そういう訳で、かすみとキヲンはナツィを探しに行くことになった。
しかしめぼしいところはあらかた確認したし、ナツィの家にも帰ってきていないという話は聞いていたのでどこも探しようがない。
それでもキヲンはナツィを見つけたいので、とりあえず協力を仰ぎにキヲンとかすみはピスケスがたびたびいる“学会”の拠点のある大学へと向かった。
「…ナハツェーラーを探しに行きたい、ねぇ」
「うん!」
だから手伝ってピスケス!と“学会”の日本支部がある大学の、レンガ造りの建物の片隅にある小部屋で、ソファーに座ったキヲンが目の前のローテーブルの向こうのソファーに座るピスケスに頼む。
ティーカップに入った紅茶を飲みつつキヲンの話を聞いていたピスケスは、そうねぇ…と右手に持つティーカップをローテーブルに置いた。
「確かのアイツがいないと寂しいけど、でも当人が構うなと言うのなら放っておいた方がいいんじゃないかしら」
ねぇ?とピスケスが右隣に目を向けると、ソファーの肘置きに頬杖をついている露夏が、そうだなと答える。
見る度に
うんざりするけど
嫌いじゃないの。
またこの空間に閉じ込められるのが
私を壁の花にする。
私は私で居たいけど
また固まっていく私が
今日も鏡に映ってる
見たくない。
行きたくない。
行くしかない。
「これが今日の私だ」と
言い聞かせて。
「ナツィがいそうなところを探してもいないし、家にも帰ってないっていうし…」
どこへ行ったのか全然わかんないんだよ?とかすみは返す。
それに対しキヲンは、でもとテーブルに身を乗り出す。
「ナツィがいないと寂しいし、そもそもかすみの元気がないもん」
だから、探そ?とキヲンは首を傾げた。
かすみはでも…と言いかけるが、キヲンはそれを遮るようにかすみ、と声を上げる。
「かすみはナツィのこと好きなんでしょ?」
「!」
かすみは少しハッとする。
「あれ、好きじゃないの?」
「えっ、いや、嫌いではないけど、でも、なんか…」
キヲンに聞かれてかすみはおろおろし始めた。
「ナツィが自分のこと好いてくれてるから、自分もそれなりに返してるだけで…」
実際どうと言われると…とかすみは困惑する。
キヲンはその様子を見て不思議そうな顔をしたが、とにかくさと椅子から立ち上がった。
「ナツィのこと、探しに行こ?」
ボクも好き好き〜なナツィに会えないの嫌だし、とテーブルの横をキヲンは通る。
「とりあえず、ピスケスや露夏ちゃんに手伝ってもらお?」
ナツィが好きかどうか考えるのはあと!とキヲンは椅子に座るかすみに手を差し伸べた。
かすみは驚いたような顔を少ししたが、キヲンが促すように笑っているので断り切れずにその手を取った。