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佐々木の世界

AM6:00
【ピピッピピッピピッピピッ】
「ん、、、くわぁ」
今日も朝がやって来たようだ。
また1日が始まる。
【ピロリン】
『今日の時間割教えて』
なぜだ。昨日、連絡帳に書かなかったのか。不思議。あれだけペンを持っているのに、書かないのか。そんなことを思ってしまう。つい皮肉を言ってしまうのは、私の性格が良くないせいだ。
性格が良くないのは分かっているが、答えない訳にはいかない。そうして、いつも返信する。
『数学、理科、文化祭準備2時間、国語、英語』
既読がつかない。別にすぐ読めとは言っていないが、こういう時、すぐに既読がつかないと、、、
『ごめん詩織ちゃん』
『優芽が教えてくれた』
『ありがとう』
なんだ。私の頑張り。無駄か。朝のコーヒータイムを犠牲に答えてやったのに。コーヒー飲めないけど。ああ苛つく。大体書いてない方がおかしい。書いとけよ。迷惑かけやがって、、、

こう思っていても、顔には出さない。ポーカーフェイス。いつもの私は仮面を被っている。
剥がされたくはない。かといって、隠している訳でもない。これでいい。これが私。

謎に自分を褒めて、朝食の準備を始めた。
【ピロリン】
【ピロリン】
【ピロリン】
うるさい。誰。私の朝のコーヒータ((省略。
『おはようございます』
噂の転校生だった。彼はたまたま席が隣で、その流れでLINEも交換したのだ。少女漫画みたいだ、と改めて思った。席隣。恋の予感?ないな。
『昨日のプリントって』
『提出ですか?』
知らん。私は先生でもお客様相談センターでも質問専用窓口でもない。ロボットでもない。当たり前だけど。とにかく。返信。
『英語は今日提出です』
『後は分かりませんごめんなさい』
何か今日は進みが遅い。大丈夫か。
【ピロリン】【ピロリン】
あーもううるさい。何だ。
『佐々木さん、今日土曜日ですけど』
『学校ありましたっけ』
、、、、、、あ。
私は今までこんな間違いしたことがなかった。
すごく恥ずかしい。なんて返信しようか。
『間違いです』
『ありませんから』
『休みです』
たまにはこんな日でも良いか。
佐々木、少し成長した。

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佐々木の世界

AM7:00
「ふわぁーっ、、、んんっ!?」
【ピロリン】
『詩織ちゃん、今日休み?』
『もうすぐ電車来るけど』
寝坊した。完全に、寝坊だ。10分などの可愛らしい寝坊ではない。1時間近く寝坊した。
いつもなら、今頃駅でクラスメートと話して電車を待っていたというのに、、、

昨日用意していた朝食のシリアルは残して明日に回そう。アイロンかけておいて良かった。ハンカチはお気に入り乾いたかな。カフェオレはパックのを持って行こう。

こんなことを考えながら、家の中を駆けめぐる。そして制服を着て、束縛の世界に入る。
【ピロリン】
『電車乗るねー』
『ゆっくり来なよ』
「忙しいんだってば、、、」
返信なんて置いておく。別にあの人達に私生活まで教える義務はない。そう信じよう。

パン片手に家を飛び出した。マンガみたいだ。
自分が主人公になった気分。速く走れそう。
この角から、誰か出てきて、ぶつかるんだ。
なんてね。あり得ない。私は通行人Bだろ。

「痛っ」「痛いっ」
本当にぶつかった。痛い。カフェオレ無事か。
パンは落ちた?そういえば学校の用意出来てるかな。あ、お箸忘れた。

「大丈夫ですか?痛くないですか?」
そうだ。相手は大丈夫だったのか。
「はい、私は大丈夫です、、、あなたは」
「僕は全然平気ですよ!無事で良かった」

そう言って、相手は走って行った。速い。
またいつか会えたら、お礼しないと。
さて、あと学校まで240メートル。急げ。

【ピロリン】
『うちのクラス、転校生来るらしい』
『写真送るね』
『イケメンだよね』

そこに写っていたのは、さっきの相手だった。
不意に心臓がドキドキする。汗が出てくる。
きっと走っていたからだ。ずっと急いでたし。

学校に向かう足取りが、なぜかちょっぴり
軽くなった気がした。

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佐々木の世界

AM6:00
【ピピッピピッピピッピピッ】
「ん、、、くわぁ」
また今日も朝がやって来た。

【ピロリン】
『おはよー!今日の学校休むー!』
『オッケー('-^*)ok』

正直、友達付き合いは苦手だ。
人と話すのがそもそも得意ではない。
だからと言って、友達付き合いをしないのは勇者である。孤立主義ではないから、そこは乗り切るしかないのだが。とりあえず返信せねば。
何とか打ち込んで、いざ送信しようと思った時には、既にトーク画面の話題は移っていた。

