「“ロヴィン”、ロヴィンね…」
塾からの帰り道、わたしは何気なく昨日聞いたその言葉を反復した。
外はもう薄暗く、雨も降っている。
何となく人名って感じがするけど、誰の事だろう。
まぁきっと、それについて言ってたネロや黎に聞いても答えてくれそうにないけど、とわたしは声に出さず呟いた。
ネロは、は? 別にいいじゃん…て言ってきそうだし、黎はトコトン沈黙し続けるだろうし…
…そういや、なんで黎はあんなにも喋らないんだろう。
まぁああいう人、時々いるから別におかしくないけど。ただ…
「話す気ない、ねー…」
わたしは昨日彼から言われたことを思い出した。
こっちからしたら、かなり刺さる発言だけど…
そこまで言う必要あるかな、と思った。
わたしは確かに普通の人で、“異能力”の事を知ってしまった“例外”、危険視されて、一緒にいるの嫌がられてもも仕方ないけど、なんだかんだで一緒にいさせてもらってるし…
あれ待てよ、とわたしは立ち止まった。
嫌がられても仕方ないし、話す気ないって言われちゃったし…
もしかして。
「わたしって嫌われてる⁇」
わたしは思わず呟いた。
君の
笑った顔も
泣き顔も
怒った顔も
照れた顔も
全部
私だけが知っていたい
いつの間にか降り始めた流れ星は、四人の視界を輝かせては一瞬で消えていく。
そんな感じで時は過ぎ、気づいたときには深夜の一時を過ぎていたらしい。
「まあ、明日休みだしゆっくり帰ろうぜ」
と言う結月の言葉に三人は頷いた。
「アイス食べたいー」
という時雨のわがままにより、四人はコンビニに寄った。
道中、美月と玲が声をそろえて
「「疲れたー」」
と言ってたとか言ってなかったとか。
コンビニについた一行は、それぞれが好きなアイスを買い、食べ始めた。
他愛ない会話をしていると、美月が思い出したように
「でもやっぱり、一瞬で消えちゃうのは、さみしいですよね。流れ星って。」
と言い放った。
「じゃあ、彗星ならいいんじゃね?消えないし、きれいだし。「別離」の象徴でもありながら「再会」の象徴でもある。なんか素敵だしさ。」
そう言う結月の言葉に
「じゃあ、次は、彗星観察だね。」
と時雨が返す。
その言葉に反応して、玲がスマホを取り出し、次に彗星が来るのは何時か検索しだす。
そんな姿を、見ながら、結月は空を見上げながら考える。
彗星なら流れ星よりも強い光で、
夜空を切り裂いて、
真っ暗な天球を繋いで、
「別離」と「再会」という相反する意味を持って、
僕の願いを叶えてくれるのだろうか。
押し殺した悲しみを
寝静まった街に降らせてくれるだろうか。
いつかそんな日がくればいいと結月は考えた。
【一周年記念番外編 天球、彗星は夜を跨いで 終わり】
だいすきな人たちの
名前をなぞりながら歩いた
だいすきな事を
共有しながら笑いあった
ふたりのようで三人
ふたりのようで四人
ふたりの周りには
たくさんのすきが溢れていた
私が私で生きていた
あんなに笑っているのはいつも一緒にいるときで
何を見たって楽しくて嬉しくて
人がいないところをあえて抜けたり
並ぶ店を数えた
やっぱりなにを話したとか覚えきれないくらい
たくさん話してたくさん歩いた
私たちはどう見えてたかな
わかんないけど私は満足です
だからひとつだけ
笑顔をくれてありがとう
嵯峨野吾魂
現在十三代目。吾魂になる前の名前は諏訪諱。
能力 ・どんぐりころころ
志半ばにして死ぬ時、対象に野望、それについての記憶、性格を継承する。対象がその場にいなかった場合、最も親しかったものが受け継ぐ。
・星めぐりの歌
自分の思考、感覚の一部を遮断する。無かったことになる。
作者のコメント
某キャラクターが元ネタ。
嵐山斎六(キタ)
ご存知キタさん。
能力 北風小僧の寒太郎(モノクル)
可視化で見せた幻覚に実体を持たせる。彼にとって『見たことがある、またはその外見をイメージできる』ということは、『それを所持している、またはそれが目の前にある』ということと同義である。
作者のコメント
なんかもう何でもありですね。