透き通るような白を、瑛瑠はほんの少し弄ぶ。そして、チャールズもまた、静かに弄ばれていた。
あなたは私のお兄ちゃんなの?人間界へ何しに行っていたの?プロジェクトって何?あの狐は何なの?ジュリアさんやレイさんは仲間?みんな無事だったの?
――どうして隠しているの?
一度考え始めると、聞きたいことは山のように出てくる。
そしてふと引っ掛かりを覚えてそれが何なのか繋がったとき、思わずチャールズの頭を叩く。
「ねえチャールズ!学校は!?」
静かに毛先を弄ばれていたチャールズは、いきなり頭を叩かれ、宇宙人にでも会ったかのような顔をする。瑛瑠に容赦なく叩かれた部分をおさえながらも、
「登校日は今日で今週最後です。お嬢さまが眠っていた二日間は、欠席扱いになっていますよ。」
と丁寧に答えてくれる。
よかった、まだ休日ではない。英人と話さなければいけないことが増えた。
英人の指輪が、なんとなく心強い。きっと、学校へ行っても大丈夫だろう。
そんなことを瑛瑠が考えているのを、まるで見透かしたかのように、チャールズが手首を掴んで言う。
「まさかお嬢さま、学校へ行くおつもりですか?」
「……まさかチャールズさん、止めるおつもりですか。」
チャールズは、綺麗なその顔を歪ませた。チャールズの必殺技、質問には質問で返すを盛大ブーメラン。
なんだかチャールズが過保護になっている気がすると、なんともなしに考えた。
当たり前のように
時は流れ、季節は巡る。
季節は4つにしか変わらないのに
僕らの周りでは多くのモノが変わってゆくね。目が回りそうだよ。
でもね。
これだけは約束するよ。
いくら季節が移ろっても、
花が咲き、散ってまた新しい芽が出ても。
君への想いは、いつになっても変わらないと。ずっとずっとね。
ほら泣かないで?
お互いを想いすぎてすれ違ってしまっても
自分に余裕がなくて冷たく当たってしまっても。
その分だけ…それ以上に
君のこと大切だって気づけたんだ。
遅すぎかな?
もし君が
これからを考えて不安に思えて眠れない夜
寂しさや涙にくれて眠れない夜
夢で逢おう。
そしてどこか旅に出よう。
旅ってほど大掛かりじゃなくてもいい。
どこか2人きりで。
どこへ行きたい?
…僕?
僕は君がいたらどこでもいいよ。
美しいとは思えなかったこの世界。
誰も、何も信じられないはずだった世界。
でも1人じゃいられなくて。
誰を信じたらいいんだろうなんてもがいて。
僕に見えていた世界を
180°変えてくれたのは君だよ。
色をつけ、光に溢れる世界にしてくれた。
これから先、手を繋いで歩いていってくれますか?
あなたに贈る僕からのうた。
何よりも大切なあなたへ。
君は原石
磨けばひかる
なぜ周りの人はそれに気ずかないのか?
誰も君を輝かそうとはしない?
君も自分から行動をおこさない?
ならば、、、、気ずいたオレが磨いてやらなければ
どうしたら君は輝くだろう?
どうすれば行動を起こせるようになるだろうか?
あれやこれやでなやむ
人の笑顔見てたら、なんか嬉しい。
こっちもつられて笑いだす。
インフルエンザとは違うし、あくびとも違う。
速効性のある、治療薬のない伝染病。
うつされても文句は一つも出てこない。
笑顔は、幸せになれる麻薬みたいなもの。
副作用は何一つない、完璧なそれ。
その代わり、依存性はタバコの比じゃない。
最近よく笑うようになったな、って思って、
この笑顔を死ぬまで出来たらいいなって。
ヤなことたくさん忘れられるし。
往生際悪く笑ってられたら、
きっと楽しい人生だって思えるかなって。
「一番近くでお嬢さまを守らなければならない私が傍にいて、何が悲しくて成人したてのヴァンパイアにマーキング紛いの行為をされて返されなければならないのです。」
何だろうこの感じ。
相変わらず顔は上げないチャールズの、その髪に触れる。
もしかして。
「妬いてるの?」
いいとこどりしたヴァンパイアに。年下の、成人したばかりの彼に。
要は、ウルフに対する注視をあまり優先しなかったために付き人としての任務を果たせず、一方で承けたばかりの随身具を左手の薬指につけるなんていう意味深なメッセージとともにマーキング紛いのことをされた状態で家に返されたことが気に喰わないと、そういうことではないのか。
「……ちょっと違います。」
小さい声が聞こえる。
天の邪鬼、違うくない。
不貞腐れるようないじけているような。
「娘を嫁に出す父親の気分なんです。なんなら、彼氏に妹を取られた妹離れできない兄でも構いません。」
娘もいなければ一人娘の瑛瑠はお婿さんを迎えるはずで。
兄とはまたなんとも……。
キャラ崩壊も甚だしい。
そうだ、あの夢の内容を聞いてみようか。
黙りこくってしまった空気を、ふたりは少しの間共有した。
もっと、も〜っと小さいとき
どうしてあんなに人に甘えず生きてこれたのか
わかんなくなるくらいに
人の温かさが恋しい、この頃。
何より、今まで言えなかったことを
聞いてくれる人ができただけで
私はきっと幸せだ
だけど、それでも
そんな人たちを少し突き放して
独りで生きてみようとしてしまう私は
阿呆で
でも突き放したとき心の中で
とっても寂しくなるのは、ホントの話。
寂しがり屋で、独りが好き
強気でいながら、人が好き
わけのわかんない揺るぎの中で
ここにだけは居させて下さい。
お願いします。
私もそろそろ大人なんだから
一人、部屋の片隅で、踏ん張れる人間になりたいのだけれど…。
なりたい人にはなれないみたい
誰よりも綺麗に着付けした浴衣を
膝の上までたくしあげる
そのくらい、はやく、会いたかった。