「お疲れ、“メリーさん”。一旦仕切り直そうか」
清嘉は召喚体に駆け寄り、能力を一度解除した。ばらばらになった召喚体は煙のように消失し、再発動によって無傷の“メリーさん”が再び現れる。
『わたしメリーさん、からだ直ったの~』
「“メリーさん”、今、ターゲットはどこにいる?」
『今ね~……3本となりのほそい道にいるの』
「了解。ありがとうね」
『ん~』
召喚体は清嘉に頭を撫でられ、満足げに喉をころころと鳴らした。
「……それで? どうやってマナミちゃんに接近するんですか?」
“メリーさん”を抱き上げながら、燿子が尋ねる。
「まぁ……何とかするしか無いよなぁ……野火止さん、占いした時の紙ってある?」
「ありますよー、ほい」
燿子がポケットから引っ張り出した、タイプライターで出力された用紙を差し出す。折り畳まれたそれを開き、清嘉は目当ての事項に目を留める。
「……よし、備え万全」
「何見てたんですか?」
「スマホの番号。一応ね」
「“メリーさん”といえば電話ですもんねぇ」
電話帳にその番号を保存し、清嘉は路地から顔を出した。
「そんじゃ……行くかぁ……」
「すんなり仲良くなれると良いですねー」
「だと良いんだけどねぇ……」
清嘉が先を歩き、その後ろに“メリーさん”を抱えた燿子が続く。二人が薄暗い路地の奥を覗き込むと、物陰に人影が動いているのが目に入った。
人影は足元に転がる塊を、苛立たし気な様子で繰り返し蹴りつけている。否、それはただの塊ではなかった。生きた人間が身を守ろうと身体を丸めて、暴行を受けているのだ。
「…………どっちですかね?」
「多分…………加害者側? 蹴られてるの男子っぽいし……」
「仲良くなれそうですかね?」
「厳しい……かなぁ……」
「止めた方が、良いですよね?」
「喧嘩とか怖えんだけど……」
「超能力者が何をビビることがありますか。ほら行きますよー」
「はいはい」
2人が近付く足音に、暴力を振るっていた人影は動きを止めた。その隙に、足元の被害者は這いずるようにして逃げ出す。