月と夜光虫
このまま溶けてしまいたいと願っても
神様はこの上なく意地悪で
たったひとつ僕の欲しいものだけくれないで
投げて寄越すどんな宝石もガラクタばかり
月光を反射した水面の下
息も出来ずに暗闇に足掻く
仄かに照らされた横顔の陰影に
爪先さえも触れることは叶わなくて
夜光蟲に纏われた世界
夜が明けてしまうのがどうしようもなく怖いんだ
朝になって何もかも忘れてしまうことが
ただ何もかも知らぬままにまた生きていくことが
夜が明けてしまえば僕はもう
きっと僕でなくなってしまうのだろう
その銀河を宿した瞳の向こう側
白い雨雫がひとつ落ちては消えた