ただ頬をつたうだけで 意味を孕む水分が 春風に渇くと それは面影 ガードレールに咲いた花束の色が 鮮やかに映ゆること 映ゆること
背伸びして 届かなかった空の高さ 浮いた踵の高さだけ 近づいたのは事実なのさ まだ消し炭の夢は 息を吹きかければ 息を吹き返すはず 元々綺麗だから綺麗事 磨けば輝く事もまた事実
裁縫機のかたかた 送り出された絹の雲が ビロードの青に刺繍のごとく 幽霊屋敷とうたかた そこら一帯止まった時間が わたしの心情と重なりて 早う、早うと急かす世に 鼻緒の切れた足どりは いつまでも少女のまま
街がほころぶ 陰影のトカゲ 爆発するうららに つられてシッポ覗かせる
魚みたいな雲が 海月みたいな月を食べて 世界が、終わったみたいだ 砂漠の王は民を諭す 吸血鬼は路地裏で目を凝らす 僕は蛍光灯のスイッチを押す 君が仕込んだビーフシチュー 明日が来るのが楽しみだ
行き止まった二人は 海に辿り着く 冬鳥が旋回して かき乱す小さな宇宙 続く足跡は 天国と地獄の切り取り線 生き止まった二人は 海に辿り着く 白波がさらった 足跡とエンドロール
やまいだれで雨宿り 作った笑顔の副作用 背中がかゆくて目眩がする 瓶詰めのピクルスと一緒に 後悔のバンズに挟まれたい 空は見たことのない青あざ色 やがて雨はやみ仄かに香る瓜の花
わかって欲しいくせに 独りになりたがる癖 子供みたい、子供だけど 窓をあけたら子猫の声 ほらあんな風に泣けばいい 夜風でちょっと気が滅入る でも生き方は大体わかってる 17歳のスイッチが入っただけ だからちょっと黙ってて
ストックしてた夏の夜を 左ポケットからとりだした 君にはちょっと暑苦しかったようだ ならばと、右ポケットから春の陽気を 眠くなったから帰るって 都会の夜は冷えるね、母さん
生まれ変わった風に 真新しさはない 君のめざす場所に このバスは停まらない 初夢でみた幸せの余韻は 溶鉱炉に落とされた 鉄クズみたいに儚い 思いの外寒くなくて 水溜りが渇いて消えた青空 埃っぽい教室で 交わした無愛想なあいさつは 「元気でよかった」 そんなニュアンスでいいのかな