「へー、俺には飽きたって言いたいの?」
アッドが不満げに言いながら、先ほど自ら崩してしまった髪を優しくなでる。そしてそのまま、耳、頬、首筋、鎖骨と手を滑らせる。もう一方の手はファナの腰に回している。
「そんなこと言ってないじゃないっ」
ファナが目を見開いて反論すると、アッドはいたずらっぽく笑って、にわかに彼女の身体をぐいっと引き寄せた。
「きゃっ」
何が起こったのかよく分からないうちに、アッドはそのままベッドに仰向けになって、ファナがその上に抱きかかえられる形になる。
「この浮気性の不良娘! 悪い子にはこうしてやるっ」
「きゃっ、ちょっ、やめてよっ、あっ、あっははは!」
ファナの抵抗も虚しく、アッドはキャミソールから出た白い肌をくすぐる。
通りすがりの研究員2人組が、扉の小窓からリニアーワルツたちの様子を一瞥し、呆れた溜息を吐く。
「……今日も懇ろにやってるみたいで結構なことですね……オレなんか彼女いたことすらないのに……」
「それは頑張れとしか言いようがないが……」
先輩研究員が苦笑いする。しかし直後、眉をひそめて不快感をあらわにした。
「気持ち悪いヤツらだ」
「確かに、リニアーワルツが色恋だなんて」
「あー、お前は開発部じゃないから知らんのか」
「まあぼくはFラン大学卒の下っ端すからね」
後輩研究員が口を尖らせた。先輩研究員は「学歴厨だなあ」と苦笑した。
しかし直後に「……旧帝卒でも就職難しいのに? お前実はすげえのでは……」とこぼした。
そのときである。ラボに不穏なサイレンが鳴り響いた。