「真っ赤な手のひら」
真っ赤な手のひらが重なり合って
カーペットを敷いてくれる
それに答えて
私がくるりと回ってみせると
みんな一斉に拍手する
「そんなに叩いて痛くない?」
“ううん、全然痛くない”
嘘だ
だってあんなに真っ赤だもの
それでも
割れんばかりの拍手は続く
「そんなに拍手をしなくても」
ほんの少し
私も赤くなる
だけどもまだまだそれは鳴り止まない
お母さんって、なんでああいつもむかしのことほじくり返して怒ってくるわけ。うんざりなんだけど。
更年期障害だろ。
やっぱりそう思う?
冗談だ。……過去にとらわれるのは、未来に対する不安があるからだな。
興味深い見解。
未来が不安だから目の前の現実に余裕を持って対応できない。結果、すべてが思うようにいかないと感じてしまうことが多い。自覚があればよいが、ないから無意識に問題点を過去からさがそうとする。さらにいまに集中できないことが反すう思考、フラッシュバックにつながり、悪循環となる。
なんか、お母さん、かわいそうだね。
お父さんがいるから大丈夫さ。
かっこいい。
いま現在、お父さんが心身ともに健全でいられるのは過去のおかげではなく、まさに未来へとアクションを起こしているからだ。
具体的には?
お母さんにはまだ言ってないが、仕事をやめた。
そうなんだ。……お母さーん!