不意に掴んだ袖口が濡れていたことを、気づいていないフリをした。ワケなんてひとつしかないのに。 隣にいるのがボクでいいのか。全く釣り合っていない天秤に悲しくなる日々。雲一つない晴れ空のような笑顔に、曇天のボク、ほらね、きっとボクじゃない。ボクじゃないと言わせてくれよ。
思わず息を止めてしまうような恋だった。いや、止まっていることすら忘れてしまう、が正確な情報だろう。 新緑によく映える桃色の頬に、すらっと伸びた足、短すぎないスカートが、キミの清純さを引き立てているのだろう。 あぁ、これが人を好きになるということか。あぁ、また止めてしまった。
いっそあなたになりたいくらい、あなたのことが好きだった。あなたに染まるとかじゃない、あなたの一部になりたかった。はり巡る神経ごと、私に頂戴。
このごろわかってきたことがある。君が笑うのはボクが笑った時、君が泣くのはボクが落ち込んでいる時、君が怒るのはボクが情けない時。 君の感情を左右しているのは紛れもなくボク自身であることを。そんな君だからボクは守りたい、幸せにしたい、ずっと一緒にいたい、だから、今、キミとさよならしようか。
それはただみずみずしいだけで、齧ったところでさほどの感動はなかった。熟しても熟しきれない果実は、とてもじゃないけれど、美味しいものじゃなかった。 ただ、私が、それから逃れられなかったのは、ほんの少しだけ甘かったからだろう。その甘さが、今はすごく恋しい。
「さくら色した控えめなピンクの口紅が似合ってる。今日もまた、あなたを知ることになる朝が始まって、その口紅を間近で見るための戦略を練るんだ。 何をとっても繊細で、頭のてっぺんがつま先まで綺麗なんじゃないかって思うくらい。透き通っていて、そう、まるでビー玉を見ているかのようだね。」なんて、言えるはずもないのに、ね。
今まで見てきたものにあなたの影を重ねると、見たくないものまで見える。なんだかそんな気がしたの。ほどくことなんてないと、信じて待ってた左手は、居場所を掴めず空へと投げ出すことしかできなくて。最後のページは二人で埋める、と約束したはずだったのに、鏡に映るのは、あなたの後ろ姿で。 何度問いかけても返事がこないのは、それが返事だったから。壊れるほど抱いて、あなたの腕で、それじゃなきゃ、眠れない。眠らなくていい。
独特の声の出し方が、いつもあなたであることの確信を持たせる。すこし鼻にかかった、語尾を抜くような話し方が心をくすぐる。 そっと囁いて、耳元で。もっとあなたを感じていたい。
限りあるすべてのものには、どんなものにも美しさがある。隣で笑っていられる今は、限りのあるものなのだろうか。 美しいものなのだろうか。 できることなら、永遠を、キミと、隣で。
やっと、やっと、届いた。