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子供は適切な保護者に安全に教育されなければならない 後編

「たしか、テメェは…………まだ13歳だったか」
『ミネ』と呼ばれた男は、呟きながら足下に転がしておいた品を少年に向けて蹴り飛ばす。それに釣られて、少年の視線が足元に転がって来た品物に移る。それらは自動拳銃用のボックス・マガジンだった。
「…………?」
「どうした? ソレ使うなら替えの弾は無きゃ意味無ェだろ。拾えよ」
少年は一瞬の逡巡の後、素早くしゃがみ込んで弾倉を拾い上げた。そして立ち上がった時、ミネは既に少年の眼前にまで音も無く迫っていた。
「ッ⁉」
拳銃を向けた腕を、ミネは片手で掴み、照準から己の身体を外す。続けて少年が振るおうとした空いた片手も片手で押さえ、最後の抵抗に放たれようとしていた蹴りも、両脚を片足で踏みつけるように抑え、抵抗の余地を完全に潰す。
「銃1丁で強くなった気でいたか? クソガキが……」
もがく少年を意に介すこともなくミネは上体を仰け反らせ、少年の額に勢い良く頭突きを直撃させた。
「がっ……!」
拘束を解くと同時に、気絶した少年がその場に崩れ落ちる。倒れた少年の頭を軽く一度蹴ってから、ミネは通信用インカムを起動した。
「…………もしもォし、こちら〈番人〉」
『……はぁい、こちら〈医務室長〉。何だいミネさん先生』
「ガキが脱走しようとしてたから止めた。回収しろ」
『了解。今日は誰だい?』
「ロタ。……ああ、あと一つ」
『何?』
「拳銃と弾倉パクってやがった。没収はするなよ」
『良いのかい? また逃げる時に使われるよ?』
「ガキの鉄砲ごときで止められるなら〈番人〉やってねェ」
通信を切り、ミネは再び塀の上によじ登り、監視を再開した。

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Side:Law in Black Market 保護者

MNE-015
性別:男  年齢:25歳  身長:177㎝
好きなもの:子供、銃器
嫌いなもの:悪人
“ブラックマーケット”の一角にある施設、通称『学校』に所属する男性。役職は〈番人〉。主な仕事はたまに現れる脱走しようとする子供を張り倒してでも止めて元の部屋に投げ返すこと。
子供という生き物をナチュラルに下に見ており、ただでさえ危険なブラックマーケットに自分すら超えられない者を放り出すわけにはいかないという思いから、脱走者を叩きのめす際にはできるだけ汚くて理不尽な戦法を意図して用いている。これすら超えられないようなら脱走なんて許せるわけが無ェ。
脱走者が出た日は子供を殴ったストレスで一日中機嫌が悪くなる。一度寝ると元に戻るが、そもそも素で目つきと言葉遣いがあまりよろしくない。不機嫌モードではそれらが4割増し程度に悪くなり、声を掛けられた時の反応が「あ?」から「あ゛ァ⁉」くらいになったりする。また、子供の呼び方が素で「クソガキ」だが、「クソガキ=子供=保護すべき対象」という等式が脳内で成立しているため、「クソガキ」扱いしている子のことは命に代えても守ってくれる。
脱走者以外に手を上げることは無い上にスタンスが一応「子供は守るもの」側なので、脱走経験0の子供からはそこまで怖がられてはいない。
ちなみに本名は色々あって捨てた。現在の名前は上層部が呼び方に困って取り敢えずでナンバリングしたもの。あとでちゃんとした名前つけようねって言ってたらタイミングを逃した。渾名は「ミネさん」。

※『学校』:ブラックマーケット区域内で大人の保護者が周囲にいない子供をその事情を問わず攫い、最低15歳、最高18歳までの期間を拠点敷地内に監禁し、様々な教育と養育を行ってから多少の現金と希望された武器類だけを握らせて解放するという謎の活動を行っている組織。少なくとも監禁されている子供達は外と違って絶対に生命の危機に晒されずに済むが、『学校』側の解放より早く抜け出そうとするとボコボコのボコにされて止められる。「ブラックマーケットの浮浪児を使って何か大規模な悪事を働こうとしているのではないか」みたいな噂も流れているが、真相は創設者にしか分からない。

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鉄路の魔女:Nameless Phantom キャラクター

・“埼玉馬車鉄道の幻影”
外見は鹿毛の馬の下半身から、長い銀髪が特徴的な人間の少女の上半身が生え、両腕と馬脚の脛より下が機械仕掛けに置換されている外見。固有武器は巨大な金棒。
かつて、現代より遥かに昔、構想だけで消え去った哀れな未成線の記憶から生まれた鉄路の魔女。
彼女を『覚えている』人間は皆無に等しく、当然のように幻影化したが、生い立ちが「廃線」ではないためか、不完全ながら自我を残している。調子が良い時は自分の元になった鉄道が走るはずだった場所をふらふらと歩き回っている。
幻影化しているせいで鉄路の魔女にしょっちゅう攻撃されるが年季の違いでこれまで無事に対応し続けられている。当然のことながら『車体の色』なんてものはあるわけ無いので名前も無い。
・ミドリ
宇都宮線の魔女。固有武器はメイス。
・アオイ
秩父鉄道の魔女。固有武器は馬上槍。

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視える世界を超えて エピソード9:五行  その⑩

「クサビラさーん、はいはいしつもーん」
白神さんが手を挙げた。
「何だシラカミメイ」
「結成したのは良いけど、この集まりって何か名前とかあったりする?」
「よくぞ聞いてくれた。名前なら考えてあるぜ」
「あ、あるんだー」
「ああ。その名も〈五行会〉」
犬神ちゃんが拍手し、他の人たちも何となくといった感じでそれに続く。
「五行……陰陽五行説のか」
平坂さんが尋ねる。
「そうそれ。土行の犬神ちゃんだろ?」
言いながら、種枚さんは犬神ちゃんを指差す。そこから隣に、隣にと指差す相手を変えながら言葉を続ける。
「金行の青葉ちゃん、水行の潜龍の、火行の私に、木行のシラカミ」
「おい待て俺は名前だけか」
「雷って木行なんだ……」
納得していないのは平坂さんと白神さん。それと、
「え、嘘、俺はのけ者ッスか師匠⁉」
鎌鼬くん。
「あァ? お前を『上』に置いておけるわけ無エだろうが。私に殴られなくても正気を保てるようになってから文句言いやがれ。お前はシラカミの下に就け」
「師匠の下ですらなく⁉」
「お前にガチの妖怪の監視任せてやるってんだよ」
「あ、そーいう……」

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観葉生物専門店

あら、いらっしゃいませ。なにかお探しで?
…ああ、雨宿りにいらしたのね。最近は天気がころころ変わって大変ですねぇ。風邪引くといけません、どうぞ。

ここですか?観葉生物の店ですよ。…え?観葉生物とはなにかって?あれですよ、ほら…ご覧くださいな。あの子は向日葵の茎に大きなひよこが咲くタイプなんです。まだ蕾なので卵状態ですが…。

…ご想像と違いましたか?いえ、なんだか微妙そうな表情をなさっていらっしゃったので…失礼いたしました。

あら、この子がお気に召しましたか?…ああ、別に気に入ったわけではないのですね。この子は文字通り金魚草ですよ。ええ、金魚が咲いているでしょう?…色に驚かれましたか。この金魚草はですね、見ている人の好きな色を映し出すのです。まあ光の当たり方によって、普通の金魚にはない色に輝きますから、驚かれるのも無理はありませんね。高価ですよ、この子。

そろそろ雨上がりそうですね。まだご覧になりますか?