「クッキーありがとう。」
寝る前、ふと思い出してチャールズに声をかける。例にならって、チャールズは眼鏡をかけて本を読んでいた。
「使うべき時が、ちゃんと来たでしょう?」
顔をあげてこちらを見るその碧は柔らかく優しい。
察してくれて良かったですと微笑む彼は、ついでに、さすがに持ち帰ってこられたらふたりの立ち居振舞いを疑ってしまいますからね,なんて辛辣な言葉も添えて寄越したのだが。
「でも、どうして?」
野暮な質問であることに気付くべきだった。お嬢さま,とたしなめるような声の調子に、困ったような呆れたような笑みを貼り付けるも、チャールズは答えてくれる。
「きっと払わせてくれないと思ったから。そう言って、渡されたことがあるんです。」
チャールズは続ける。
「こちら側としては相手に払わせる選択肢は存在しないのですが、さすがに当たり前のような顔をされてしまうのは癪でしょう?」
さも可笑しそうに言う。
経験があると見た。
「だから、それが嬉しかったんですよね。
まあ、彼がどう思ったかは図りかねますが、嫌だと受け取られることはないでしょう。」
思い起こすが、嫌悪感はなかったはずだ。
「10年の差って大きいのね……。」
チャールズの話を聞き、違いを分かりやすく突きつけられ、改めて感心する瑛瑠だった。
少し前からここに載せていた「とある街にて」ですが、
文字数制限とか表現方法とかいろいろあって僕には難しくて
やっぱりここに載せるのは中止にします。
折角なので小説投稿サイトであげようかとも考えています。
以上、お知らせでした。
陽がゆっくりと沈んだあとに、
澱んだようなそらが残った。
いつかみた紅茶色と、よるの
君は女の子らしくメイク道具が好きなんだって?
最近彼氏が出来て彼氏に夢中?
だからなんだい?
別に羨ましくなんかないよ。
私はLIVEで手を思いっきりあげていた方が幸せさ。
幸せの対象はなんだっていいじゃないか。
目を開いて
鏡に映った
自分の姿
───本当に?
本当にそれが
自分の姿か?
鏡に映る世界が
瞳に映る世界が
カメラに映る世界が
本物だなんていう確証
一体何処にある?
生まれたときから
当たり前のこの世界
何が真実かなんて
誰に分かる?
君に近づくたびに
疼く張り裂けそうな胸の痛み
無言ですれ違ったとき
切なさが全身を駆け抜ける
嫌だ このままじゃ嫌だ
思ってることが言葉に出来なくて
苛立ちを何かにぶつけて
自己嫌悪で消えたくなったりするけど
君を憎めない 恋を憎めない
恋なんてしなきゃよかった なんて
思えない程
君のことが好きだ
ぼくのようで ぼくではなく
あなたのようで あなたでなく
きみのようで きみでもない
かのじょのようで かのじょじゃなく
かれのようでも かれではない
だれかのようで だれでもなく
それでもどこかのだれかさん
いまかんがえたほんとのはなし
ーーケンティライム特別収容所ーー
「えらく真っ暗だな…」
「夜だからな…。流石に今灯りをつけると大騒ぎになるぞ」
「ああ、だろうな、この血の気の多い奴らめ…。何かと文句をつけて騒ぎたがるんだから。この間だってそうだ、いびきがうるさくて眠れないとかで真夜中に大騒ぎしやがった。救護班も大忙しだったらしい」
「全く…。俺たちにはどうしようもねえよ。"ヤツ"以外はそれこそ何かにつけて騒ぎたがる野郎共ばかりなんだから」
「"ヤツ"って……あの、No.2のことか?」
「そうだ。…しかしそのNo.2の眼つきだ、No.1さえ凌ぐ凄みでいやがる。一体何をしでかしたんだか、まあせいぜい看守の俺たちには知るよしもないがな」
「だが、あの歳でNo.2たあ、さぞえらいことをやらかしたんだろうな。いつここに来たんだ?」
「ん?ああ、そうか。お前さんは十日前にここに配属になったんだっけか。"ヤツ"は、そう、ちょうど今日から三ヶ月前にここに来たんだ」
「三ヶ月前…ってことはまさか、"ヤツ"があの……?!」
「シッ、声をあげるな。そう、例の件の主人公だと、俺たちは踏んでる」
「ううむ…」
「ま、俺たちには関係のない話さ。俺たちは俺たちの仕事をする。それだけだ」
「うん…。故郷に置いてきた息子がちょうど同じくらいの歳で…うわあっ!」
「おい、静かに…!どうしたんだ」
「こ、こいつ起きてやがる…」
「ん?ああ、夜回りは初めてか?No.2はいつも目を開けたまま寝るって有名な話だぜ」
「これ寝てんのか…。なんて野郎だ」
「さあ、見回りを続けるぞ。ほら、気が散って足音がでかくなってる」
「ああ、すまんすまん。ったくそれにしても上は何を考えてるんだ。夜回りのやつにくらい、こんな軍靴じゃなくてもっと足音のたたない靴を.........」
「.........。」
幼いころ抱きしめて寝ていたテディベア
テディベアだからテディなんて安易な名前をつけて遊んでいたあれは確か引っ越すときに捨ててしまった。
誰からも愛されるテディベアが
いま思うととても羨ましく思える。
誰からも笑顔を向けられ
誰からも抱きしめてもらえる。
そんなテディベアに僕はなりたかった。
時にストレスの捌け口として向けられるちからにも負けぬ丈夫さ。
抱きしめたときのやわらかさ。
寄り添われているという安心感を与える存在。
涙を流すことなど1度もない強さ。
透き通った瞳。
そのなかの1つとして持つことができなかった出来損ないの僕。
売れ残ったあまりもののテディベア。
そんな僕を抱きしめてくれるのは誰?