太陽が
月に
負けたら
夜が来た
太陽が
月に
勝ったら
朝が来た
太陽と
月の
静かな戦い
美しい戦い
「何かあったんですか?...ここで」
唐突に聞いてみた。
「えっ?!...いや別に....その.......えっと...」
完全に焦っている。絶対何かあったんだ。
フッと、彼が笑った。その顔には、気のせいかもしれないけど''切なさ''があった。
「鋭いね、白帆さん」
苦笑いする桜尾さん。やっぱり、何かあったんだ。
「まだ君のことあまり知らないし、君も僕のことあまり知らないだろう?また、そのうち話すよ」
さりげなく拒絶された。
聞いてはいけないことだったのか。
「わかりました。そうですね」
彼は安心したように笑い、奥へ入っていった。
改めて店内を見渡してみる。
骨董 というよりは 雑貨 という感じのものがたくさん置いてある。
人の心とはもろいもの。
「心の裏側には
情熱を失ったあとの
傷あとが隠されている」
って書いた紙を見つけた。
「先輩、魅力ってなんですかね〜」
「そうだなぁ、ほかのやつはどうか知らんけど、
俺にとっての魅力ってのはたぶんお前の全部、
かな。」
君の微笑みは何時だって
噎せ返る程の偽りに満ちて
だけど そんなこと構いやしなかった
昨日の夜
真っ白いネオンに曝されるまで
昨日の夜
飽きるほど繰り返した待ち合わせの
慣習通り君が遅刻する1時間の間に
僕の目は醒めてしまった
解れた夢の中
最後の角から駆け出す君の荒い呼気
その態とらしさに急に嫌気が差してしまって
発作的に薬指の枷を投げ捨てた
側溝に落ちていったシルバーを
驚いたふりで目で追って
それから たっぷりの間の後
くしゃりと歪んだ君の顔は
息を呑むほど素晴らしかったけれど
やっぱり それは本物には程遠かった
「いらっしゃい.....あれ?」
入った瞬間店員から声がかかった。
「白帆さんですよね?!」
あれぇ???
この声、この顔...
「桜尾です。朝会った」
やっ...やっぱり...。
何で桜尾さんが??
もしかしてここ....
「ここ、僕の店なんです。開店したのは昨日なんですけど、白帆さんがお客さん第1号です」
「え...本当ですか?」
「はい。この店開くためにこっちに越してきたんです」
店を開くため?こんな人気のない田舎に??
普通、こんなところに店開くだろうか...。
「昔から骨董品が好きでさ、色々買ってたんだ。家にためてたんだけどかなりの量になっちゃって、兄弟が迷惑がってさ。それでどうせ売るなら自分で店開こうかなって」
いきなり馴れ馴れしく喋りかけてきた...。
「あっ、ごめんね。いきなり馴れ馴れしくしちゃって。嫌だよね」
この人、エスパーか?
「いえ、大丈夫です。ところでどうしてこんな田舎にお店を?もっと都会にすればよかったのに」
彼は少し考えこむような顔をした後、
「特に理由はないよ?ただ何となくここが好きだから」
「へぇ。そうなんですか」
「じゃ、ゆっくりしていってね」
''ただ何となくここが好きだから''
そういう彼はどこか遠くを見据えていた。
「君は勇者さ。」
神様は言った。
僕は剣の代わりにペンを持って、
問題用紙へ飛び込んでいく。
火を吐く古典に、呪文を唱える化学式。
僕は剣一本で戦う。
すべての問題を解き終えた後
チャイムが鳴った。
僕の机には大量のよだれと真っ白な問題用紙だけが、
置いてあった・・・。
(つまらない...)
今年、大学に入学した。
高校とは違って好きなことが
好きなように勉強できると思って
楽しみにしていた。
でも...
私には「好きなこと」がなかった。
今まで、ただ何となく
やらなくてはならなかったから
勉強していた。
何となくで今まで過ごしてきた。
それに今更気づいた。
もう何も考えず、とぼとぼと
家路を辿っていた。
あと一つ交差点をまがれば家、というところまできた。
何やらやけに目立つ
一軒家が目に入った。
『骨董屋』
思わず吹き出してしまった。
何の捻りもない、単純な店名だ。
私は引き寄せられるようにその店に入っていった。
いつも何故か、私を見てくれない
いつも何故か、私にだけ冷たい
いつも何故か、私に見て見ぬ振りをする
そんな君が、何故か好き
諦めた恋なのに、忘れられない、
忘れたくない
今私がいるこの場所と
今君がいるその場所は
同じ空の下で繋がってるんだよね
そう思ったら、また頑張れる
忘れたくない、一生の片思い