好きなひとができたけど ともだちにおしえたら消えちゃいそうだから 生まれたときからいっしょの くまのぬいぐるみにそっと言ってみる ちいさな初恋
すべてが空虚で無機質な 人っ子ひとりいない灰色の町をゆく すこしうすら寒く気味がわるい まわりをきょろきょろ見まわしながら早足でゆく するといつのまにか君があらわれて 僕を指さしてきゃらきゃら笑いながら くるくるまわってとなりを歩く とつぜん君のすがたが透けたような気がして そのしろいうでをつかもうとする僕を あざけるように君はまた笑って するんと僕の手のなかをすりぬける そうして微笑みながら僕のまえに立って つまさきだちで僕にキスする あとに残るは牛乳飴のもったりした味だけ
まぶしすぎるくらいの月あかりのなか 手をつないで ときどき抱きあって ときどきキスもして へたくそなスキップで帰ろうか
雨しかふらないこの国の とくべつひどい雨の日に くるったようにおどりましょう 貴女のまっかなくちびるが むらさきに変わってしまわぬうちに ばかみたいにうたいましょう めったにないほどどしゃぶりの 痛いくらいの雨のなか なんどもなんどもキスしましょう
とくべつなことはいらないから 会えて 連絡ができて そばにいられたらいい ただ あなたと想いあって あなたに愛されていられたら それだけでいいのに それとも あなたが相手ではそれすらも高望みなのでしょうか それすらもねがってはいけないのでしょうか 夢みてはいけないのでしょうか かなうわけなんてないと知りながら それでものぞんでしまうわたしは愚かでしょうか
こどもみたいにわんぱくで わるガキみたいにむじゃきなあなたの そのくしゃっとした こころのそこからうれしそうなえがおが はじけるわらいごえが くだらないちいさないたずらが すきなのです おとこのひとだということをおもいだして おとなだとおもいしる きりっときめたかっこよさが みみにのこるひくいこえが ギターをひくほそながいゆびが すきなのです つまりあなたがだいすきなのです
はだざむい朝 どしゃぶりの雨のなか コートの襟をたてて うすよごれた花をもって 傘もささずにあるく こんな朝は きみの肌のぬくもりを 抱きしめたからだのあつさを なつかしく想う まんぞくにとべない鳥みたいに あがいていたぼくの手をにぎって きみは空にはばたいた ぼくのあたまのうえに いつもまとわりつくちいさな雲に きみは住んでいる ぼくも今からそこへかえる それじゃあまたね
ことばがつうじなくても おたがいのことをすこししかしらなくても いっしょにあそべて いっしょにいれて それだけでよかったのに それだけでたのしかったのに いつからか おとなにむかいはじめたわたしたちは たまにあうときも もうまえみたいにはあそべなくなって よそよそしくいしきしあって ほとんどめもあわせないでいる ねえさみしいよ ことばがつうじればいいのかな あなたのはなせることばを わたしもべんきょうしはじめたよ またわらいあおうよ またあいにいくよ
すきなひとは やっぱりいつまでも すきなひと
たまごがわれて 朝になったら きみはいなくなる それじゃあ 夜ふかしして ずっとおどってようか 馬鹿みたいなおんがくで それとも よるを自転車ではしって 海にでもいこうか まっくろな砂浜で 抱きあってねむろうか