正直さを取り戻して 腹黒く 面白く 灰色な日々も愛せるように わたし今日誕生日なんだ 嘘だよ、そういう比喩だよ 靡かない濡れた髪 長さは違う 昨日よりも
花びらにまみれた車をみて 舌打ちが微笑みに変わる 少しだけ、 優しいただいまが言えそう
水道水が冷たくなって 長袖のシャツに手が伸びて 鱗雲に想い人を重ねて
否定、否定、否定。 否定、そして、また否定。 今さら飲んでたコーヒーが 微糖だったって気づいたわ 意味もなく意味ありげに海を見て 疲れたら帰る現実の終点 うず潮、トンビ、観覧車 そっとレコードの針を落とす 肯定のメロディーが聴こえてくる
だらしなく蹴伸びした足は白く 何も成し得なかった日々を物語る 汚れた網戸の向こうでは 深さを増してきた空が 青々と純度を上げてゆく 首を振るエースと壊れかけの扇風機 同じ暑さなのにこうも価値が違うかね
壁当てでできたドット柄が やがて黒一面になる前に 君の参戦を心待ちにしている
底のぬけた目蓋から 気化した感情が氷塊となって 茹だる夜長を灯している 夏にしたためた恋文が 並木道に散り積もると 秋、秋、秋、もう飽々だ
蝉時雨みたいな耳鳴り 濡れた髪と同じ湿度 袖のあるシャツが着たいのに あたらない天気予報 季節はずれが回すくじ引き 混雑もどこか まだ仕舞えない有様 アーケードの始まり 満月がこちらを見つめてる 後ろ髪の絡まり 私は700円の札を見つめてる 生温かさが流れだす 水泳教室帰りの一文なし
解けた虹の残骸で 夜の入り口がいい感じ 撮り溜めた空をあなたへ送る 既読だけが生存確認 わたしだってね、もう飽きたよ
風にゆれる付箋 誰か届けて買い物リスト 靴紐はゆるく 青空はたかく 柑橘のサイダー オーブみたいな月 広げた大風呂敷に 投げやりな夏を全部つめて
助けてやろうと思ったのに すくいようのないやつだ
襟のタグが気になるな 些細の塊からころされそう おまえらはいいよな 今のすべてを捧げるから その星の居住権をどうか
打ち上がらない火花が 咲いては散って 咲いては散って 無邪気な素足を照らしてる 呆気なさは価値のある話 転がった蝉は一か月後のわたし
好きな音楽聴いてたら 天使も悪魔も聞こえない 良いことも悪いことも ごった煮でこそ日々の魔法 夜の帳纏って終電へ 丘へと落ちたほうき星 朝が来るまでに見つけたい
笹の花ゆれる 君は不吉だと囁いて 少し早足で夜道をゆく 願い事ゆれる 君はくだらないと呟いて 尚も足早に夜道をゆく ささやかな日々が枯れませんように 星々よ、 僕らだけ見てればいい
書き溜めた雨の詩が 日の目を見ずに梅雨が明けた 夏の雲が好き 高速道路から見る夏の雲が 高く高くどこまでも イマジネーションを掻き立てる ラジオから気の利いた選曲 旅にでる理由は僕にもないけど このまま知らない出口まで
くしゃみひとつ 舞い落ちる羽根 目と目が合って 感嘆符と感嘆符
あなたに対してかっこよくありたい。 かっこいいわたしで、あなたに会いたい。
無計画で切った前髪 開けた視界に目が眩む 首筋にあたる風が汗をつれてゆく 整然で生真面目 乗り過ごせない電車を降ります 雑然で不真面目 本当の私をあなたは知りません 四次元の鞄 絡まった音楽 やさしく解く 大人な指先 ( 褒めて 褒めて 髪も 生活も ) 次の汗が風を待っている
お互いつまらなくなったね 新茶がおいしいとか言ってる 気怠げな仕草はもう似合わない 瞳も指輪もくすんでくけど 同じツボで笑ってたい やがてそれも風化してくのなら 同じつぼで眠ってたい 無駄なものが削げ落ちて 見えてきたホントのカタチ 歪な湯呑みに浮かんでる たったそれだけを報告してたい
私を好きなフローリング 抱きしめて離さない 大事な温度を独り占め 冷たい肌に寄せては返す 気怠い波に揺られてる 知らない髪の毛気になるけど 次の重力で瞼は落ちる
春の悪あがきを愛でていたい 希釈した幸せをできるだけ長く 寝過ごした街灯が咳をする そっくりな猫背がなんか嫌 潔く 帰路につく 都合良く 運ばれる この憂鬱に病名がつく暦へと
短い季節に袖をとおす 少し肌寒いのは日陰のせい まんざらでもない愛情の力 振り向いた先に誰かが笑ってる 消えかけの飛行機雲だ まるで僕らの道しるべ 強くあろうとか思わないし 強くなろうとも思わない 柔らかい手首はいつだって 剥きだしのまま働いているのさ
スカートのギザギザと 月明かりが噛み合って夜は動く 電子音は届かない 窓を少し開けたら 街が広がった 会話より大事な沈黙 でも悲しいときは雄弁でいて 埋め立て地は いつまでも光ってる 猫の目が4つ いつまでも光ってる
