表示件数
4

LOST MEMORIES ⅩⅣ

黒髪に黒い瞳。それも、冷たい眼。
正面からみると、かなりの美形である。チャールズの顔も綺麗だと思ったが、彼も負けていない。
なんて思っていることがバレてはいけないので、社交パーティーでまなんだ微笑みを向ける。
「なんでしょう?」
「前の席、気を付けた方がいい。」
表情は変わらない。いっそ、瞳の冷たさは増したようにも見える。
「……はい?」
あえてこちらも変えずに微笑む。
「どういうことでしょう。」
目の前の男子生徒は瑛瑠を見下ろした。
「どうせ気付いていないんだろ?」
棘のある声に、さすがの瑛瑠も顔をしかめる。
何なのだろうこの人は。
「君、弱そうだしな。」
ふっと笑った彼は、八重歯を持っていた。

0

惑星歯車

宇宙から見るとよくわかるんだよ
自ら輝かない小さな星々の集団
光を求めて 光にすがり 回り続ける
重力と遠心力に振り回されながら

光がなくても自分の世界はちゃんとある
もしも何も見えなかったら手をつないで走ろうよ

君がいるからこそ世界は動き出す
小さくても確かなその鼓動は僕らの象徴
光なんていらないさ さあ世界創造


巨大な社会の一部な自分
パターン化を始める人間機械
動力を次の動力へとつなげているだけ
役目は果たしているけど取り替え可能

動力無視して自分の力で動き出せ
自分が生み出す回転で世界を動かせ

君がいるからこそ地球は回り出す
何があろうとその瞳は僕らの動力源
部品なんていらないさ
さあ世界創造

0

生命

理不尽に奪われる命があって
理由なく救われる命があって
絶対的に守られる命があって
意味不明に危険に晒される命があって

そんな中で生きている人間は、
醜く、美しく、綺麗で、恐ろしい。

4

LOST MEMORIES ⅩⅢ

学校なんていう背の高い建物は、少し離れた距離からでも認識できたため、さして迷うことなく着いた。もとより、歩いて行ける距離だったのだ。
次来る休日に、ここら辺の地理を把握しに出掛けようと瑛瑠は思った。

玄関は広かった。チャールズから昨日、学校についての細かい説明を受けたが、1つずつ思い出す。
『新しいクラス割りが張り出されているはずです。番号を確認し、ローファーは棚へ入れ、靴を履き替えてください。』
ここでは、屋内外で靴を履き替える習慣なのだそうで。それも含めて人間に馴染むこと、それが今日の指令の1つ。
早く着きすぎたのだろうか。
クラス割りは盛り上がるものだそうで、混むといけないと思い、だいぶ早く出てきた。まだ人数は数えられるほどだ。
さっと確認し、ローファーを脱ぐ。そこに、一人の男子生徒と行き交う。目があってしまったので、軽く会釈をすると、彼もそのように返した。
彼の方が先に棚に向かう。
瑛瑠が棚に書かれた自分の番号の確認をする。どうやら、先の男子とは同じクラスのようだ。彼の方が、番号は早いようだけれど。
入れると、横から声がする。
「君――」

0

旅は終わり、そしてどうなる

大人「はい、じゃあこれからの人生で何か質問のある人いないねー?」

___ない訳ないじゃん、そんなの。

大人「では質疑応答を終わります。お疲れ様でしたー」

___答えはいらないから、僕に地図と、それと水も欲しいな。
   あとまだ疲れてないし。

大人「では、大人の国にようこそ。歓迎しまーす」

 《なお、この国は砂漠となっております。くれぐれも準備を怠らぬよう》

___知ってる。

1

手紙

もしきみが
明日いなくなったら困る
困る人がいること

もしぼくが
明日いなくなったら困る?
困る人がいること

困る人がいること
悲しいことだよ

困る人がいること
素敵なことだよ

きみは今
どこにいるだろう
久しぶりに手紙なんてかいてみようか

0

lost game

最初から
分かってたのに
なぜ私は
Enterボタンを押したのか
ちがうちがう
きみが誘ったんだ
きみにたどり着くための地図片手に
右へ左へあたふたと
私が負けそうなのを知ってて
きみはミッションを仕掛けるんでしょ?
Lv2
オトメゴコロダンジョン
きみの
心は
また
迷宮入り
逃げたって
最後は立ち向かわなくっちゃ
きみという名のラスボスに
どうやったって好きになる
攻略は難しいかな
恋はいつもlost game

0

level1

何時だって此処で語られる言葉は
不完全なまま宙を舞っている
語る唯一の存在が
自己不信に陥っているからだ

語り尽くされない思考は
輪郭の無い塊となって
記憶の奥底へと沈んでいく

言葉は曖昧だ
失われた欠片を追い求めてはいけない
論理は不完全だ
消えない矛盾に心を痛めてはいけない

そうして私は
柔らかい諦めに包まれて
戦いから退いた