初めこそ驚いたものの、今は何でもないことだ。
職員は他のリニアーワルツ同様診察する。
その最中、いつも如何に自分とアッドの仲がいいかを語る役割しかない口から、不安そうな音色が漏れた。
「……ファナ、アディくんに嫌な思いさせたくないの。アディくん怒るとき、なんか泣きそうな顔する」
「ファナ、ちゃんと分かってるじゃないの」
「でもいっつもひどいこと言っちゃうし、アディくんがやめてって言うことばっかりしちゃう」
「どうして?」
「構ってほしい……ううん、ずっとファナのこと考えててほしいの。アディくんは優秀で、ちゃんとしてて、ラボの人たちもアディくんのことは気に入ってる。それにアディくんはファナがいなくたって平気なの」
「なんでそう思うのよ」
「あんた、アディくんがいつも何してるか知ってる? 本読んでんのよ。毎日何冊も。ファナは本読まないから話合わないし、アディくんは1人でも平気」
「アッドは1人じゃ戦えないわ」
「ほら。そういうことよ。ファナは、持ってるジェミニにしか価値ない、から、アディくんがそれに気づかないように、どんな気持ちもファナにだけ向けててくれるように、嫉妬させたり怒らせたり困らせたりするの」
「ファナはそういう負の感情を向けられたいの?」
「そんなわけないわ! ……でも、ファナのために感情が動くなら、もう何でもいい。ファナはバカで性格悪くて戦闘も弱いから、アディくんのこと喜ばせられないもん。ただ、ファナのことどうでもよくなって、アディくんがどっか行っちゃうのが怖い」
「本当に健気な子ね」
「どう見たらこんな汚れた女が健気に見えるのよ」
「まあ、自分でそう思えるようになるのは難しいわよね。……全部診終わったから服着ていいわよ」
ファナはまた黙ってしまった。
職員がアッドの検診のために立ち上がって、隣の診察室のカーテンに手をかけたとき、振り返らないままでファナに言った。
「そういうの、アッドには言ってるの?」
「……」
「折角いつも一緒にいるんだから、ちゃんと自分の気持ちは言いなさい。愛する人とは、本音で語り合うものよ」
ファナは黙ったままだった。
診察室に入ると、アッドがうなだれていた。