表示件数
0

幻想仮面倭伝 古墳編 エピソード8

宝石のような眼を持つ、陰気な雰囲気を放つタケルと瓜二つの青年がそこに立っていた
「我が友よ...貴方の願いも...これで...これで私と一緒に...」
「供界...ボクは実体を得られた...感謝するよ...」
青年はタケルの方を向いて
「君がこの体の提供者か...」
「お前は...何者だ...?」
「ボクに、決まった名前はない...前は、運命の戦争...とか呼ばれてたっけな...まぁ昔の話だ...それよりも、同じ人間はこの世に2人も要らないんだ...」
何か、寒気を感じる
「だからここで...死 ん で く れ な い か」
寒気は更に増す
この宝石のような瞳を見ていると、どこか違うところに連れていかれる...そんな錯覚さえ覚える
常時静かな口調なのも、恐ろしさを更に際立てる
「確か、こうするんだっけ?」
青年にベルトが装着される
そこには、見たこともないカードデッキが填まっていた
「黒龍...はっ!」
タケルもとっさに構える
青年に黒い影が重なり、漆黒の龍騎士 リュウガとなった
「へ...変身!」
タケルもライアとなる
それでもタケルは、恐怖で体が麻痺していた...

「黒龍か...面白いのが出てきたな」
貴族のような風貌の青年が眺めていた
その手には、蛇のエンブレムが象られたカードデッキが握られていた...

0

5年前

急に切なくなるのはなんでだろ
5年前の夏に重ねた
てのひらの心地よい温さを
きっと君は覚えてない
ふと蘇るのは
閃く花火に照らされた
無邪気な君の横顔

0

雑種#1

 感情を殺して生きることにしたんだ。きっかけ? 過去のトラウマだよ。毎日のように思い出しては、怒り、憎しみにとらわれ、目の前のことが手につかなくなる。思い出さないように頑張ってみたがもうあきらめた。そもそも思い出すのが問題なんじゃない。怒り、憎しみの感情が問題なんだ。
 俺の一族はゴールデンレトリバー。俺だけ雑種。これ以上説明はいらないだろ。子ども時代にいい思い出なんかない。おまけに俺は帝王切開で生まれた。犬は自然分娩じゃなきゃあ駄目だ。母親だってことを、知識で補えないからな。母犬は俺を単なる異物としか思ってなかった。生まれたばかりの俺は、乳を与えてもらえず、死にかけてたらしい。
 それに引きかえ、きょうだいたちの可愛いがりぶりといったら、子どもを生んだ多幸感が自己批判力を失わせるんだろう。才能なんてかけらもねえのにダンスだピアノだサッカーだバレエだと、言われるままに、習わせてたっけ。みんな小学生レベルで終わったけど。
 まあしょうがねえ。本能だからな。何万年経っても犬は犬だ。金持ちのお嬢様だから実社会でもまれることもなかったようだし。
 だからさ、生まれたばかりのころ、しばらく人間に預けられてたんだよ。それで生き延びることができたってわけ。
 戻りたくは、なかったよ。そりゃそうだろ? 
 何故って。法律だよ法律。犬の社会に人間が干渉したらまずいんだよ。俺みたいなさ、変なのができちまうから。

0

オカルト2

 はて、何をしに外に出たのだったか。そうだ。綿棒を買うためだった。鼻の奥にできものがあり、それに薬を塗るために綿棒が必要なのだ。スーパーに行くつもりがぼんやりしていて、通り過ぎてしまった。年のせいなのか定年で退職してからのん気に過ごしているせいなのか両方なのか。いや、わたしは昔からこうだったな。引き返すと、また易者だ。ブームなのだろうか。見ればわたしよりだいぶ年がいっている。
「ちょっとあなた」
「はい?」
 いつもなら無視するところだがぼんやりのせいで反応してしまった。そういえば脳がデフォルト状態のときは社会脳になっていると何かで読んだな。
「あんたね……」
「もうすぐ迎えが来ますか?」
 おどけた感じで言ってみた。少し、間があった。
「あんたもう死んでるよ」
 死後の世界を信じるのは楽観的だと思わないか、とスタンリー・キューブリックは言ったそうだ。死後の世界がある。霊はいる。と考えたほうが生きるのは楽だろう。占いも、信じられる人間のほうが幸せだ。
 生まれ変わったら、もっと素直に生きよう、と思う。

0

無題

髪を掻き毟って
爪を立てて 腕を切り刻んで
人目を憚らずに喚き立てて

それで全てが解決するなら
こんなに私を持て余さなくて済むのに