感傷的になったがために
空っぽになった涙腺に
クマを溜め込む午前2時
環状線を走り廻る快速列車
2、3両間の緩衝材のなかで
ロングスカートに顔をうずめて
昨日と明日を行ったり来たり
からん
からん
空っぽのラムネの瓶
透き通った新橋色
ころん
ころん
どんなに指をのばしても
あのビー玉が
どうしても
取り出せない
すぐそこにある
指先だけなら
触れることもできる
もう少し
もう少し
嗚呼
どうして
どんなに頑張っても
ビー玉だけは
取り出せない
まるで人の夢
まるで人の心
ならいっそのこと
叩き割ってしまおうか
でも
壊したくないんだ
傷つけたくない
からん
からん
届かない
ころん
ころん
手に入らない
どうしても
どうしても
残ったのは
影ばかり
君がいたから
今の僕がある
孤独で凍えていたあの日々に
温もりをくれた
今はどこに居るのかも分からないけど
何があっても忘れないと言い切れる
そのくらいあなたは
僕の光だった 希望だった
いつか出会えると信じて
今日を歩いて行こう
どんなに不安な未来だって
あなたが歩みを止めない限り
同じように歩き続けれるから
いつまでも
Thank you for you
今度は皮肉げに言う。名状しがたい色とは、皮肉だったのかと妙に納得する反面、確かにお姫様抱っこやハグしかり、罪深い行動をさらりとやってはのけるが、フェミニストチャールズを最低と言う女性がいたとは。例の彼女か、その彼女関連か、聞きたいのに聞けない瑛瑠がいる。
「だから、確かに質問内容にも多少は困っていますが、それ以上にお嬢さまにそんな顔されることに困っていたんです。」
まあ、私に否があるのですがと応えるチャールズは、立派な軌道修正士だ。結局聞けなかったことにささやかな残念はあったものの、もう少しお互い探る真似を止めるようになってからでも良いかと胸に落としておく。
「やはり、現状についてはまだお話しできません。動きが出たらお話しします。」
「……昔のことも?」
「はい。」
僕は知っている
君の手の甲の絆創膏が
君を覆い隠していることを
ホチキスのはりが刺さったの
どんな使い方してたんだよって
僕は笑ったけれど
僕は知っていた
絆創膏を替えるそのしたに
見覚えのある
小さな傷跡があることを
感傷は
終着駅じゃないよ
風呂の残り湯じゃないよ
夜明かしの酒じゃないよ
その手の絆創膏じゃないよ
そんな下らない言葉は
とうの昔に飲み下して
やっと気づいたんだ
僕は
君を知りたかった
隠された秘密も全部
大事なところも全部
激しい痛みも全部
それを全部覆って
僕だけが知る君を
僕は
君のマスクになりたかった
僕は
君のスカートになりたかった
僕は
君の絆創膏になりたかった
それは
音もなく
弾けて消えた
守る隙さえ見つからなくて
壊れたあとは
何も残らない
何事もなかったかのように
水面は凪いでいる
またひとつ
弾けて消えた
ほら、またひとつ
どうせなら
僕と一緒に遊びませんか
ぽつり
最後のひとつが
弾けて消えた
残ったのは
空虚な僕だけさ
君は僕を置いていった
長い秋色のスカートを翻して
僕は感傷的な気分をホチキスでつなぎ留めて
一人で俯いていた
秋が過ぎて 冬がきても
まだ厳しい季節が続くんだ
見上げた夕焼けが僕の胸を焦がした
この気持ちが
切ない
ってことなんだ
きみがホチキスで留めたままのスカート
裾を引き摺って歩きだしたのは雨降りの
感傷的と云うことばのよく似合う昏い夜
(出来がイマイチなのでもう一つ描きます)
冬の明け方に破ったフレアスカート
内側に織り込んでホチキスで留める
綴じ込めた思いが弱かったのか
履いてみたら銀色で肌を傷つけた
痛みで覚ました感情は
まだまだ冬には染まらない
雨が地上に落ちてくる時間よりも
短いかもしれないほんの一瞬。
目が合って。
にこってしてる君の笑顔が見られたから
もうそれだけで頑張れる気がするのは
僕が単純だからなのかな。笑