“鉄路の魔女”は基本的に、子どもにしか感知できない。鈴蘭が腕を失う原因にもなった大災害の頃、少年期にあった人間でも、十数年を超えた現在、社会人になった者も少なくない。ただ不老不死の魔女である鈴蘭には、時間経過による変化が理解しきれず、かつて交流し共に遊んだその人間が自分を無視している理由が理解できなかった。
専用道路の上をぽてぽてと歩き、2駅分ほど歩き続けたところでふと足を止める。
「………………や」
目の前の黒い影に、右手を挙げながら声を掛ける。人間の赤子の頭部程度の大きさだったそれは、鈴蘭の声に反応して全高数mほどにまで膨れ上がった。
「駄目だよ。こんな風に道を塞いじゃ。迷惑になるんだよ」
幻影は首を傾げるように変形し、目の前の魔女に突進を仕掛けた。
鈴蘭は右手だけでそれを受け取める。幻影の質量と速度が生み出すエネルギーは破壊力として機械腕を軋ませ、装甲の随所からは損傷によって火花が飛び散る。
「む…………」
空いた左手を大きく後ろに引き、軽く握った形に固定する。その手の中に、六連装グレネードランチャーが生成される。
「そー……りゃっ」
射撃では無く、銃器そのものの質量を利用し、幻影を殴りつける。
幻影を引き剥がし、煙の上がる右手を開閉する。
「まだ……動くかな。よし」
その手を強く握りしめ、それと同時に機械腕が爆発し、装甲が弾け飛んだ。
どうも、テトモンよ永遠に!です。
昨日から企画「鉄路の魔女」が始まりましたが、要項に書き忘れていたことがあったので追記します。
・参加作品にはタグ「鉄路の魔女」を付けてください(あとでまとめる際に役立つので。もちろんまとめられたくない方は付けなくて結構)。
・参加したいけどどうしても内容が思いつかない方はキャラクター設定だけ作った上で、(一応)開催中の企画「テーマポエムを作ろうの会」のタグ「テーマポエムを作ろうの会」を本企画のタグと一緒に付けて投稿してくだされば誰か(企画者かもしれない)が作品を作ってくれるかもしれません。よかったらどうぞ。
ちなみにこの企画でぼくはこの手の企画開催を最後にしようかなと思ってます。
もうネタがあんまりないし…
なので今まで見る専だった方!
参加するなら今しかないですよ‼︎
未完になっても設定だけしかなくてもいいのでよかったらご参加ください!
よろしくお願い致します!
電信柱の上で蹲るように眠っていた鈴蘭は、朝の眩しさに目を覚ました。
凝り固まった手足を解すために大きく伸ばし、そのままバランスを崩し地面に落下する。
「ぶげっ…………いたい……」
強かに打ち付けた後頭部をさすりながら立ち上がり、鈴蘭は歩き出した。ガードレールをひょいと跳び越え、未だ始発も動かない早朝のBRT専用道路の上を進む。
目的地は、とある踏切跡。最近は毎朝通う、ある種『お気に入り』となったそのスポット。その遮断機の上に腰を下ろし、右手首を見る。
普段はポンチョ風の衣装の下に隠れている機械の右腕。その装甲の下は、部分的な廃線によって不完全に幻影化している。BRTへの移行が無ければ、影響はこの程度では済まなかっただろう。
そう考えながら右腕をしばらく眺め、鈴蘭は再びその腕を衣装の下にしまった。これまで生きてきて、人間を観察して得た知識によると、彼らは時間を知りたい時に手首を見るらしい。それが『腕時計』という外部装置を必要とするところまでは気付けないまま、小首を傾げてただ時が過ぎるのを待つ。
数十分後、始発バスが真横を通り過ぎた。
「や」
短く呼びかけつつ右手を挙げる。当然答えが返ってくるはずは無く、鈴蘭は周囲を眺め始めた。
時間の経過とともに、少しずつ、本当に少しずつではあるが、人通りも増えてくる。
そして、1つの軽いエンジン音が近付いて来るのに気付き、鈴蘭は表情を輝かせてそちらに目を向けた。
