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五行怪異世巡『覚』 その②

覚。サトリ。名前くらいは聞いたことがある。人の考えが読めるという、有名な妖怪だ。たしか、あれは人食いの類だったような気がするが……。
「ちょっとしたツテでさ、この山ン中にいるって情報を掴んだワケよ。割と面倒な種だからなァ……ここらでちょいと囲っとくかブチ転がすかした方が安全の観点からしてもマシな気がしてさ」
「な、なるほど……」
「ヤツのいそうなエリアまでは分かってんで、取り敢えずそこまで直行するぜィ。おいシラカミメイ、遅れンなよ?」
「はいはーい。じゃあ千葉さん」
「何でしょう白神さん」
自分の目の前で、白神さんが四つん這いの姿勢になる。
「…………? 白神さん、これは……?」
「どしたの千葉さん? 早く乗ってよ」
「ちょっと意味が分からないんですが……」
「んー? だって千葉さん、山の中であんまり速く走れないでしょ? 『雷獣』の足ならそれなりに素早くなるからさ」
彼女が『妖怪』としての姿をさらすのに思ったより積極的なことを意外に思いながらも、恐る恐る背中に跨る。長身の割にスレンダーな彼女の身体はなかなか座り心地が悪かったが、どうにかバランスを取る。
「よしよし。それじゃ、振り落とされないようにしっかり掴まっててねー」
「え、はい了解です」
身を伏せたのとほぼ同時に、種枚さんと白神さんは駆け出した。一瞬で最高速度に到達し、自動車並みの速度で木々の隙間を器用にすり抜けていく。少しでも頭を上げたら枝葉にぶつかってしまいそうだ。というより風圧で落ちてしまいそうでじっとしているしか無い。
10分ほど走り続けていただろうか。跳躍した白神さんが『垂直に』着地し、急停止した。
「っ⁉」
突然の事態に対応できずに落下したが、種枚さんに受け止めてもらうことができた。

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御狐神様 キャラクター

・御狐神様(オコミ=サマ)
年齢:外見年齢20歳(実年齢は20歳)  性別:外見上は女  身長:165㎝
とある地方の村落で信仰されていた神様。正確には信仰によって生み出された存在。外見は狐の耳と尻尾が生えた和装の女性。艶やかな色素の薄い茶色の長髪をしている。
信仰心から生まれたために神様という自覚があるので、人間と遭遇した際は努めて尊大な態度で接する。実際の性格はかなり素朴でビビリの小心者。御友神殿(後述)とネズミの天ぷらや果物を食べている時が一番幸せを感じる。果物の好みは甘くて柔らかい果肉のものだが、食肉の好みは小骨の割合が高いネズミの尻尾や小鳥の脚など。
ちなみに料理は結構出来る方。サバイバルも結構出来る方。一緒にキャンプとかしたら滅茶苦茶楽しそう。
神徳は特に無いが、一応神様なので霊感はあるし、大抵の生物や怪異存在は神威でビビらせて動きを止めることができる。何なら弱個体の霊体は神威で祓える。

・御友神殿(ゴユウジン=ドノ)
年齢:50歳  性別:メス  体長:50㎝くらい
オコミ様の友達。お社の中に繋がれているキタキツネ。その正体は御狐神様の本体というか正体。この『ただのキツネ』が祀り上げられて溜まりに溜まった信仰心や畏敬の念が形になったのがオコミ様。オコミ様はお社に一緒に祀られているだけの無関係の別個体だと思っているが、何なら実質的な親まである。
割と年食っているうえ幽閉のストレスも溜まっているので元気が無くて、普段はお社の隅っこで丸くなっている。オコミ様のとってきたネズミや小鳥や果物を食べるのが好き。骨と肉のバランスが良い小動物と、少し酸味のある瑞々しく柔らかい果物が好み。愚かな人間どもは仕留めるのが面倒な生きた鶏とか食べにくい人間の生贄とかばっかり押し付けてくるので嫌い。
元々、かつて豪雨で村の近くの山が土砂崩れを起こした際に、運よく村を避けてくれたのを見に行った村人が、土砂や倒木の隙間に上手い事収まっていて生き残っていた子ギツネを拾って来てそのまま神様に仕立て上げたという出自。
年齢からも分かるように、大量の信仰心を浴びたことで神格化しており、既にただのキツネではない。ただのご長寿キツネである。

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cross over #4

蝉が生き延びようと懸命に鳴いている。鳥のさえずりは喜ばれるのに、なぜ蝉のあえぎ声には悪口を言われるんだろう、と首を傾げた。ジリ…目覚まし時計の労働を少しでも減らせるようにできるだけ早く止める。目覚まし時計の設定を切って目を閉じた。遠くで救急車のサイレンが鳴る。
半開きの目を擦りながら3度目の二度寝を終えた。ドアを開けようとして目の端に扇風機が映る。風量調節ができないお古の扇風機でもトタの周りの空気を変えていく。見れるチャンネルが1つあるお古のテレビで今日のニュースを確認した。タレントとアナウンサーが微妙な間を振り払おうとテンポの速いトークを繰り広げていた。CMに入ったところで今日は1回もお手洗いに行っていないことに気づいた。今日もついているであろう寝癖を隠すため帽子を被る。ミシッミシッと微かな音を立てながら階段を降りた。お手洗いに入り、ひと息ついているとついつい眠りそうになる。
蝉がほんの少しの間休息を取っていた。生ぬるい、さっきの番組と同じくらいの温度感の水が流れる。手を洗い、外に出た。銀色に近い日差しが背後から照らす。ぼーっと、強いて言えばさっきのテレビで交わされていた口論を頭に浮かべながら歩く。この街に越して来て約5ヶ月。最近は行きつけの店を作ることに必死になっている。今日は人が少ない平日だということもあり、少し遠いレストランまで出向いた。カランカランとドアがなる。
「いらっしゃいませ。」1つに結んだ髪が茶色に染まっている40近くの人が出てきた。
「え、と。1人で。」「あ、はい。空いている席へどうぞ。」
「や、うーん。」
「では、ごゆっくり。」早口でまくし立てるように言うと逃げるように去っていった。そういう気がしただけかもしれない。ただ、トタにはどうしてもそう見えてしまうような人だった。

