前線都市カナンは異界開発機構の基地を中心とした環状都市である。研究施設と軍事施設を囲むのは、そこに務める人々が使う飲食店や日用品店。その周りに住居群があり、異界鉱石で造られた高い城壁が、不愛想なカナンの街並みを睨みつけている。ラボに隣接した街のインフラを担う動力供給部や城壁は、変換しきれなかったエネルギーが冷たい可視光線となって、時折幽霊のように瞬いた。この街は、資本主義によって死んだ、異界資源と理性の未練によって動かされているのだ。
この街が活動的になるのは、心臓を抉るサイレンが鳴り響くときだけである。
「アディくーん、様子どー?」
「まあ大したことねえな。デカいのが1体と、あとちょろちょろいるだけ。でもまずいな」
「何よ」
「あっちは第3鉱山の方だ。働いてる人がたくさんいる。ファナは先に行って戦っててくれ」
「ええー、アディくんも一緒に行こうよ。ファナあんなのキモくて相手してらんなあーい」
「キモいのの相手なんかいつもしてんだろ……」
「アディくんと遊ぶためだから我慢してるの」
「じゃあ今回も我慢してくれ、ちゃんとできなきゃ処分だぞ」
「んぇー」
ファナが頬を膨らませてごねると、アッドは苦笑して頭を撫でてやった。
「ファナは良い子なんだから、できるよな? 俺もすぐ行くし」
「んー、仕方ないなあ」
「じゃあ行ってきなさい」
「はーい」
返事はしたものの、ファナはアッドの方をじいっと見つめるだけで動こうとしない。アッドがジェミニを起動して第3鉱山に向かおうとしたところ、まだ隣に可愛らしい顔でこちらを覗く少女がいた。