無題
それは、涙というにはあまりにも綺麗だったので、思わず動揺してしまいました。
――あんなに美しく泣くやつを、俺は見たことがない。
じゃんけんに負け、ゴミ出しへと送られた俺は、校舎裏へ向かっていた。
そこに、人影を見つけた。たしか、同じ学年のやつ。クラスも違うし話したこともない。無愛想だが、女には人気のある顔だってことは記憶にある。
名前、何だっけ。
俺からすれば知り合いですらないが、目が離せなかった。そいつは泣いていたから。……いや、違うな。泣くというより、涙を流していたに近い。そしてそれが、酷く美しかった。
――目が、合った。
「悪趣味かよ。」
いやいや、口、悪。初対面だぜ。見られていると思って気を悪くしたのか……超睨んでやがる。
「そんなんじゃねぇよ。」
ゴミ箱をちらつかせてやると、そっぽ向きやがった。
……はやく捨てて帰ることにするか。
なんで泣いてたんだろうな、あいつ。あんなきれーな顔で、さ。
【続かない】