太陽が乱反射したむこうの月が 私の父だと知らされたとき ひっくりかえったサメのとなりで泣いていた母を 今も覚えている 犬と猫が恋におちるように ヤクザみたいなサメと愛しあった母は 私を縛りはしなかった 人生で愛するひとが 父とサメのふたりいる母と ひとりもいない私は マーメイドの群れのなかで ひかる真珠をながめている いつか私が陸にあがったとき 月にむかって歩いて父を迎えにいこう そうして 誰かを愛する術を太陽に問うのだ
あの日はなにも感じなくて となりで泣いているともだちを 笑いながらなぐさめていたのに 今になって もうあの日々は二度とはもどってこないのだと もうあのひとたちと馬鹿みたいに騒げはしないのだと そうおもってさみしくなるのは いったいどうしてでしょう。 そうしてやっとわたしは あんなにたいくつしていた毎日が ぬけだしたいとおもっていた三年が 宝物みたいにきれいでたのしくて 大好きだったと知るのです。
屋根をつたってやってきた はねるように空を歩いて 夜のカーテンひいていく はしごにのぼって星をぺたぺた つくったぜんぶ貼りおわったら とけいは針を真上でかさねる のこった金紙ちいさくちぎって あたりにばらまく深夜2時 スープの匂いでそろそろ朝だ あかるくなったらあなたの出番
ねむたい昼下がりの授業中 ぽかぽかしてる窓ぎわで つっぷして寝てたと思ったら いきなりむくっと起きあがって くるっとわたしに振りむいて にやっと笑って口パクで 好きだよって さらっと言っちゃう きみに夢中
からまったイヤホンほどいたら きみがふらっとあらわれて わたしの手にぎって屋上へ イヤホン半分あんぱん半分 授業さぼってラジオでおひるね 気づけば夕ぐれまっかな夕やけ しっかりたっぷりおこられて 晩ごはんはハンバーグ とっぷりくれた日のなかを ママチャリ1台ふたりのり 握手とゆびきりまた明日
いちばん星から遠くはなれた こころのそこでキスをして きみはそっとかなしく笑う もうすぐおわる愛のすきまで つまんない言葉ならべても ひとつもなぐさめになんかなりゃしない どうせ散るならひとおもい まばたきしたら緑の楽園 太陽沈んでおはようさん 月の真上で夜どおしパーティー 手をとりあって踊りましょう つめたいネコはアコーディオン ぼくはまっかなバイオリン 夜と夜とにはさまれた 白と黒とのにぎやか広場 鐘がなったらいちもくさん ベットの上でまた来年
からからからから ふったら骨の音がしそうなくらい 踏んだらくしゃくしゃにつぶれてしまいそうなくらい エジプトにいたらミイラとまちがえられそうなくらい かわいていた僕は 君にキスされて 一瞬でうるおった
貴方ってすごいね 魔法使いみたい どんなことがあっても 貴方のことを考えるだけで こえを聴くだけで ぜんぶとんでいっちゃうの ぽうっとなってうれしくなっちゃう 貴方って ほんとにまるで魔法使い
もう駄目だ 大好きだ あなたの一挙一動に まいあがっておちこんで また胸がぎゅってなる あなたのぜんぶに 脳の裏っかわがくらくらしちゃう 期待してものぞみはないのに わかってるのに やめらんない あなたのすべてがいとしいの 大げさに言ってるんじゃないよ ほんとなの ああもう駄目だな 愛してる
雨しかふらないこの国の とくべつひどい雨の日に くるったようにおどりましょう 貴女のまっかなくちびるが むらさきに変わってしまわぬうちに ばかみたいにうたいましょう めったにないほどどしゃぶりの 痛いくらいの雨のなか なんどもなんどもキスしましょう