表示件数
0

不器用

「今日もかわいいな〜」心の中でささやく。

3月になり、過ごしやすくなってきたある日のこと。
もうすぐで修了式。「今の学年が終わる前に、伝えないと。」そう思った僕は、その人に声をかけた。
「最近、過ごしやすくなってきたね」
(まずは軽い世間話から始めよう)
「そうだね。でも、めずらしくそっちから声かけてくれたね。なんかあったの?」
(予想外の返事だ。ここまでは考えてなかった)
「まあね。あ、次の授業、畑の整備だって。来年度に
向けて、少し広くするらしいんだ。」
(とりあえず授業の話をしよう)
「へぇ〜。そうなんだ。でも、大変そうだね。」
「そうだね。」
(なんとか世間話はできた…)

チャイムが鳴り響く。畑の前に集合した僕たちは、
早速畑の整備に取りかかった。
「じゃあ、〇〇は、〇〇さんとその辺の雑草抜いて。
間違って植えた種の草抜いたらどうなるか分かってるな」先生が言った。
(え?!あの人と2人でこのエリアやるの?!!)
少し驚いた。でも、顔には出てなくて安心した。
(まあ、とりあえずやるか。)
僕はいつも通り雑草を抜く。雑草を抜いたらその場所の土を軽く戻す。基本はそれの繰り返しだ。
あの人は僕から少し離れた場所でやっている。
僕はふとあの人の方向を見る。
(ちょっと大変そうだな。手伝いにいこう)
「大変そうだね。手伝うよ。」
「ありがとう。」
そのあとしばらく、2人で同じ場所を整備した。
(… 会話できない。でもなぜだか居心地が良い。)

つづく… かも?

0

小説的鏡

これは高校の頃、ある日の話

次の倫理の授業で「アイデンティティの確立」というテーマでディベートを行うことになった。
それに先だってヒントとして
「他者は自分を映す鏡だ」
と教師は言った。
「自分は他者を映す、他者は自分を映す」
そういうことらしい…

課題とはいえ、家に帰ってもなかなかその言葉が頭から離れなかった。
だって理解が出来なかったから…
他人は何を考えられるかわかったものじゃない…
いつ自分を攻撃してくるかわからない…
他者という言葉にそう怯えることしかできない自分も嫌で仕方なかった。
考えることをやめたかったけど課題だから丸っきり考えるのを辞めるわけにもいかず考えはグルグルと同じような所をめぐり始めた。

ピコンッ

そんな時にインスタの通知がなった。
ストーリーがいい加減溜まってきたらしい、
さっさと見ろという例の通知だ。
課題に追われていたとはいえ久しぶりにこんな通知に出会った。それでも見る余裕はないのですぐにスマホの電源を切った。

その一瞬、スマホの黒い画面から目が離せなくなった。

電源を切ったスマホは鏡同然だ…
自分がよく打つ文字の形に指紋がベッタリと付き
上部には醜い自分の顔が映る。
スマホがいつもレンズとフィルターを通して自分を美化してくれていたことに改めて気づいた。
美化された写真にいいねがついていく様は
この写真が自分の現実から離れていっていることをいつも雄弁に伝える。
所詮他人は他人でしかない
私の1面しか見てないけど褒めたり貶したりする
けどそれでいいんだ…
他人は歪んだ鏡だ
その歪みは自分を美しくも醜くも映す
スマホよりもよっぽど人間らしい
でもそこに誰の意思もない
だから私は集団の中で私でいられる

初めてわかった
これがアイデンティティなんだ!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次の倫理の授業はこんなみんなの承認欲求と自己嫌悪がおぞましく渦巻いたディベートとなり、私がポエムを始めるきっかけになったのはまた別のお話…

初めて書いたポエムのアレンジです
良ければそっちも読んで