お疲れ様。
愚直ったり、目があったり、助けあったり、本当に三年間幸せだった。
もう二度と貴方達が部活をしてる姿を見ることはないのね。
私の心のように降り続いた雨は、貴方が引退することを止めたいようです。
それでもいってしまうのなら、精一杯の晴れでさよならしましょう。
「ただいま帰りました。」
「お帰りなさい。」
リビングにはチャールズ。決まってソファで本を読んでいる。このときだけはどうやら眼鏡なので、なんだか得をした気分になる。
「手を洗い、着替えてきてください。お昼ごはん準備しておきますから。」
栞を挟んで眼鏡を置き、立ち上がる。
瑛瑠は、はいと応えてリビングを出た。
多少の肌寒さは残るものの、暖かい日差しが心をわくわくさせる。洗面台にある窓は少し開いていて、昼の暖かさと共に、菜の花の香りを運んでくるようだった。そういえば,と通学路に菜の花がかたまって咲いていた場所があることを思い出す。
お腹はすいている。気化熱によって寒く感じた手を守るように、かけられたタオルで拭き、部屋に戻る。
楽な服に着替えて先生から渡された手紙を手に、再びチャールズのいたリビングへと戻る。
キッチンからテーブルへ、料理が運ばれてくるところだった。
「あ、お嬢さま。手伝ってください。」
王宮にいるときは絶対に言われなかった言葉。
付き人っぽくないと薄々思っていたが、瑛瑠はこちらの方が好感が持てた。
手に持つ手紙をテーブルの端に置き、イエスと応えるかわりにチャールズのもとへ駆け寄った。
「チャールズは、私の付き人の前は何をしていたの?」
1年と半分ぶりに"あの人"を見た
寝過ごしてしまった電車の車窓から
久しぶりに見た"僕の家"
後ろ姿だけだったけど
確かにあれは"あの人"だった。
ということはそばで遊んでいた"彼女たち"
は…
目が悪いのに生憎メガネをかけていなかった僕はぼんやりとしか見えなかったけれど。
"彼女たち"は確かに笑っていた。
僕のせいで傷つくこともあっただろう
"彼女"は少し背が伸びて、大人っぽく見えた。髪型も少し違っていたかな。
僕のことなんかもう覚えてないだろう
"彼女"は僕の記憶よりも遥かに背が伸びて
黄色い帽子を被っていた。
もう小学生になったのか。
何故だか涙が止まらなかった。
久しぶりに見た"僕の家"と"あの人"と"彼女たち"。
車窓から見えた一瞬の景色に
あんなにも目を奪われて。
左に過ぎ行く景色を首を伸ばして追いかけたのはいつぶりだろうか。
いつか、また、どこかで。
僕があの日死んだのは
紛れもなく偶然でした
一度死んだら
後は生きるだけ
簡単なこと
僕があの日生きたのは
紛れもなく運命でした
夏の匂いがする
平成最後の夏
どこか遠くへ
一面緑と山と自然に囲まれたどこか遠くへ行きたい
心がざわざわする
何かが起こる予感
まぁ毎年そうなんだけどね
結局いつもどおりなんだけどね
哲人「では君は、皆が君にもっと感謝してしかるべきだ、そういうのだね」
青年「その通りです」
哲人「しかし、それを自分で言ってしまってはおしまいではないかね」
青年「そういう話ではありません。誰もやらない仕事を仕方なく私が引き受けているというのに、なにもしない外野がとやかく言うのが我慢ならないのです。」
哲人「ほう、仕方なく、と」
青年「はい。そんなに言うなら自分がやれ、なにもしないくせにつべこべ言うな、と言ってやりたいのです」
哲人「いや、君、それは違うよ」
青年「何が違うのですか。何一つ間違ったことは言っていません」
哲人「確かに、君の言っていることは正論だ、しかし...」
青年「そうです、その通りです!私が言っていることは正論ですよ!」
哲人「まあ待ちたまえ。そう、君の言っていることは正論だ。正論は正しい。ゆえに正論と呼ぶのだ。だがしかし、正論を振りかざすのは正しいと言えるかね?」
青年「.........」
哲人「まあそれは別の話としてもだ。君がその仕事に就くとき、本当に抵抗できないほど強制されたのかね?それとも、誰かに頼まれて、君が言うところの『仕方なく』やっているだけなのかね?」
青年「.........後者です、しかし......」
哲人「もしそうであるなら、君こそとやかく言うことはできない。例え断ることができない状況だと君が判断したのだとしても、今の状況を選んだのは、他の誰でもない君なのだ」
青年「そうですがしかし......」
哲人「家族を人質にとられて人を殺したのだとしても、殺人をおかしたのはその人だろう?」
青年「...そ、それは極論ですよ!」
哲人「確かに極論かもしれない。だがね。君が言っているのはそう言うことなのだよ。わかるかい?」
青年「.........」