時雨視点
どういうこと?何で涼香が怪物にならなきゃいけないの?そんなことを考えていると、ゾンビが
「でも、もしかしたら、人間だった頃のことは忘れるかもしれない。それでもいいのか?お前は。」と涼香に聞いていた。
涼香は少し考えてから、
「それでも、今まで助けられてきた分今度は私助けたい。だからいいよ。なるよ、怪物に。」
「ねえ、ダメ。やめて。」
そう言いたかったけれど、私の口からは、何の声も出なかった。
結月の方を見ると、まっすぐに涼香を見つめていた。そして、涼香は私達の方を見て、一言言い放つと光に包まれて消えてしまった。
「さよなら、大好きだよ」
私にはこう呟くことしかできなかった。
「ごめんね、大好きだよ」
結月視点
涼香は居なくなってしまった。泣き喚いても、
叫んでも、涼香は戻ってこない。
涼香が言い残した言葉に僕は、
「守れなくてごめん。
さよなら、大好きだよ」
そう返すことしか出来なかった。
時雨ちゃんがおかしくなったのは、
調べた通り、あいつらの所為みたいだ。
魔界からの干渉。僕らはそこまできてしまったのか。
涼香が居なくなって数日。
涼香のお墓が建てられたそうだが、その下には、
何も埋まっていないらしい。
また、涼香のピアノを見つめて、1日が終わる。
時雨ちゃんも、美月も、玲も、守らないと。
僕が僕であるうちに。
【#8 アディショナルメモリー 終わり】
【#9 に続く】
「ねぇ、笛吹さん」
今日の授業が全て終わって帰りの学活も済み、クラスの人々が掃除し始めてから、わたしは、6時間目の授業が始まる前に「あとでね」と話を区切った笛吹さんに話しかけに行った。
「あー待って待って…、多分不見崎(みずさき)さんが今話したいことって、ここじゃできそうにないからとりあえずあっちで話そう」
笛吹さんは自分の鞄を背負いながら廊下を指差した。
「あ、うん」
「てか、今日この後暇? 部活とか…ないよね?」
笛吹さんはふと思い出したようにわたしに尋ねる。
「そうだけど」
まぁ部活は暫くの間行ってないから、別にいいのだけど、とわたしは心の中で付け足した。
「じゃ廊下で待ってて、あたしは茉花とかに先帰ってていいよって言いに行くからー」
彼女はそう言って、仲の良い友達たちがいる方へと行ってしまった。
わたしは、彼女の言った通りにとりあえず廊下に出ることにした。
別に、私の手を握ってもいいんだからね。
やあやあどうも、こんにちは皆さん。最近暑いなー、なんて思ってたら今度は梅雨入りで逆にひんやりし過ぎるくらいなお天気の今日この頃。元気にやってるかい?え、お前誰だよって?タイトル見ろよ、キタさんだよ。こんな雰囲気の夜に一つ怪談でもしようかと思ってね。まあ聞いてくれ。
これはこの間実際に僕自身が体験した話なんだ。仕事の都合でちょいと人通りの少ないところを歩いていたんだ。え?僕の仕事が何かなんてどうでも良いだろ?するとパントマイマーが一人、芸を披露してたんだ。それを見てたら、そいつ芸を止めて建物の隙間の細い所に入っていったんだよ。これは興味深いな、と思って後をつけたんだ。ああ、仕事は別に急ぎじゃないから良いの。で、しばらく進むと4m四方くらいの空間に出たんだよ。中庭みたいなものなのかな?いやそんなはずは。
ここからがミステリー。あのマイマーは居なかったんだ。行き止まりだったし分岐も無かったから居ないわけは無いのに。
おかしいなあ、と思ってその空間から引き返そうとしたら、来た道に入れず、何か透明な壁に阻まれたのだよ。少し驚いたが僕はそう簡単に焦ったりしない。僕が戻るのを阻んだものを『可視化』しようとしたんだ。ところができなかったんだ。何も可視化出来なかった。まるで阻んだものなど存在していなかったかのように。けど何かあるんだよ。だから今度は『何者かの能力の影響』を可視化してみた。こんなおかしなことは何かの能力でなきゃあり得ないからな。流石に今度は少し焦った。何とその影響は『その空間全体に』広がっていたんだ。
