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対談

何故この世界から「悪」ってのがなくならないんだろうね

『人間が「正義」とか「悪」ってので人を測ろうとするからさ』

相変わらず君の言葉は小難しいね

『まあもう少し僕の話を聞きなよ。「悪」ってのは「正義」を正当化するためのものだ。勝利者が、多数派が全体としての意思を統一するために、敵を「悪」に仕立てあげる』

言いたいことはなんとなくわかったよ。
つまり、「正義」が存在するから「悪」も存在するってこと?

『大体そういうことさ。何故「悪」がなくならないのかって疑問は、何故「正義」がなくならないのかって疑問と同義なんだ』

じゃあ、何故「正義」はなくならないんだい?

『人が協同体を形成する以上、それと「正義」には切っても切れない関係ができる。「正義」がなければ民意の統一が上手くいかないからね。』

なるほどね。
君の主張を整理すると、人がまとまるために「悪」を設定して、「正義」でもってそれを正そうとする、ってことかい?

『大方合ってるよ。ただ、「正義」ってのが正しいとは言ってないはずだけど』

「正義」は絶対的に正しくないのかい?

『「正義」も「悪」も相対的なものだよ。源氏と平家を例に考えるといい。源氏にとってみれば平家は「悪」だ。でも平家側からすれば自分たちが「正義」だと考えるはずだ。』

確かにね。
色々考えさせられたよ。ありがとう

『どういたしまして。とは言っても、僕の言葉だって絶対的に正しいわけじゃない。正しさは個人の思考に内在するものだからね』

肝に命じておくよ。
ところで、前々から思っていたんだけど、君は一体何者なんだい?

『今はまだ知るべきじゃないよ。その時が来れば必ず話すと約束しよう』

そうか、君がそういうのならきっとそうすべきなんだろうね。

『悪いね』

構わないさ。別に君は「悪」じゃない。

『…上手く言ったつもりかい?』