未来へ手を伸ばしてるだけじゃ届かない
届かない距離にあるものが綺麗に見えるなんていうのは言い訳なのかもしれない
何もしてないなんて、嘘、うそ、ウソ
泥水の中でもがいていて、きっと沢山飲んでしまった 中に毒が入っていたから
今でもまだ
「めぐちゃん聞いて!」
と、呼ばれたのは昼休み。
「何」という返事もつかのま 教室のカーテンにひきこまれる。
みゆきが小声で言うには、なんと哲くんから花火大会に誘われたらしい。花火大会は2ヶ月後だ、まさか先手を取られるとは思っていなかった。
「ねえ何きていこうかな」「やっぱり浴衣かな」
みゆきは嬉々と花火大会への想像をふくらましている。
浴衣のみゆきなんてかわいいに決まっているじゃないか。そもそも誘いをOKする前提なのもさみしい。
みゆきと花火大会へ行くのはわたしだ。
「めぐちゃん聞いてる?」
少し上目づかいになりながら。困った顔もかわいい。こんな顔も、哲くんとやらに見られてたまるものか。
「みゆき、」
呼んで 手を握る。
「花火大会、わたしと行こう。」
この時期になると、君のことを思い出します。
一緒に卒業するはずだった君。
一本遅いその電車に私は乗っていた。
『この先で事故が発生し――お急ぎのところ、遅れて申し訳ありません。』
知らないって楽。そのとき、早く帰りたいなんて思ってしまえたんだから。
先生からすべて聞いたとき、私がどれだけ泣いたか知らないでしょう。
真っ白になってるくせに、ぐわんぐわん鳴るあの頭の頭の痛みを、君は知らない。
泣いてはいけない。そう思うのに、溢れてきて吐きそうな嫌悪感を堪えていたことも。
可哀想とは思っていません。悲しいことだと捉えることも止めました。でも、寂しいとは思うかも。
そして、未だに涙が出ます。
想い出は上書きされ色褪せていくから、いつか君のことを思い出さないことがあるのではないかと考えると、それは恐いです。
だからこそ、不意に思い出したときは、君のことをたくさん考える。
だからね、文字にしてみました。
やっぱり涙は出てきたけれど、今はそれでいいと思っているので、もうちょっとだけ、泣かせて。
烏が飛んだ。黒い羽を落として。
新聞を配るバイクの音が静かな世界に少し響く。
君は仕事に。
脱ぎ散らかした下着とベットに甘い香りを残して
カーテンの隙間からこぼれる陽。
1人。慣れた手つきで煙草に火をつける。僕。
烏は戻る。家賃三万五千の愛の巣に。