ほったらかしにしてた
本を読んだ
すきなひとの言葉は
どうしてこんなに強いんだろう
どうしてこんなに優しいんだろう
知らなかったことを知って
昨日とは違う自分になったんだ
それが成長なのかな
変わらない毎日
ちょっと背伸び
スマホではなくて
文学を片手に
電車に揺られる、火曜日の夜
男と女だけの愛とか恋とか、好きにしたらいいけれど。
私はがっつり吐き気がするよ。
男女二元論ばかみたい。
恋愛至上主義押し付け御免。
仲間外れの戯言くらい、たまには好きに言わせてくれよ。
全ては夢の中なんだ
好きも嫌いも
嬉しいも悲しいも
人は記憶という夢にして忘れてしまうのだから。
【それが当たり前で、抜け出せない現実であること。置いてきぼりはいつも、僕だけ。】
苔むし色の夜
銀色の湖が月のやつなんかに見つめられて
てらてらひかってら
からからの木々も今は若々しくささやきあう
昨日のくにから明日のくにへ向かう
湖を回る道の対岸から君はやって来た
まゆげがとてもきれいでね
逆回りで進む僕らの距離は変わらない
空巡り星の半分がそっくり変わってしまっても
昼、小鳥たちと覚えた赤や紫や黄色のアネモネのしらべは出てこない
忘れてとぼけて本当の名を明かしたら
振りかえってくれるかな
そしたらcodaのない歌をうたえる南の旅人になれるのに
そう今からだって
こぐまのしっぽが沈みそうでも
しづかな後ろ姿が昨日のくにへ消える前に
商売道具の舌が縺れて
原動力の心は からから
掛けられた期待に
応えられないもどかしさ
栄養源の映画や舞台は
観るほど自尊心を潰しにかかる
商売道具の喉を壊して
原動力の想いを棄てて
出来もしない妄想は
時折信じられないくらいに甘美
そうしたってどうせ私は
懲りずに渇望してしまうのに
ごめんね コーヒー
僕は悪い夢を見る
さよなら ミルク
僕は眠らないよ
月に乗ってゆりかごのようだ
何度もキスが降り注いでも
決して鼓動は聞かないで
ごめんね コーヒー
僕は大人じゃない
さよなら ミルク
僕は大人にならないとなあ
ごめんね コーヒー
僕は苦くて泣きたくなる
さよなら ミルク
僕はやさしくなれない
何度もキスが降り注いでも
決して心は許さないで
ごめんね
と言わないで、ねえ
MONDAY
またはじまる。
朝ごはんを食べ損ねたのを思い出したのは3つ目の駅。空腹と憂鬱が混ざり合ってむかむかする。あ、と思った。今日まで提出しなきゃいけない数学のプリント忘れた。リビングのテーブルの上、きっと今頃は食べかけの目玉焼きの皿のとなりで泣いていることでしょう、ごめんね、昨日夜おそくまで頑張ったのに。
ついてない。ほんとにまったく。かちりと押すとイヤホンから音が溢れる。見飽きた景色がながれていく。ふと空を見てみた、こころと真逆、秋晴れ。ひとすじの飛行機雲がかかっていた。まっすぐ、まっすぐ、ずっと先までまっすぐに伸びている。目で追って、あ、ひとつじゃなかった。気がつかなかった、あっちにもこっちにも。
沈黙を破ってギターの音が零れた。彼は歌う。上を向けと。笑おうと。力強い声が背中を押す。また少しだけがんばってこよう。
(頭の上には飛行機雲、イヤホンからは高橋優。こんな月曜日も、悪くない。)
ワインレッドがモコ→モコ
「泣きそうだ」って
きみに
メロンソーダを for→you
「クリームソーダの方がいいな」って
こんな ことも→ことばも
泡になって消えてしまう 小宇宙
あの子がすき。この子がすき。
かっこいいとこがすき。
やさしいから…頭がいいからすき。
みんなバラバラのすき。
わたしのすきなひとは
お母さんみたいに怒ってくれるひと。
ときどき、ねおちしてるひと。
家に着いたらLINEしろよ。ってしんぱいしてくれるひと。
はなさなくたって分かり合えるひと。
わたしのだいすきなひと。
わたしのすきなひと。
「コイって魚はいるじゃん。アイって魚はいないのかな」
窓から外を見ながら彼女は言う。
「アイという生きものはいない」
彼女の背中に僕は言う。
「いるかも……また雨だ……ねえ雨好きなんだよね」
「好きだね」
彼女を後ろから抱きしめながら僕は言う。
「雨好きなひとって変わってるんだって」
「君を好きなひとも変わってるんだろう」
「それはふつうのひと」
僕は彼女のいたんだ髪に鼻をうずめて目を閉じ、明日はイカスミのパスタを作ろうと考え調理のシミュレーションを試みるがパスタの映像はいつの間にかアイという魚が清流を泳ぐ姿に変わってしまう。
「洗濯ものが乾かないんだよね」
「……愛してるよ」
「いつも言ってくれるね」
「愛してるよ」
小さい頃から見覚えのあるパチンコ屋のネオン、
いつも右折する信号機も、家までまっすぐの古い県道も、
今は雨に濡れたまま。
おうちは近いようで、まだ遠いから、ぼくはバスを待つ。
(珍しく、車に乗っていないので電車とバスです。)
(たまには、待つのも悪くないね。)
ひとり、早上がりの現場を惜しみながら帰る。
雨降りのホームからは、見慣れない街のパノラマ。
さっきから繰り返しの、鳥のさえずりと
何処かで聞いたメロディと、ベルとブザーとアナウンスと、
バラスト軌道に弾ける雨音がステレオで
こんな日に限って忘れた読みかけの文庫本が恋しくて、
いっそこのまま、日も暮れてしまえ。
待ちぼうけ、電車は未だ見えない。
わけもなく、わけもなく世界は
崩れてゆくのです
僕の掌から毀れる無数の何か
それを認識する隙さえなく
世界は崩れてゆくのです
崩れた先には
白くて大きなお皿があって
滑らかなその肌を
世界の欠片が染め付ける
そうして
わけもなく、わけもなく世界は
創られてゆくのです