「……な、なに? 早く行きな?」
アッドは不思議に思って優しく諭す。するとファナが、不満そうな顔で自分の口を指さす。
「ちょっとアディくん忘れてる」
「……ああ、急いでんのに……」
言われてやっと気づいたアッドは、観念したというように、ファナの桃色の唇の端に口づけをした。互いの唇のピアスが当たって、2人にしか聞こえないくらいの小さな金属音を発した。
「やったあ、じゃあ行ってくるわね」
ファナは満足そうに目を細めて地上20メートルはあろうかという城壁を飛び降り、城壁に足を滑らせて勢いを相殺しつつ地上に降りた。ディソーダーの方に走っていったのを確認すると、アッドは第3鉱山に向かった。
2話 戦闘開始
ディソーダー群は地響きを轟かせながら第3鉱山に近づいていた。時折異界の地中のエネルギーと共鳴してモスキート音とも重低音とも聞こえるような、気味の悪い音を発した。
今回のディソーダーの見た目は、おおよそ黒くぎらつく蜘蛛型ロボットの様相で、ところどころ赤く爛れているように見える。生き物の外皮を剥いで人工外皮を張り付けたようで、何か生物の尊厳を侵害しているようで見ていて心地よいものではない。それだけならまだしも、理由の如何も不明だが、人間やその社会の破壊を図るのだから厄介なものだ。
ファナにとって、それ自体は大した問題ではないし、そもそも興味もないからできることなら放置しておきたいのだが、「アッドに言われるから」ということでサイレンが鳴る度に立ち向かっていくわけである。
ファナはディソーダーに向かって荒野を駆け抜けながら、ジェミニを起動する。
ファナの持つのは鉈型ジェミニ。ショッキングピンクを基調として、ハートやリボンのモチーフが散りばめられた、武器としての禍々しさに対して相応しくない可愛らしいデザインのジェミニだ。名前は『ナアマ』である。