黒髪に黒い瞳。それも、冷たい眼。
正面からみると、かなりの美形である。チャールズの顔も綺麗だと思ったが、彼も負けていない。
なんて思っていることがバレてはいけないので、社交パーティーでまなんだ微笑みを向ける。
「なんでしょう?」
「前の席、気を付けた方がいい。」
表情は変わらない。いっそ、瞳の冷たさは増したようにも見える。
「……はい?」
あえてこちらも変えずに微笑む。
「どういうことでしょう。」
目の前の男子生徒は瑛瑠を見下ろした。
「どうせ気付いていないんだろ?」
棘のある声に、さすがの瑛瑠も顔をしかめる。
何なのだろうこの人は。
「君、弱そうだしな。」
ふっと笑った彼は、八重歯を持っていた。
宇宙から見るとよくわかるんだよ
自ら輝かない小さな星々の集団
光を求めて 光にすがり 回り続ける
重力と遠心力に振り回されながら
光がなくても自分の世界はちゃんとある
もしも何も見えなかったら手をつないで走ろうよ
君がいるからこそ世界は動き出す
小さくても確かなその鼓動は僕らの象徴
光なんていらないさ さあ世界創造
巨大な社会の一部な自分
パターン化を始める人間機械
動力を次の動力へとつなげているだけ
役目は果たしているけど取り替え可能
動力無視して自分の力で動き出せ
自分が生み出す回転で世界を動かせ
君がいるからこそ地球は回り出す
何があろうとその瞳は僕らの動力源
部品なんていらないさ
さあ世界創造
理不尽に奪われる命があって
理由なく救われる命があって
絶対的に守られる命があって
意味不明に危険に晒される命があって
そんな中で生きている人間は、
醜く、美しく、綺麗で、恐ろしい。
学校なんていう背の高い建物は、少し離れた距離からでも認識できたため、さして迷うことなく着いた。もとより、歩いて行ける距離だったのだ。
次来る休日に、ここら辺の地理を把握しに出掛けようと瑛瑠は思った。
玄関は広かった。チャールズから昨日、学校についての細かい説明を受けたが、1つずつ思い出す。
『新しいクラス割りが張り出されているはずです。番号を確認し、ローファーは棚へ入れ、靴を履き替えてください。』
ここでは、屋内外で靴を履き替える習慣なのだそうで。それも含めて人間に馴染むこと、それが今日の指令の1つ。
早く着きすぎたのだろうか。
クラス割りは盛り上がるものだそうで、混むといけないと思い、だいぶ早く出てきた。まだ人数は数えられるほどだ。
さっと確認し、ローファーを脱ぐ。そこに、一人の男子生徒と行き交う。目があってしまったので、軽く会釈をすると、彼もそのように返した。
彼の方が先に棚に向かう。
瑛瑠が棚に書かれた自分の番号の確認をする。どうやら、先の男子とは同じクラスのようだ。彼の方が、番号は早いようだけれど。
入れると、横から声がする。
「君――」
大人「はい、じゃあこれからの人生で何か質問のある人いないねー?」
___ない訳ないじゃん、そんなの。
大人「では質疑応答を終わります。お疲れ様でしたー」
___答えはいらないから、僕に地図と、それと水も欲しいな。
あとまだ疲れてないし。
大人「では、大人の国にようこそ。歓迎しまーす」
《なお、この国は砂漠となっております。くれぐれも準備を怠らぬよう》
___知ってる。
もしきみが
明日いなくなったら困る
困る人がいること
もしぼくが
明日いなくなったら困る?
困る人がいること
困る人がいること
悲しいことだよ
困る人がいること
素敵なことだよ
きみは今
どこにいるだろう
久しぶりに手紙なんてかいてみようか
最初から
分かってたのに
なぜ私は
Enterボタンを押したのか
ちがうちがう
きみが誘ったんだ
きみにたどり着くための地図片手に
右へ左へあたふたと
私が負けそうなのを知ってて
きみはミッションを仕掛けるんでしょ?
Lv2
オトメゴコロダンジョン
きみの
心は
また
迷宮入り
逃げたって
最後は立ち向かわなくっちゃ
きみという名のラスボスに
どうやったって好きになる
攻略は難しいかな
恋はいつもlost game
何時だって此処で語られる言葉は
不完全なまま宙を舞っている
語る唯一の存在が
自己不信に陥っているからだ
語り尽くされない思考は
輪郭の無い塊となって
記憶の奥底へと沈んでいく
言葉は曖昧だ
失われた欠片を追い求めてはいけない
論理は不完全だ
消えない矛盾に心を痛めてはいけない
そうして私は
柔らかい諦めに包まれて
戦いから退いた