落ち着いているためカテルヴァに所属させることを検討中。情緒が安定せずイライラしがちなので定期的な検診とカウンセリングを推奨。
アリエヌス襲来の一報から約5分、パッセリフォルムズの壁から都市を覆うように光でできた障壁——天蓋が完全に展開したころ。
パッセリフォルムズの壁の中のエレベーターで壁の上に昇っていったトログ、クリス、モザ、ロディは、手持ちのケースから既に取り出したレヴェリテルムを携えて、戦場に飛び出していた。
「ったく、あいつどこ行ったんだ……?」
「勝手に飛び出しやがって」と大太刀型から大砲型に変形させたレヴェリテルム“Viridi Canticum”を撃ちつつモザは呟く。
周囲では天蓋の上で同じカテルヴァ・サンダーバードの仲間たちが飛び道具型に変形させたレヴェリテルムで空から迫り来るアリエヌスを撃ち落としており、上空には既に出撃しているアヴェスたちが宙を舞いながらアリエヌスと戦っていた。
「まだおいらたち、仲間になってから日が浅いのに」
「なぁロディ?」とモザは近くで2つの銃器型レヴェリテルム“Rosea Choro”を空に向けるロディに尋ねる。
「そーだねー」
「でもアカもアカで色々事情があるんだと思うよー」とロディは返す。
「どんな事情だよ」
「そりゃ“戦うこと”しか考えられなくなる事情だよー」
「ふわっとしてんな!」
モザとロディはそう言い合うが、途中で「モザ! ロディ!」というクリスの声が飛んでくる。2人がハッと顔を上げると、上空から体長1メートルほどの蝙蝠のような姿をしたアリエヌスが突っ込んできていた。
2人は咄嗟にそれぞれのレヴェリテルムを構えるが、その瞬間アリエヌスは飛んできた何者かによって真っ二つにされる。モザとロディが驚く間もなく、その人物は天蓋の上に降り立った。