AM8:00
「詩織ちゃん、おはよー」
「お、おはよ、、、」
人と話すのは慣れない。難しい。
私は小さい頃から、「大人しい性格」というレッテルを貼られて来た。だからなのか、話しかけてくれる人も少なく、いつの間にか「頭が良い」と有りもしないことを言われるようになった。

今日も、一人で過ごすだろう。特に異論はない。いつも通りの生活。何も変わらなくて良い。

誰かに侵入してもらおうだとか、この生活を壊そうだとか、そんなことは望まない。

席に着いて、お気に入りの本を広げて、栞を取り、 さぁ本を読もうとしたその時。
「佐々木さんいますか?佐々木詩織さんです」
誰かに名前を呼ばれた。誰だ。

廊下に目を向けると、そこには知らない女子が立っていた。
「はい、佐々木ですけど、、、」
緊張状態かも。あぁ、机の上の本は大丈夫だろうか。置いて来てしまった。どうでも良いことに気がとられる。

「あの、私、2年夏組の田辺と言います」
田辺さんは軽く自己紹介をした。
「夏組のクラス委員をしています。お時間頂戴してもよろしいでしょうか」

良いから早く言えよ。こっちは(本を読むのが)忙しいんだよ。おせーよ。
なんて思っていても口には出せない。こんな時の為に、世間には愛想笑いというものが存在する。

「時間はありますが、何のご用件ですか」
「冬組だけ、クラス委員が決まっていないんです。もし良ければ、佐々木さんに」
「お断りします!」

これで良い。私に役職など必要ない。田辺さんには悪いが、私には向いていないのだ。

今はこのままで良い。
そう思っていた私に、色々な出来事が降りかかるのだが、それはまた次のお話で。

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届いてほしい、この思い。

家族を失って分かった
この世界は案外もろいこと
常識なんてすぐにひっくり返ること
当たり前の毎日はないこと
私達の命は、奇跡だということ

家族を失って気づいた
あの人は愛しい人だったこと
憎まれ口の裏に愛情があったこと
私も本心では、あの人のことが大好きだったこと
言葉にしないだけだったこと

家族を失って実感した
人の支え合う姿は素敵だということ
全うした命は美しいこと
青い空はたまに皮肉だということ
本当に悲しいとき、涙は出ないこと

家族を失って伝えたくなった
家族を大切にして欲しいということ
言葉に出して伝えて欲しいということ
目の前で失われていく命は呆気ないということ
生きるのは難しいということ

だけど、全うした命は美しいということ


私は3月に祖母を亡くしました
3年の闘病生活の末でした
半年経った今でも、
時々悲しみが押し寄せて来ます

なぜ祖母が 病気と闘わなければならないのか
なぜ祖母に 私は何も出来ないのか
小学生の頭で考えて眠れない夜もありました

あなたにとって、大切な人は誰ですか
大切な人に言葉で伝えられていますか

「ありがとう」も素直に言えない
そんな世代の人もいると思います

現に自分もそうでした
祖母の優しさとは分かっていながら
口を開くと憎まれ口しか叩けない

いつか正直になろう
でもその「いつか」 はやって来ませんでした

後悔しても 反省しても
祖母は もう帰って来ません
だからこそ 私のような思いを
この掲示板の人には してもらいたくないのです


どうかお願いです
大切な人こそ素直になれないものですが
どうか言葉で伝えて下さい

大切な人はあなたのことを思って
言葉をかけてくれています
嫌味に聞こえてもそれは優しさです

あなたも大切な人も悪くありません
悪くないのです
どうか責めないで下さい

いつ大切な人と別れるかは分かりません
だからこそ今を大切にしましょう

多くの人とその大切な人が
幸せに暮らせますように

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届け。

側に行って
君の話を聞きたいのに
どうして出来ないの
僕が弱いから?

君の側にいてあげたいのに
優しい言葉をかけてあげたいのに
どうして出来ないの
僕が小さいから?