そちらからは1台の原動機付自転車が近付いて来て、1度減速してから踏切跡を通過する。
「やぁ、少年!」
その運転手に、先ほどよりも明るく呼びかけ、右手をひらひらと振る。気付かず去っていく後ろ姿を見送り、一瞬の思案の後、鈴蘭は遮断機から飛び降りた。
「彼はあんたを足止めするために別行動してたみたい」
それをうちが利用しただけ、と雪葉は言った。
師郎はそれを聞いて、利用されちまったなぁと頭をかいた。
「…と言う訳で、”目の前の人間と同じ姿に化けているように見せる”能力の”エインセル”こと瀬登 榮(せと えい)くん」
雪葉はしゃがみこんで榮の肩に手を置いた。
「事情聴取をお願いできるかな?」
雪葉はそう言ってにっこりと笑った。
「ひいぃぃぃ」
榮は思わず後ずさった。
そして雪葉は榮を立たせると、腕を引いてその場から去っていった。
「…なぁ、どうする」
おれ達置いてかれてるけど、と耀平がふと呟く。
「アイツに付いて行くしかなくない?」
ボクらも被害受けているんだし、とネロは言う。
「あたしは行くわよ」
雪葉の親友なのだから、とこぼして穂積は歩き出した。
「…じゃ、おれ達も行くか」
穂積の様子を見た耀平がネロに目を向けると、ネロはうんとうなずく。
「行くぞ、黎、師郎…お前も」
耀平はわたし達3人を促すと歩き出す。
黎と師郎も2人のあとに続き、わたしも彼らのあとに続いた。
〈20.エインセル おわり〉
人々の為に尽くしてきた。
なにか得たい訳でもなくただひたすらに。
評価なんていらない。ただ皆の笑顔の為に尽くしてきた。
だけど、人々は笑顔で私を踏んで歩いていった。
それでも私は人々の笑顔の為に尽くしていけるだろうか。
「ああクサビラさん、最期にお友達とおしゃべりする時間をもらうよ?」
「……好きにしろ」
白神さんの問いかけに答え、種枚さんが1歩退いた。一息ついて、白神さんの方に向き直る。
「ねえ千葉さんや。1個だけ、正直に答えてほしいんだ」
「……何でしょう」
白神さんの質問が何なのかは、既に察しがついていた。深い藍色の虹彩に縦長の瞳。微笑を浮かべた口から伸びる鋭い牙、さっき攻撃を受けた際に身体を庇ったのか、上着の袖の破れた穴から覗く、滑らかな栗毛の毛皮。パチパチと音を立てて、彼女の身体の周りに目視できるほどはっきりと流れている放電。
「千葉さんや。わたしのこと、怖いと思う? 正直に答えてほしいんだ。『怖い』って、そう言ってくれたら、わたしは人間に混じっているべきじゃない。大人しくクサビラさんに殺されるよ。それが正しいことなんだから、わたしは気にしない」
「…………」
正直に答えるとしたら、たしかに『怖い』と言わなくちゃいけない。ヒトじゃない存在の恐ろしさは、実体験として知っている。友人として接していた人が、『人』ではなかった。その事実に戦慄するなという方が無茶な話だ。
「…………全く怖くない、とは言いませんよ。妖怪だっていうなら」
「そっかー」
「でも、それでも白神さんは自分にとっては大事な友人です。そんな白神さんを失いたくない。……それに」
種枚さんに目を向ける。
「白神さんなんかよりよっぽど恐ろしいモノ、自分は見慣れてますから。だから大丈夫、白神さんは怖くなんかありません。可愛い可愛い私の友人ですよ」
「ち、千葉さぁん……!」
種枚さんがどんな反応を示すのか、注意を向けてみると、種枚さんは後方の自身の足跡を眺めていた。少しずつ火の手が広がりつつある落葉に向けて適当に腕を振るうと、落葉が大きく舞い上がり、火もかき消された。
この書き込みは企画「鉄路の魔女」の〈設定〉書き込みです。
〈設定〉
・鉄路の魔女
鉄道路線へ対する人々のイメージから生まれる少女の姿をした“なにか”。
