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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 サマーエンカウンター ⑬

「黎がどこかへ出かける途中だったらどうすんだよ~」
そう言いつつ少年…耀平はネロの方を呆れた目で見やる。
ネロはえーいいじゃーんと返した。
「暇なら一緒に遊びたいと思ってさ~」
それくらいいいでしょ~?とネロは口を尖らせる。
自分は思わず、え、と呟いた。
「一緒に、遊ぶ…?」
「うん」
駅前のショッピングモールに行くの、とネロはうなずく。
自分はつい言葉を失ってしまう。
なぜなら自分はほとんど友達がいないため、”他人と遊んだこと”がまるでないのだ。
そのためどうしたら良いのか分からず固まってしまう。
「ねぇ黎、この後暇だったら一緒にショッピングモールに行こうよ」
いつも2人だけで行ってるから、他の人も混ぜてみたいしとネロは続ける。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉑

全身を泥と出血に汚した鬼が、芋虫のように五体を蠢かせ、ふらふらと立ち上がる。
『おおおォォォ……グッ、うウゥゥゥ……! 逃げ……なくては……! 体力を……回復サセなくては……!』
呻き声をあげる鬼の両腕は力なく垂れ下がり、全身の傷からは止め処なく血液が噴き出している。
(……右腕は、ピクピク動いてる。多分まだ動かせるな。左腕は完全にイってる……それなら……)
刀剣を握り締め、蒼依は鬼に向けて駆け出した。刃の間合いに入る直前、鬼の右腕側――蒼依から見て左側に大きく踏み込み、鬼の顔が彼女に向いたのを確認したのと同時に次の一歩で大きく鬼の左手側――蒼依から見て右側に飛び込んだ。フェイントである。
(いける……!)
しかし刃が脇腹を捉える寸前、鬼は上体を前屈させ、『折れている左腕で』殴りつけたのだ。
「ぐッ……!」
蒼依は刀剣型だった“奇混人形”を人型に再変形させて、身体を支えさせる。
「……折れてたろ」
『ハアアァァァ? 一向に動かせるンダガァ?』
不自然な方向に曲がり青紫色に鬱血した左腕を、胴体を揺らす慣性によって振り回しながら、鬼は主張する。
「天邪鬼がよぉ……」
蒼依の呟きに、鬼の動きが止まった。
「……? ……おい、まさか」
『違ェぞ! 誰が天邪鬼なモンカ!』
「お前……鬼は鬼でも“天邪鬼”かよォ!」
“天邪鬼”は不意に蒼依に背中を向け、森の奥へと逃げ込もうと試みた。しかし、交戦中に背後に回っていた冰華が道を塞いでおり、退路が潰されている。
『退ケェ!』
「退かない!」
『なら退クナ!』
「退かない!」
『コノ餓鬼ガァ!』
天邪鬼は右腕を振り上げ、長く鋭い爪を冰華に向けて振り下ろした。