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第一部【FANATICALとADDICTED】p.12

 今日も戦闘が終わった。
 ファナは先ほどの感覚に困惑して、立ち尽くしていた。

 先の不思議な孤独感。あそこまでの恐怖は今まで感じたことがなかった。急に真っ暗な世界にひとりで閉じ込められる、あの感覚。そして、同時に襲った気味の悪い違和感。自分は、アッド以外の誰かの名前を呼ぼうとしていた。それはいったい何故、誰を……。

「……ナ、ファナ!」
「あ……」

 肩を揺さぶられて、やっと意識が現実に帰ってきた。目の前には不安に切迫した表情で少女の大きな瞳をのぞき込むアッドの顔。

「アディくん大丈夫っ」
「見たら分かるだろ、ファナのおかげでこのザマだ」

 ファナはアッドの負傷を思い出し、心配する言葉をかけるが、アッドにも思うところがあるらしかった。声を荒げないように喉の奥で感情を押し殺そうとするが、いささかばかり、嫌味になって出てきてしまった。
 もとはといえばファナの不注意で片腕を失う結果になってしまったのだから、殊に短気なアッドが冷静さを多少欠いてしまうのは、彼の性格上仕方のないことではあった。

「何それ、なんでいちいちそういう言い方するのよ!」
「それはファナがっ……!」

 アッドはそこまで言って、口をつぐんだ。下唇を噛んで、ファナから眼を逸らす。全ての言いたいことを飲み込んで、「行くぞ」とだけ唸った。

 今ファナの顔を見たら、何か言ったら、ブレーキが利かなくなる気がした。全身の血が沸騰するような、その熱を発散してしまいたい衝動がアッドを襲い、傷の痛みよりも惨たらしく彼を苦しめた。
 その心中を、ファナが察せるわけがないのだ。

「ねえなんで怒ってるの! ファナのこと嫌いになったの!」

 アッドはその声を必死に無視しながら、トバルカインを拾いに行く。暴力的な感情を抑えている代わりに、トバルカインを持つ手が震える。
 ファナはその腕を強く掴んだ。

「無視しないでよ!」

 アッドの中で何かが切れた。