表示件数
0

えっと...

締め付けられるような

君らが忙しいのは当然だって
みんなに言い聞かせて

勉強しなさいって
でも、ちゃんと寝ろよって

どこまでかサボりで
どこまでか普通で
どこまでか頑張ってるに入るんだろうか

人の価値観は人を総合的に見て判断しろって
「お前は、なんでちゃんと勉強出来ないんだ?」って
あるときは笑顔で「おめでとう」って

何て言うか正義のマニュアルにきちんとそって
平然と指導されてるのが

あの場にいてただ苦笑いがこぼれた

1

ん。

昼と夜が逆転。

分かったようにつぶやいた耳。

こぼれおちる言葉。

受け取めきれない光。

いつもこのまま。

0

蕎麦屋3

 口に出していたのだろうか。そそくさと勘定を済ませ、出て行こうとするとサラリーマン、とびきりの笑顔を俺に向け、「じゃあね」と手を振った。
「そういう笑顔は女性に向けたまえ。笑顔の無駄打ちだ」と言って外に出たらそこは居酒屋のカウンター。振り返ると男子トイレ。
「……お客さーん、閉店でーす。……閉店ですよ」
 またカウンターで寝てしまった。最近、酔って寝て目覚めると、夢だったのか現実だったのか妄想だったのか区別がつかない。確かめるすべもない。まあいい。生活に支障はない。あんみつをかき込んで、店を出る。
 飲み会シーズン。最近は路上で吐いている奴を見かけなくなった。酒が弱い奴、飲めない奴は無理に飲みにつき合わなくなったからだ。
 いまの年になっても、過去をやり直したいと思うことがある。だがもし過去の記憶をすべてなくしてしまったとしたらどうだろう。過去をやり直すというのはそういうことなのだ。
 姉はよく、近所や親戚を引き合いに出して、旦那と子どもの自慢をしていた。女はひとと比べなくては自分のポジションがわからないからな。つまり女の幸せとは、相対的なものであって、絶対的ではないのだ。
 ばかばかしい。本当に幸せな奴はひとのことを悪く言ったりはしない。幸せとは、性別や年齢を超越したところにあるのだ。
「自分の自慢や他者の批判ばかりで自分の間抜けさには気づかないのか気づいているが棚上げしているだけなのかどうかはわからないが、他者批判したら自己批判するかおのれの間抜けさをギャグにして相殺することだ。でないと自己客観化のできないただの間抜けで人生を終えることになる」
 カウンター常連の若いサラリーマン。とびきりの笑顔をわたしに向けて言う。
「おーい、みち。刺身終了。オーダー止めて」
「りょーかいでーす」
 サラリーマンに笑顔を返し、座敷席に急ぐ。

0

蕎麦屋2

 着物姿の女性店員。こなれた感じ。暑いが熱燗を一合頼む。蕎麦味噌をなめ、ぐいっとやる。気温に合った。ちょうどいい温度。さすが老舗。こういうところに差が出る。小松菜のおひたしも頼む。器がいい。津軽の金山焼というのだそうだ。冷や酒を追加。
 辛味大根蕎麦が出てくる。いつ頼んだのだろう。記憶にない。まず大根おろしを入れずにひと口。美味い。大根おろしを入れて、豪快にすする。辛さが蕎麦の香りを引き立てる。新緑の季節にマッチした味わい。
 蕎麦を食べ終え、残った大根おろしをそばつゆにすべて投入。それをつまみにして冷や酒を飲む。若いサラリーマンが一人、入ってきて隣のテーブルに。大根おろしを、冷や酒でやっつけてから蕎麦湯。デザートに、あんみつを頼む。隣に目をやる。サラリーマン。ちゅっ、ちゅっと、うつむき加減で蕎麦を吸いこむようにすすっている。
 いくら味覚がしっかりしていても、食べ方がなっていないと味のわからない奴だと思われてしまう。ついでに育ちまで疑われる。職人になめられる。もったいないことだ。俺は若いころからあんな食べかたはしたことがない。
 不意にサラリーマン。顔を上げ、蕎麦を咀嚼しながら、「自分の自慢や他者の批判ばかりで自分の間抜けさには気づかないのか気づいているが棚上げしているだけなのかどうかはわからないが、他者批判したら自己批判するかおのれの間抜けさをギャグにして相殺することだ。でないと自己客観化のできないただの間抜けで人生を終えることになる」と、こちらを見ずに、言った。

2

無題。

街が寝静まれば
1人の部屋に1人だけの夜

時間に押し流される日々で
弱音なんてこぼせなくて

悩みなんてない、なんて
そんなの嘘っぱち
不安だらけ、本当は泣き虫

あゝ、猫になりたい。