大抵子どもにしか認識・接触できないが、稀に大人でも認識・接触できる者がいる。
自らのイメージ元の路線へ対する人間のイマジネーションが少しでもあればその姿を保つことができる。
同じく人間のイマジネーションを糧とする“幻影”には敵対的。
自らのイメージ元の路線に対する人間のイマジネーションを消費することで様々な行動が可能で、戦闘時には固有の武器の生成が可能。
名前としてイメージ元の実在・現存する鉄道路線のラインカラー/車体カラー名を名乗り、二つ名として「〇〇(モチーフとなる実在・現存する路線名)の魔女」を名乗る。
イメージ元の路線のラインカラー/車体カラーにちなんだ華やかな衣装・容姿を持つ。
イメージ元の路線が同じ会社の“魔女”は互いのことを“姉妹”と認識する。
イメージ元の路線が通る街に出現することが多い。
人間のイマジネーションが尽きない限り不老不死。
なぜ少女の姿をしているのかなど謎が多いが、彼女たちはほとんど語ろうとはしない。
・幻影
“鉄路の魔女”たちの敵。
そのどれもが禍々しい姿をした巨大な怪物。
“魔女”たちと同じく人間のイマジネーションを糧にするが、それを欲するあまり人間のイマジネーションを根こそぎ奪ってしまい、彼らを廃人化させてしまうことがある。
そのため“魔女”たちからはよく思われておらず、討伐の対象となっている。
多くの人間が住む都市部に集まりがち。
その正体は、廃線になった路線のイメージから生まれた“鉄路の魔女”の成れの果て。
廃線になったことで人々から忘れ去られ、自らのイメージ元へ対する人間のイマジネーションを失うことで姿を維持できなくなると彼女たちは“幻影”化する。
幻影になってしまえば元の人格は失われるし、本能の赴くままに人間のイマジネーションを何へ対するものなのか見境なく喰らうようになる。
これに対抗できるのは“魔女”のみである。
という訳で設定集は以上になります。
何か質問などあればレスをください。
では、皆さんのご参加楽しみにしております。
この書き込みは企画「鉄路の魔女」の〈世界観〉書き込みです。
〈世界観〉
舞台は我々の住む世界とほとんど変わらない世界。
人々の生活を支える鉄道の傍にはいつも不思議な“少女”たちが存在する。
人々の鉄道へのイメージから生まれ、“鉄路の魔女”を名乗る彼女たちは、人間たちのイマジネーションを糧に暮らしていた。
しかし、人間のイマジネーションを糧にするのは彼女たちだけではない。
“幻影”と呼ばれる怪物たちもまた、人間のイマジネーションを糧としていたのだ。
イマジネーションを欲するあまり人間を廃人化させてしまう”幻影“に対し、”魔女“たちは自分たちの糧を守るために戦い続ける。
これは“鉄路の魔女”たちの戦いと日常の物語。
お次は〈設定〉です!
どうも、テトモンよ永遠に!です。
突然ですが企画です。
タイトルは「鉄路の魔女」。
人々の鉄道に対するイメージから生まれた少女たち「鉄路の魔女」が人間のイマジネーションを餌とする存在「幻影」と、時に人間たちを巻き込みつつ戦ったり日常を過ごしたりする物語をみんなで書いていこうという企画です。
端的に言えば「鉄道(萌え)擬人化バトルファンタジー」と言った所でしょうか(難しい)。
ルールはこの後投稿する設定と公序良俗を守ってさえいればなんでもOK!
もちろん投稿形式・長さ・数は問いません。
開催期間はこの書き込みが反映されてから5/31(金)24:00までです(フライング・遅刻投稿も大歓迎)。
次は〈世界観〉です!
笑顔と言う名の武器を纏って
青春とか言う不完全を
いっその事楽しんでやる
それで君に殺されようと
走馬灯が増えて万々歳だ
そのくらいの気概で居よう
将来後悔したくないから