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cross over#3

空は雲が1つもなく、どこを撮っても青しか映らないほどの快晴。自分なんか入る隙もない、などと愚痴りながら歩いている。高校生Aの黒い影が気になってーもともと猫のために通っていたあの道へ向かう。下に目を落としてゆっくり歩を進める。いつも以上に街が静かで自分の耳を引っ張ってみた。自動販売機の赤色が見えてくる。自動販売機はいつものように横にリサイクルボックスを携えて、そこにあった。人より遅い一歩がいつもの倍の速さで前に進む。一昨日と同じ景色。昨日と違う景色。車が一台、自転車が一台、過ぎていく。前にも自動販売機で飲み物を買っている人はいた。日々はいつもと同じように過ぎていく。なぜか鮮明に残る昨日のひと時を眺めながら、回れ右をした。靴屋を曲がり重いドアの前に着く。やけに大きく響くドアが閉まる音を後ろに階段を駆け上る。ナップサックを床に投げ捨てた。布団の上に転がり天井を見つめる。いつまでも心臓の動悸が止まらなかった。
「なんで、何でなんだろう。」
今まであの自動販売機の周りで人がいることに気づいても気に留めなかった。トタは何かを責めている。ふとちゃぶ台の上のラジオが目に入った。動くことにすら気が入らない。寝返りをして、電源を入れる。聴き慣れない声に感じる冷たさが今は心に沁みた。相変わらず明るく照らす陽がカーテンの隙間から差し込んでいた。

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五行怪異世巡『百鬼夜行』 その⑥

「……案、というべきか…………こういった状況に強い奴には、心当たりがある」
平坂は苦虫を噛み潰したような表情で答えた。
「へぇ、誰?」
「…………俺の身内に、少しな。だが……あいつをこんな場に出すのも…………」
平坂が考え込んでいると、突然彼のスマートフォンが着信音を鳴らした。平坂、白神、怪異存在達、その全員がびくりと反応する。
「…………?」
平坂が通話ボタンを押すと、電話口から彼の妹の声が聞こえてきた。
『兄さん。右端と右から3番目、真ん中、左から2番目』
それだけ言ってすぐに通話は切られたが、その頃には既に平坂は動き出していた。伝えられた個体『以外』に札を素早く叩きつけ、そのまま踵を返し、元の位置に戻ろうとする平坂の背中に、札を貼られなかった4体の“おばけ”が飛びかかる。
「ヒラサカさん!」
「問題無い」
平坂が指を鳴らした瞬間、周囲を覆っていた結界が消滅した。それに伴い、怪異たちの動きを妨げる力も無くなり、“おばけ”達の手が彼の背中に届く。
しかし、その手は強烈な反発力に弾かれ、反動で平坂の身体は前方に向けて吹き飛ばされた。
「ふむ、流石に動きの制御は効かんか」
地面に転がる平坂を、白神が助け起こす。
「だいじょーぶ? リーダー」
「ああ。そして」
杭のうち最後の1本を地面に突き立てる。同時に、“おばけ”達の動きがぴたりと止まった。
「準備は成った。失せろ、クズ共が」
5本の杭で囲われた範囲を中心として、強い閃光が広がる。その光は周囲の怪異存在全てを飲み込み、およそ1秒後。光が止んだ後には、紙札を貼られていなかった“おばけ”達だけが消滅していた。

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五行怪異世巡『百鬼夜行』 その⑤

「おい付喪神共。そっちの新入りもだ。手が空いているならついて来い」
平坂は札を貼った怪異たちを呼び、自分の後につかせて歩き出す。数m進んだところで、杭の1本を琵琶の付喪神に手渡した。
「それを持ってそこにいろ」
付喪神は弦を震わせながら杭を受け取った。角度を変えて再び歩き出し、次は琴の付喪神に杭を渡す。更に方向を変え、棒人間に杭を渡す。また進行方向を変え、鳴子の付喪神に杭を渡す。
最後に元の位置に戻ってくると、白神は大量の怪異存在に群がられていた。
「…………」
「あ、ヒラサカさん。準備終わったの?」
「ああ。そっちはどうだ」
「あと9人ってところまでは絞り込めたんだけどね?」
白神が指差した先には、全く同じ姿をした9体の“おばけ”が浮いていた。
白く半透明な身体、濁った瞳、足の無い雫型を上下逆にしたような体型。『如何にも』な外見のそれらは、全く同じ姿勢で等間隔でその場に浮遊している。
「…………これはまた、面倒なことになったな」
白神の周囲の怪異たちに札を貼りながら、平坂が呟く。
「そっくり過ぎて困るよねぇ?」
「……まとめて消し飛ばすか」
「それだけは駄目ぇー」
平坂は舌打ちし、神社の方に目を向けた。
「……どうしたものか……」
「ん? 何か良い案でもあるの?」