波風立たない温室で ご立派な帆は溜め息に揺れる こしらえた夢は一丁前 金曜日が来て安堵してる 生き抜いた生き抜いた 水が入ってきて驚いた 広い海だって平気なこと 今はまだ知らなくていいね 何でもない月曜日より 嵐の夜に怯えていたい
君みたいな人が どんな人を好きになるの 絵画や偉人の世界だ 全くもって不可解だ 雷みたいな 根っこみたいな ひび割れた隙間に染みこむ水 みたいな人が君 どんな人を愛してきたの 猫をなでる その所作を是非
丁寧な言葉の君より 裏アカの君と話がしたい
歪んだ大気と揺れるみなも その狭間に立って 至って普通を演じている 皺くちゃになった月が 輝くのを辞めないように 私もまだ、 ぎりぎりで自分を信じている
きみはわるもの あなたはいいひと こんな簡単なこと なんでなやむの
思ってたのと違う 好きだった絵本は そうでもなかった そんな的外れな 例え話 傷ついたガラスが光を吸って 屈折した大人になった 好きだった横顔は そうでもなかった 良い人ぶった報いかな ねえ、夕日で燃えてるみたいだよ 地獄は意外と春かもな
膨らまないパンケーキに プレッシャーを与える私は きっと嫌な上司になるのだろう
窓辺、頬杖をつく夕日 半分脱げた靴下 くすぐりたいその踵 ソファに沈む自堕落が 音痴なギターを奏でてる こんな休日もありね ( 毎日でもありだけどね ) あのね、パンケーキが食べたいな
「あ、号砲は鳴らないので」
それはきっと春になれば 雪解けのように 何事もなかったように さらさらと小川のような さようなら
シんだ木々が季節を過去にして 美しかった思い出も 篩にかけられた浜辺の砂つぶさ 毎度毎度いやになるよ 毒づく老人にはなりたかないが それも全部、この街のせいだ 頷くように錆びた風が椅子を揺らす
青空にうす紅色 色彩だけは式日の様 終わりと始まりを意識しだして もどかしい、わずらわしい 阿保か、咲く花ごときで
どさくさに紛れて 冷たい夜が肺ってきた そのまま息を止めて二十八秒 溜め息として破棄出された夜は より一層黒さを増して 弱い星を塗り潰してゆく 不覚、不覚
部屋からはみ出した 隣人の灯りと談笑が 癪にさわって夜空をにらんだ 八つ当たりされた月が雲隠れして 心の狼は爪を隠した 残った豆柴みたいな焦燥をぷかぷか吐くと にべもない夜は一層更けていった
きみに会える気がして 駆け抜けた百鬼夜行 何度も前髪なおしてみて 早くわたしのことを見て 偶然は高望みだ 足よ、成せよ旋風の如く 街が冷えぬうちに せっけんの匂いが消えぬうちに
きらりと光るピアスが 耳の裏へと流れる川に映える 夏休みあけの少し大人なきみの笑みが ぼくを底知れぬ空虚へと突き落とした
夢の狭間で切られたしっぽ 戯れの猫が咥えて駆けてゆく 腐食したマーマレード 網戸ごしの昼下がり 朝顔が咲いていたプランターに 吹きだした種が芽をだした 一瞥した太陽に中指を 飲み干したあくびの予兆 光と影の両生類 今宵は水底 攫われたしっぽに思い馳せ、
帆に命が宿り 水平線は水芭蕉 パレードは誰が為にゆく 駆け寄る少女の為にだろうか 少し伸びた背に戸惑う 水夫の照れ笑いに 死神すら顔を顰めていた
できたての琥珀で眠る蜉蝣 指で掬えば、甘い黄金糖 あした髪を切る予定だから いまのわたしを目に焼きつけてね
電池切れだぜ 六等星 隣の芝が何色でも 光った色があんただぜ 無様もまた美学 当たって砕けた流星が 誰かの夜を照らすことも
ぼくの網膜じゃ既存しない 奇天烈色、さんざめく 埋め立て地の夕凪は 人工的なにおいがした 鏡面を跳ねた鯵が、波紋が 退屈な明日に波を起こす 逃げ水に沈んだ帰路に舟をだせ 金曜日だし、終末だし そのままプランクトンへ還ろうか
雨雲を巻きとったフォークが 山並みに突き立つと 選び損ねた言葉を祀る墓標となるのです ナポリタン色に染まる背景 ラブとライクを往来する小舟は 手を振る君のさざなみに 忽ち、難破舟となるのです
奇しくも あなたのようで 真綿のような 雲がカモメを攫ってゆく 繋げた貝殻は臥せた日々の数 形状記憶の猫背を伝う 飲み比べた苦汁の滴 面影が背伸びする 諦め色の空に浮かぶ 真綿のようで あなたのような 群雲
指切った、指切った それは紙か約束か 滴った、滴った 淡い血液か溜め息か がんばった君には赤いリボンを 解いて手繰りよせたなら ああ 君だった、君だった
帰巣本能狂う空 約束をわすれたツバメは 訳もなく泣いている 誰も救われない物語で ひっそりと迎えるエンドロール ツギハギの怪物は岬へと帰る 何かを待ってる錆びた塔 二つの名前を削った跡
肩をなでる感触の音 解き放った黒い髪で 君の目を奪う 投げ捨てた白いシャツは 汐風に溶けて水色になった 首をすくめて笑う癖 鎖骨の上下が白波のようで 奪われた僕の目は ラムネのくびれで揺れていた