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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 5.クラーケン ③

運がいい事に、目的地は分かっているので自力で行けそうだ。多分駄菓子屋まで行けば、彼らに会えるかもしれない。
だから大丈夫、そう自分に心の中で言い聞かせた時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「…あ、」
思わず振り向くと、自分のやや後方に見覚えのあるメガネの少年が立っていた。
「…美蔵(ミクラ)?」
「アレ、不見崎(みずさき)じゃん」
彼は久しぶりだな、と言いながらこちらに歩み寄ってきた。
「ここで何してんの?」
「あー…友達とはぐれちゃって。美蔵こそ何してんの?」
「え、僕? 駄菓子屋行くとこだけど」
「あ、わたしも!」
わたしがそう言うと、美蔵は怪訝そうな顔をした。
「…フツー駄菓子屋行くだけで友達とはぐれる?」
「い、いや、何か先行っちゃってさ~」
「ふ~ん」
美蔵はそううなずいてから、ちょっとわたしを小馬鹿にしたように言った。
「…まさか駄菓子屋への行き方が分からないとかじゃないだろうなぁ?」

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南へ

ただのさざなみ

うみがめの唄声と
ゆりかごのメロディ

台風でもなんでもいいよ。

ここじゃない遠くへ連れてって

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ame ni flaletai

雨に降られたい

君に染まりたいように

雨があがれば

君が染まり太陽になるように

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心が死んでいく

あぁ つかれた しんどいな
ソファに沈みこみ動けなくなる毎日
あぁ つかれた しんどいな
誰にも会いたくない日もある
あぁ つかれた しんどいな
部屋に籠り過ぎていく休日
あぁ つかれた しんどいな
誰かに会いたい夜もある
あぁ つかれた しんどいな
…あぁ あなたに、会いたいや

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おく

『逃がさない』
やっと分かった意味
離れていく私を
ずっと近くに
分かっていなかったからもう一度
これからも私を
ずっと近くに

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   青!


 


硬い雲を書き殴りたい

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これから黒い車を目で追いかけて
これからオムライスを食べるたび思い出して
これからあの曲聴くたび下手な歌声が流れて
これからあの駐車場に行くたびにキスを思い出して
これからあの桜見るたび横顔が浮かんで
これから届くCDは一緒に聴くって言ってたのに
これから私は1人ぐらしするからたまには遊びに行くねって言ってたのに
これからはずっと一緒だと思ってたのに。
私がもう耐えられなかった
あなたからの言葉ひとつに傷つくことが

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純粋で 一瞬で 儚い
何者にも染まってしまう
一瞬しか見ることのない 汚れなき白
誰も知らない 見たことのない景色
この世界では存在すら一瞬すぎて
誰も認識出来ない
芸術
誰かを探して あなたを探して
彷徨うようで 何処か哀しげでもある
感情を秘めて

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わたし

 通学途中、駅のホームで、わたしを凝視している中年サラリーマンがいるなと思ってよく見たらわたしだった。
 そんなばかな、わたしはここにいる、だいいちわたしは男ではない、中年でもない、女子高生だと自分に言いきかせたが、どう見てもその中年サラリーマンは自分なのだった。
 中年サラリーマンが近づいてきた。
「僕じゃないか、何やってるんだ。こんな所で」
 わたしはショックで言葉を発することができなかった。
「まさか僕の前に現れるとはね。……とにかく家に戻ろう。まいったなぁ、今日会議なのに」
 中年サラリーマンがわたしの手を握り、引っ張った。わたしが振りほどこうとすると、中年サラリーマンは声を荒げて言った。
「いい加減にしろ! 君は僕なんだぞ」
「どうしました?」
 若いサラリーマン三人組がわたしたちの間に割って入った。
「いや、この子が……」
 中年サラリーマンが説明しようとする。
「お知り合いですか?」
 三人組のなかの先輩っぽいのがわたしにきいた。
 わたしは首を横に振った。
 先輩っぽいのが目くばせした。中年サラリーマンは、後輩っぽい二人にがっしり肩をつかまれ、先輩っぽいのに先導される形でホームから消えた。
 電車に乗り込むと、一気に力が抜けた。わたしはバッグからコンパクトミラーを取り出して開いた。わたしが映っていた。わたしはわたしだった。もう大丈夫。