「いや、別に、わたしは不見崎(みずさき)さんは何もしてないって思ったからだけど」
「あ~ それは分かってるんだけど… そもそも、あの時能力使って大丈夫だったのかな~って…”異能力”って、バレちゃいけないって言うし」
わたしはちょっと恥ずかしそうに尋ねた。
「あ、そこらへんは…大丈夫! あん時目細めたから多分バレてないし、それに、茉花達とかはさ、わたしの『自分の言う事を相手に信じ込ませる』能力の副効果みたいなので、多分能力の影響が及んでいる間の記憶が曖昧になってるからさ、少なくともバレてないよ?」
ま、後で何か聞かれてもどうにかして言いくるめるからさ、と彼女は笑う。
「はぁ…ていうか、『自分の言う事を相手に信じ込ませる』って、すごくない⁈」
結構強力な能力だよね、とわたしが言うと、笛吹さんははにかみながら言った。
「え…あーいやアレ、できるのは、『自分の言う事を相手に”強制的に”信じ込ませる』ことで、『相手を自分の意のままに操る』ことはできないんだよね~。言う事はきかせられても、絶対に特定の行動させられるワケじゃないし…だから、意外と使い道限られちゃうんだけど…」
「やっぱり、すごいよ…」
わたしは思わず呟いた。それに比べてわたしは…
新しい風は 意外と冷たくて
目を細めて 眉はひしゃげる
背負いなれたはずの おもい おもい
忘れていいんだって 言うように
波が揺れる 遠く見える
陽炎 懐かしくて 少し笑った
眺めていた それもやめて
肩を叩きに、今歩き出した
やわらかな風は またも冷たくて
絵に起こしたら どんなだろうか
見なれたはずの まちの けしき
また今度ね って 言うように
砂がずれる 靴に潜る
重くなっても 気にしないで
枯れ果ててた 夢が覚めて
肩を叩かれて、今思い出した
波が揺れる 遠く見える
陽炎 懐かしくて 少し笑った
眺めていた それ忘れて
肩を叩きに
今 ひかりだした
「こちらは創業何年になるんですか」
「今年でちょうど、三百年になります」
「ご主人は何代目ですか」
「初代です」
「やはりか...」
「やはり...とは...?」
「ご主人、我々に協力していただきたい。実験体『ルーラー』」
「...へ?」
「まぁそうなるのも無理はない。報告ではLEVEL6の記憶処理をしたと聞いているからな」
「あんた、何をいってるの...?」
「まぁ自己紹介くらいはしておきましょう。私はエクス、プラネットの者です...アラクネ、捕縛しろ!ハウンド、ネメシスをこっちに回せ!スターク、転送の準備だ!」
「さて、これでフィクサー共は終わりだ」
好きな人を
見送るのって
こっちが辛いんだって
離れるのは嫌だって
そう言うと私は
わがままな子供になっちゃうから
でもね
飲み込むのは喉につっかえて
痛いんだよ
誰かわかってほしいんだよ
まただ…またこのうす汚れた人間の空気…
不満、ストレス、欲求、差別、嫌がらせ、妄想、
愚痴、憎しみ、怨み、怒り、不審、そういう、
空気…。ジブンハ キライ ソウイウ ココロ
「こちらは創業何年になるんですか」
「今年でちょうど、三百年になります」
「ご主人は何代目ですか」
「初代です」
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魂の抜けたような顔で、少女は遊園地の前に差し掛かった。依然としてうだるような暑さは変わらない。むしろアスファルトからの照り返しが余計に強くなった気がする。それでもエントランス前のピエロは涼しい顔で(まあ着ぐるみだからそれはそうなのだが)風船を配っている。
近づくにつれて、ピエロの様子がわかってきた。悲しげな表情に派手な服装。だいぶんとくたびれ、みすぼらしい有り様ではあるが、少なくとも汚いだとかそういう風ではなかった。赤や緑、黄色などの風船をもって、入園するしないに関わらず、手当たり次第子供たちに配っている。
風船を受け取った子供たちは、それはそれは嬉しそうに「ピエロさんありがとう!」なんて言っているから、少女の頬は知らぬ間に緩んでしまっていた。
────私も貰おうかな。
普段は無論風船なんて興味ない少女であったが、なぜかこのときはそんなことを思ったりした。
やはり足取りだけは魂の抜けたようで、フラフラとそのピエロに近づく。そんな少女にピエロも気づいたようで、こちらを向き、にっこりと微笑んだ────ように見えた。何しろ着ぐるみだから表情なんてわからない。ずっとその悲しげな表情は変わらないままだ。
少女がピエロの目の前に立つと、ピエロは残り三つ持っていた風船のうちの一つ───赤色だった───を、今までと同じように少女に向かって差し出した。少女はそれを受けとると、やはり他の子供たちと同じように「ありがとう」と言おうとしたが、なんだか突然気恥ずかしくなってうつむき、なにも言わなかった。
と、その時である。パアンと大きな音が頭上で鳴った。あまり大きかったので、周囲にいた人は驚いて皆少女の方を凄まじい勢いで振り返った。無論驚いたのは少女も同じである。
目を大きく見開いた少女は、身じろぎひとつしなかった。そんな少女を訝しく思い、ピエロがそっとその顔を覗きこんだ。
半ば放心状態の少女の目がピエロの目と合った瞬間、ついさっき割れた風船の音と同じ音が、右目の奥で鳴った気がした。
そこからのことを、少女はあまり覚えていない。気がついたときには目の前でピエロがグッタリと横たわり、少女は左手に封筒型の紙袋をもってカプセルをコリコリと咀嚼していた。
少女───霧崎あかねの右目の瞳は、真っ赤に染まっていた。
[完]