前線都市・ヘスぺリデスにディソーダーが出現したとの一報から三時間。
ヘスぺリデス内に出現したディソーダーたちは、基地所属のリニアーワルツたちによって全て倒され、リニアーワルツたちには基地への帰投命令が出された。しかしミラは、ディソーダーによって荒らされた商店街でウェスト管理官に怒られていた。
「ホント、なんで勝手に戦場へ出てきちゃったのよ……」
「お前はペアのいない戦力外だっていうのに」とウェスト管理官は呆れ顔でミラを睨む。対するミラは「まぁいいじゃん……」と頭を掻いた。
「最終的にペアが見つかったんだし、それでいいでしょ?」
「よくない」
「そもそも、この子とペアが成立しなかったらどうするつもりだったのよ~」とウェスト管理官はミラの隣に立つ薄桃色の髪のリニアーワルツに目を向ける。薄桃色の髪のリニアーワルツには「別に」とそっぽを向いた。
「私はただこの人が一緒に戦うと言ったからジェミニを提供しただけで」
「なによ他人事みたいね!」
ウェスト管理官は思わず突っ込む。そして自らの後ろから様子を見ている平坂管理官にも目を向けた。
「それに、開発機構の上層部直属管理官と遊撃専門リニアーワルツがヘスぺリデスに来てたなんて」
「私聞いてなかったわよ?」とウェスト管理官は平坂管理官を睨む。平坂管理官は「まぁまぁ怖い顔しないでくださいよ」と笑って手を振った。
「我々は上層部の特命を帯びてここに来たのですから」
「なによそれ」
「怪しい……」とウェスト管理官は顔をしかめる。その様子をミラは苦笑いしながら見ていたが、不意に「あ」と呟いた。
「そういえば、これ、返してなかったね」
「えーと、きみの名前は……」と言いながら、ミラはズボンのポケットにしまっていた花が象られたキーホルダーを薄桃色の髪のリニアーワルツに差し出す。薄桃色の髪のリニアーワルツは一瞬驚いたような顔をしたが、キーホルダーを受け取ってこう答えた。
「私は、エフェメラル」
その言葉にミラは目をぱちくりさせるが、すぐに「そっか!」と笑みを浮かべる。
「じゃあエフって呼ぶね!」
「ふふふ」と笑うミラに対し、エフは恥ずかしそうにそっぽを向いた。
〈おわり〉