記者:○○さん、今回の事件、どう思われますか?
○○:知りません
記者:友人の××さんが、行方不明なんですよね?
○○:はい、そうですけど?
記者:警察は、殺人も視野に入れているようですが?
○○:………何が言いたいんですか
記者:失礼しました……では、今の心境を。
○○:怖い世の中ですね
記者:それは、殺人のことですか?
あなたも関係しているんですか?
○○:どうしてそうなるんですか。
記者:では、「怖い世の中」とは?
○○:まさか、わからないんですか
記者:………?
○○:あなた方のことですよ。
記者:私たち…ですか?
○○:メディアという殺人鬼、おそろしいですね
あなたもそう思いませんか?
記者:………
朝起きて エアコンをつけたとき
フワッと香るアノ匂ひ
家を出るとき ドアを開けると
ムッとする空気の匂ひ
学校に着いて 靴箱を開けると
フッと感じるソノ匂ひ
家に帰るとき 自転車で汗をかくと
フッと感じるアノの匂ひ
夕立ちが降った後 地面から
ムッとするアスファルトの匂ひ
寝る前 天日干しした布団から
フワッと香るソノ匂ひ
「でも、君の匂ひが一番好きだ。」
なんて言ってる自分が
気持ち悪くて、吐き気がするから
くさいものには蓋をして
今日も君に伝える「イイ匂ひ。」
「よお、二段ジャンプ野郎」
例の大男が彼の二段ジャンプ使いの少年に話しかけました。
「……、え、何、俺?」
「お前以外に誰がいる」
「こいつかな」
彼の横には、例の影の薄い少年がおりました。
「して、何用だい?」
二段少年(長いのでこう略します)が問います。
「おう、話は他でもない、先日のケイドロについてだ」
「あー、楽しかったねー。それが何?」
「あの時の二段ジャンプについて色々訊きたい。ありゃあ人間にできる動きじゃなかったぜ」
突然二段少年が狼狽え出しました。こいつは黒だな。
「あ、ああ、あれかい?あれは、ほら、体重移動の仕方と蹴り方の工夫でどうにかなるんだよ」
「馬鹿言え。そんな小説みたいなことがあるか」
「君今結構なこと言ってるぜ……」
「さあ、話してもらおうか…」
そう言って大男が二段少年に向かって一歩踏み出したその瞬間、どこからか、「カツン」と足音のような高く硬い音が聞こえてきました。思わずその音の方に振り向くと、何も無い。しかし大男が向き直ったとき、彼の二人の少年はどこかに消えていました。
と思ったら、少し離れた場所にいました。大男との距離を全力で引き離しにかかっています。大男は、彼らは黒だと確信し、追跡を開始しました。
デリーとボタンを押したあなたは
犬を殺せない人だった
全てが無に還るとき
もうすでにあなたは
この世から消えていた
え、僕って死んでたの?
じゃあこの体って誰のもの?
僕、さっきまで白いTシャツ着てたのに
いつ赤いTシャツに着替えたんだろ?
あと、この手に持っているものは?…ナイフ?
………痛っ。
どうせ希望なんかありゃしないさ。
ドアを開けてすぐそこにあればいいのにね。
努力なんてできるやつだけが誇れるものさ。
手伸ばして届く土みたいなものならいいのにさ。
本当はみんな嘆くはずの唄。
僕と同じように走れないあの日のために。
どうしようもなく這いつくばって
手の甲に涙を一つ落とした
そんな日のために。
浴びる声はどれも紙クズだ
呼び出しをくらって視線を落とした
悪いのは僕なんかじゃない
そう言い聞かせて歩く
僕が正しいなら
みんなとうにいなくなってるはずなのにな
「…まぁ、僕から言えるとしたら、この人たちは敵に回したらものすごくヤバい人たちだって事です、はい」
美蔵は微妙な顔でそう言い切った。
「…そうなの」
わたしはポツリと呟いた。
確かに、この人たちは敵に回さない方が良いのかもしれない。
前に「常人は”異能力”に関わっちゃいけない」と言われた時に恐ろしいと思ったし、美蔵は彼らを見た時に動揺していた。
よくよく考えたら自分はかなりすごい人たちとつながりを持っているんだな…そう思った。
「…ねぇ、そろそろ駄菓子屋行っていい? いつまでもここでグダグダしてるワケにはいかないし」
話に一区切りがついたところで、ネロが切り出した。
「そうだな」
「じゃー行こーぜー」
「…まだ、買い物してなかったの」
みんなが駄菓子屋の方に移動しだす中、わたしは思わず言った。
「…いや、まだなんだけど」
ネロがぽかんとした様子でこちらを見た。
「あ、そう…」
「とりあえず行こうぜ不見崎(みずさき)。僕も用事済んでないし」
ボンヤリしているわたしを美蔵は追い抜かしながら言う。
「え、ちょっと待ってよ!」
わたしはまた置いてかれないように、彼らの後を歩き出した。
〈5.クラーケン おわり〉
きみのめは、わたしをみている。
わたしは、きみのめがみれない。
これはびょうきだ。
こいというなのびょうきだ。
ほかのいきもののめはみれるのに、
きみのめだけがきらきらしていて、
わたしのめとはちがう。
よごれてしまうかもしれない、
よごしてしまうかもしれない。
でもそんな穢れたわたしをだきしめて。
それでふたりで果てまで。
夏は嫌いだ。
大好きな君の顔が見れないから。
君の顔が思い出せなくなってしまうから。
嫌いになってしまいそうだから。
あの笑顔を私だけに見せて、
そして抱き締めて、
思い出が風化してしまう前に。