何も出来ない僕だけど
君に伝えたい想いは大きくて
誰にも負けない世界一だよ
君も負けないで

いつかきっと
君の世界も明るくなるから
暖かい日がやって来るから

僕もいつかきっと
君に会えると信じているから頑張れる

君はそれまで待ってて
ちっぽけで何も出来ない僕だけど
二人なら世界なんて恐くない

世界なんて恐くない


私はいじめが怖い。一人が怖い。
自分が標的になるのを恐れている。
SOL!にも、悩んでいる人がいるかもしれない。
そんな人を助けたい。
今辛い思いをしている人に会いに行きたい。
でも、それは出来ない。
この瞬間も、世界のどこかでしんどい思いをしている人がいる。
なのに私は、何も出来ない。
自分のちっぽけさに気づいた。
私に出来ること。それって何だろう。
掲示板に、書き込むこと?
伝えたい思いを込めて私はポエムを書いた。
誰かに届くことを願って。
綺麗事。あなたに辛さはわからない。
そう感じる人もいると思う。
私も全て理解している訳じゃない。
だけど、私の思いは本物。
伝わってほしい。
一人じゃないと分かってほしい。

少しでも多くの人に伝わりますように。
届きますように。

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「楓花、別れよう」

佐藤楓花(仮名)

夕焼けの空が目にしみる。
こんなにも空は遠かったのか。
ふざけて歩く下校途中の小学生達の
やけに明るい声が、私の頭に響く。
そうか。
今まで私は君と一緒だったから、
ずっと君しか見ていなかったから、
何も気付かなかったんだね。
夕焼けの美しさも痛さも儚さも、
小学生の明るさもパワーもスタイルも、
駅に響く電子アナウンスの無機質さも、
踏切の前に立つ人々の顔も。
何も知らなかった。
知ろうともしなかった。
君はそんな私の性格を見抜いていたんだね。
君と一緒にいる間、
世界には二人だけしかいない気がして、
あの夕焼けだって私達のものの様に感じてた。
いつか二人で羽ばたく空は、
ずっと続いていると思ってた。
考えが甘かった。
今日、その空が途切れて、私達の世界も壊れた。
あっという間に、私一人の世界の出来上がり。
いざ一人で過ごす世界。
夕焼けは痛くて、小学生は大きくて、
私の存在は急速に萎んだ。
君はどうだろうね。
多分、変わらないんだと思う。
次、私にこの人って思える様な、
大事な人に出会えたとしても、
今回みたいなことはしない。
気付こうとする。知ろうと思う。
彼のことも、世間のことも、両方とも。
これが当たり前だったんだよね。
私、少しでも成長出来るかな。
まずは、一人で帰らないと。
夕焼け空を見上げて、大きく深呼吸して、
清々しい気分で帰路についた。

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小説

巣ごもりをして、早くも十年が経ちました。
家に一通、鼠色の文字で僕の名前が書かれた不幸の手紙が届きました。
高校の頃の同級生が転落死したらしいです。
同級生の死の理由は僕にはわかりません。
僕は、葬式何てものは行く気もありません。
なので、気が付けば僕は市の指定された燃やせるゴミ袋に捨てました。
生まれて私、一度も人を好きになったことがありません。
恋人零、恋愛経験零、恋愛感情零の私。
部屋の壁にはアイドルのグラビアのポスターを貼っています。
今日も相変わらずかわいい子に囲まれ汚部屋に住んでいます。
先週の食事のゴミが散乱している部屋に住んでいます。
洗濯物はたまりっぱなしです。
台所は洗っていない食器でいっぱい。
飼っているネズミがちゅうちゅうと鳴く。
僕はネズミに餌をやり、さっさと外に出る。
外は晴れていて、さっきまで降っていた雨は止んでいる。
世界は僕だけをおいて回っている。
気晴らしに買い物に出かけたら、同級生に会った。
「おー、お前ひさしぶりだな~、元気か?就活やっているかー?」と僕に聞く。
ああ、僕は将来についてお先真っ暗です。
自分が惨めにおもってきました。
「うん、一応やっているよ」と僕は咄嗟に嘘をついた。
どうだっていい。
僕は買い物先で同級生に会ったことで苛立った。
買い物なんてないから家に帰り鼠に語り掛けた。
「ねー、チューちゃん、僕の人生お先真っ暗なのかな?」と僕は鼠を抱きかかえて呟いた。
鼠はチューチュー言っている。
まるで僕を見下しているかのように。
突然雷雨が降ってきた。
テレビからは、大雨洪水警報のアラームが鳴っている。