『どうせ気付いてないんだろ?』
彼は相当な実力者だろう。人間に1番近いウィッチの魔力をキャッチできるほどのアンテナだ。瑛瑠は一切使っていなかったのに。
確かに気付いていなかった。腹立たしい。筋違いとわかっていても、彼にさえ腹が立つ。
そこまで思って、息を吐いた。このままでは、自分がとらわれてしまう。今 暴走しても、止めてくれる人はいない。
歩を進めながら考える。彼の種は、大体予測できた。
1人、見つけた。やはり話しかけようか。
そう思ってかぶりを振る。チャールズに止められているのだ。それだけではなく、まだ彼とは話せない。どれだけ信用のおける人物か、わからない。会って早々あんな態度で、会ったこともない人を気を付けろと言う。
『どうせ気付いてないんだろ?』
再び思い出す。
『君、弱そうだしな。』
この手の差別は受けたことがなかった。が、実際にあるのだと痛感する。
こう言われた理由。
――私が、ウィッチだから?
もしも明日僕が
死んでしまうなら
誰かの命を犠牲にしてでも
生きたいなんて
願うのかな
詩を書くために教科書は必要ないけれど、ときどき誰かに教わりたくなる。
美しいものに法則はないけれど、ときどき理由がわかったりして嬉しくなる。
最果タヒさんのSNSで初めて知った「公募ガイド」なる雑誌の7月号に
詩を書こう、と云う特集が組まれていて、とても興味深く読みました。
宣伝じゃないけれど、書店で見かけたら手に取って見てください(宣伝じゃん)
日常は突然終わる。
例えばそれはたった1つのインターホンで。
例えばそれは机にこぼれたコーラで。
例えばそれは不意に口をついた一言で。
例えばそれはいつもより早く起きたことで。
例えばそれは六と少しで。
例えばそれはロクヒトハチで。
例えばそれは月曜日のギターで。
いつもと同じような日々も、
なにか、違う。
そのまま教室へ向かう彼を追いかけるほど、瑛瑠に余裕はなかった。
この屈辱、憤りをどうしてくれようか。初対面である。礼儀とは。マナーとは。
すべてを叩き込んでやりたいと、そう思ってしまった。
怒りにいこうか、それとももう一度話を聞こうか。いや、無視?
そこで、あることに気が付いた。微かに残るこれは
「――魔力。」
魔力は、使う意思のあるときしか原則放出されない。身の危険を守るためや、自らの痕跡を残すため。原則というからには例外もある。
それは、強い感情を持つとき。
意思によって制御している部分が大きいぶん、それに勝るだけの強い感情を持ってしまうと、制御できず魔力が漏れることがある。それゆえ、よく争いも起こる。感情が魔力という形となりやすいからだ。
しかし、代謝のようなものなので、普段意識するようなことでもないことも確かで。
種によって力の相性の良し悪しもあるため、大概は同種族で過ごしている。
長々と説明してしまったけれど、今のこの魔力は、原則の後者だと瑛瑠は考える。居場所を知らせるためでも、テリトリーだと主張するためでもない。
自分は西洋妖怪だと暗に示すために、彼は残した。