いちばん愛しいひとはいちばん憎いひと。
いちばん近いひとはいちばん遠いひと。
いちばん美しいひとはいちばん醜いひと。
机の上に置かれている
生真面目な平面世界より、
窓の外に広がる洗いたての空に
心惹かれたから。
大してあたまに入っていない
公式や年号より、
僕には心躍ることがあるから。
先生、ごめんなさい。
僕はもうここに留まっていたくない
時間が作りあげる
君とワタシの物語
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涙で用紙がちゃんと見えなかったんだ。
どうしてなんだろう、止めようと思うほどあふれてくる。
僕は弱い。
でも、テストよりも自分の心にあるもやもやを早くときたかった。
あぁ、って思った時には遅かった。
白紙のまま、それは回収されていった。
僕はまだ問題が解けないまま、ここにいる。
「理不尽じゃありません?」
そこまで痛いわけではなかったが、これ見よがしに額をさすって見せる。
なんかなんていう理由で額を弾かれるなんてと英人を睨むけれど、彼はどこ吹く風である。
「もう行くぞ。送る。」
いつもの調子でそんなことを言うものだから、瑛瑠は苦笑して立ち上がる。
「じゃあ、お願いします。」
そう言って英人を見るが、彼の目はこちらを向いていなくて。
瑛瑠の足元に向けられた視線を辿ると、地面には何かが落ちている。
不思議に思って拾い上げたそれは、どこかで見たような、真っ赤な花の付いた針のようなもので――
「それ!」
小さな女の子。艶やかな黒髪が目に飛び込んできた。髪はふたつの小さなおだんごにされていて可愛らしく、一切の曇りのない瞳を持つ彼女は、5歳くらいの紛れもない美少女であった。
ブランコで見かけた子どもはこの子だったのだろう。
「返して!それ、アカネの!」
泣きそうなその声に、ふたりは顔を見合わせた。
居場所なんてなくいい。小さな興奮は、加湿器の蒸気のようで、暖房が低く唸るこの部屋には、もうコーヒーの匂いが染み付いて逃げられない。
夜だ!
僕はコーヒーカップを小さく叩いた。雑然とした机は、それでもなんともないように僕の所作を邪魔する。捨て損ねたペットボトルは銅像じゃないんだから、早くどいてよな、そこをね。窓を叩く音がする。それが雨だと気づくまで、そんなに時間はかからなかった。逃げられない。でもいいんだ。居場所なんてなくていい。ただここにいれば。
タブラ·ラサ。
それが答え。
まだ解答途中です。
人生一つ分待って。
あの日の夢、光纏って羽ばたく
夢の先、塗りつぶす悪夢
幻想と現実の輪舞曲
夢幻の希望、この光に生まれる
離ればなれの命が希望をかけて
3つの夢、離ればなれの1つ
テストは道具、纏うも脆く