Specter children:人形遣いと水潜り その⑤
「おい何だその反応は。あんた人間でしょうが」
蒼依の怪訝な視線に、冰華はぎこちなく顔を背ける。
「な……何でもないよ……? あははァ……」
「おうコラ正直に吐けぃ。モチモチするぞ」
2体の【感情人形】が姿を現し、冰華の顔に飛びついて彼女の両頬をもみくちゃにする。
「あひゃひゃひゃ、やめてやめてー!」
【感情人形】たちと蒼依本人に組み伏せられた冰華は、息を吐き出し両手を投げ出した。
「こ、降参降参……」
「で?」
「私……友達に妖怪がいるの」
「種は?」
「河童」
「河童もいたの?」
「えっ、標的じゃなかったの? 私、この辺の妖怪で思い当たるのそれだけなんだけど……」
「ちなみに送り狼も道中にいたよ」
「世界は広いねぇ……」
蒼依が身体の上から退いたことで、冰華も起き上がる。
「ねぇ蒼依ちゃん……私の友達、殺さない?」
冰華の不安げな問いかけに、蒼依は人形の1体を冰華の頭に乗せながら答えた。
「河童のこと? 河童たちの前科は?」
「一番新しいのだと、私が襲われた時のことくらいかなぁ。大体5年くらい前? それ以降は、特に悪さしてる河童はいないかな」
「……自分を殺しかけた奴らと、友達? 妙だな……」
「私を襲った河童以外はみんな優しいよ?」
「うーん純粋」
「わーい褒めてもらった。それで? 蒼依ちゃんのターゲットって何者?」
「あーうん。何か、何かしらの鬼らしいよ。角も生えてるって」
言いながら、蒼依は両手の人差し指を立てて額の前に当てた。