ナツィとかすみが衣料品店で服を選び始めてから暫く。
何着か試着をした結果、かすみはどれを買うか決めてレジで会計を済ませた。
そして2人は買ったものが入った紙袋を持って店をあとにした。
「…ホントにそれでよかったのか?」
かすみ、とナツィは商業施設の片隅にある大手チェーンの喫茶店の、店外にある丸テーブルの周りに置かれたイスに座りながらかすみに尋ねる。
かすみは、イスの脇に置いた紙袋に目を向けつつ、うんと頷く。
「やっぱり、自分にはああいうフリフリした服はなんか違うと思って…」
「だからといっていつものと同じような白いブラウスを1着だけとか、ちょっともったいないんだけど」
かすみの言葉にナツィは頬杖をつく。
それに対しかすみは苦笑いした。
「やっぱりいつものが1番だからね」
自分にはそれがぴったり、とかすみは目の前のテーブルの上に置かれたミルクティーのグラスに手を伸ばす。
ナツィはなんだよ…と不満げな顔をした。
「…いいなぁ、ナツィと2人だけでお茶だなんて」
「きーちゃんは紅茶苦手だろ」
「でもナツィと一緒なら嫌じゃないもん」
「なんだそりゃ」
ナツィとかすみが囲むテーブルから少し離れたところにあるテーブルを囲みながら、キヲンと露夏はひそひそ話をする。
2人は商業施設内の書店で買った手頃な雑誌や本を買ったときの紙袋で顔を隠していた。
たまにわたしは
ちょっとだけ事実を隠して話をする
「ずっと片思いしてたんだけどね」
「あの人絶対こっちのこと女として見てないから」
「今日すっごい塩対応されちゃって」
「あーあ、失恋しちゃったなー」
「もしかしてこれ、脈アリかな」
そういうときだけは
普通の恋する女の子になれるから
「…」
ギリギリのところでキヲンがナツィとかすみに気づかれることを回避させた露夏は、塞いでいたキヲンの口からそっと手を離す。
解放されたキヲンはぷはーと深呼吸をしつつ、ちょっと露夏ちゃん!と露夏に文句を言い出した。
「急に口塞がないでよー」
「いやだって、ナハツェーラーにバレたら怒られそうだし、第一尾行がバレたら意味ないだろ」
「それはそうだけど…」
キヲンと露夏はそう小声で言い合うが、やがてピスケスがちょっと、と2人を諫める。
「あんまり騒ぐと見つかるわよ」
ピスケスがそう声をかけると、2人はハッとしたように黙り込む。
そしてナツィとかすみの方を再度見やった。
ナツィはかすみの服装について色々と話しており、かすみはなんだか嬉しそうにその話を聞いている。
ナツィは自分たちに気づいていないことを確認したキヲンと露夏は、安心したようにホッと胸を撫で下ろすのだった。