男が目を開けると、女の泣き顔が見えた。
後頭部の下にぬくもりがあった。女の膝に頭が載っているのだ。
起き上がろうとするが、力が入らない。
明かりの漏れているほうに目をやると、ロバがあらぬ方向に首をねじ曲げて倒れている。
「どうして泣いてる」
女に視線を戻して男は言った。
「……だって……またわたしのせいで人が不幸に……えぐっ……えぐっ……」
「気にするな。もう生きるのにも飽きていたところだ」
男がそう言うと、女は泣きやみ、きっぱりとした口調でこう言った。
「いいえ、あなたは死にません」
「えっ? ああ、そうなの。じゃあどうして身体が動かないんだろう」
「新しい身体に馴染んでいないだけです」
「身体?」
女は今度はためらいながらこう言った。
「あなたはロバになってしまったのです」
もうなにもかも投げ出して自由になりたい
他人の評価も、未来も気にせず生きていたい
人間辞めたい
何かを信じること
何かを諦めないこと
この世界で最もといえるほど
美しく 強い
けれども
世界は優しくない
何枚も何枚も 超えるヴィジョンを打ち消す
大きな壁を作り出す
何度も何度も 残酷な結末への予想図をそこら辺に散りばめる
キレイゴトという
僕らを跳ね除けるような言葉を掲げて
迫ってくる
その姿は決して
優しいものじゃない
僕の思う世界は 君の思う世界は
目の前に ありはしない
誰かが君を天使と言った
誰かが僕を悪魔と言った
人と世界が作る 認識ズレが
広がるたびに あなたと僕の溝が深く広くなるのでしょう
決して繋がる事がないかのように
拒み拒絶を始める
ただ悲しさを感じるだけで
ただそれだけ
誰かとまた 同じループを始める
「みんなが天使って呼んでる意味がわかったよ」って、そんなこと言われたいわけじゃないのに。
「私は、君が思ってるような人じゃないよ。
そんなに、強くて、優しい人じゃないよ。」って
そう言えたらなぁ。
私はただ、あの人みたいに優しくて、
あの人みたいに強くなりたいだけなんだけどな。
永遠なんて知らないけど
輝く星が命であること
忘れるみたいに簡単に
ぼくら永遠じゃないか
もっと仲良くなれていたら
素直で優しくなれていたら
結果は違ったのかもしれないのに
結局口をついて溢れた想いは
自分を傷つけて
止まらない涙におどろいて
気づいたのは貴方の優しさだった
好きで
好きで
仕方なかった恋も終止符が打てたら
幸せなのかな
心臓を穿つのは
たった一つの言葉なんだよ
それでも風穴は痛くない
痛いくらいの拍動が
麻酔の真似をしたようだ
弾痕には血も出ない
きれいに焼き進んでいったようだ
胸を空っぽにして飛んでった
小さな言葉だけど
それに気付いたら
気付いてしまったら
***
チープなあの歌が
自分のこころを覗くとは
思わなかった
思い出してしまうんだな
惨めにも思えないんだな
「悲しい」とも違うんだよな
全てやり直しても意味がないという
決して揺るがない予定説が
ただただ空虚なんだな
そんなぽっかり空いた空虚から
思い出したように滲みでてきた涙すら
落とす場所がない
あなたが泣いていいって言って
いくら
涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙
涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙
涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙涙
と呟いたところで
あなたの指先すら濡らせないことが
いつにもまして寂しいのか
それもまた空虚に呑まれて虚しいのか
それならば降水確率80%の雨が
こころを埋めてくれないものか