無銘造物再誕 Act 35
「まぁそんなことは元より」
早く言ったら?とピスケスは寧依を促す。
寧依はそうだねと言って自らに抱きつく金髪のコドモの目を見た。
「…“キヲン”」
あなたの名前はキヲン、と寧依は金髪のコドモに言う。
金髪のコドモは寧依から腕を離し、目をぱちくりさせた。
「きをん?」
「うん」
寧依は静かに頷く。
「図書館にあった植物図鑑に、そういう花の名前が載っていてね」
そこから引っ張ってきたの、と寧依は金髪のコドモの頭を撫でた。
「…」
金髪のコドモは暫くポカンとしていたが、やがて寧依に再度抱きついた。
「嬉しい‼︎」
急にまた抱きつかれて寧依は一瞬驚く。
「ボク寧依が付けてくれる名前ならなんでも嬉しいよ!」
ありがと!と金髪のコドモことキヲンは飛び跳ねる。
寧依は少しだけ微笑んでまたキヲンの頭を撫でた。
〈無銘造物再誕 おわり〉