誰にも教えなければよかった
なんで大切にしなかったの、大切にもらったものなのに
僕は平和な時間に嫌われた存在
僕が動くのは、誰かが苦しんでるとき
僕が先頭に立つときは、誰かが傷つききった後
僕は平和な時間に嫌われた存在
僕が立ち止まるのは、誰かの身代わりになるとき
僕は......有事の存在
それでも誰かのためにと、走る続ける
この世界の片隅で、誰かのために血を流す
僕は平和な時間に嫌われた存在だ
颱風のしっぽが窓ガラスをたたいて
窓をあけたら、秋でした。
ドリンクホルダーにひとくちだけ
残ってた珈琲が苦くてしかめた顔
熱くて灼くて暑かった、夏のこと
いつしか置いてた
旅行のパンフレット
ぼんやりと見返してたら
誰も私を知らない場所に行きたい欲
なんてのがふと出てきて
時間も金も勇気もないくせに
「ちょっと出かけてくるね。」
なんて呟いてみた
片想いはすっごく楽しいよ
彼の少しの行動でドキドキして
ときどきみせる無邪気な笑顔にキュンキュンして
彼の後ろ姿を目でおって
・
・
・
でもやっぱり彼にとって特別な存在になりたい
どうやら今日は予定が立て込む日らしい。望との会話終了に間髪を入れず名を呼ばれる。声の主は歌名。ちょっと来てほしいと何やら堅い面持ちで、所謂呼び出しを受けた。怒りは感じられないものの、緊張がひしひしと伝わってくる。
「伊藤さん、その……私、何かしましたか?」
心当たりがないものだからこう聞くしかなくて。
階段の踊り場で、歌名は止まった。
身構えた瑛瑠は、やっと開かれた歌名の口から出る言葉に拍子抜けすることになる。
「と、」