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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 7.サイレントレイヴン ⑪

「入りたくないし、使いたくない」
ド直球の発言に、わたしは、はぁ、としか言葉が出なかった。
「別に濡れるの嫌じゃないし…」
そう彼はポツンと呟いた。
いつの間にかその目から光が消えている。
「でもそのネコ…」
「…”ロヴィン”」
「え、へ?」
黎がわたしの言葉を不意に遮ったから、わたしは思わず変な声を出してしまった。
「…”ロヴィン”。こいつの名前」
黎は自分の腕の中にいるネコに目を落としながら言う。
わたしは、その様子を見ながらちょっとぼんやりしてしまった。
この間言葉だけ聞いた”ロヴィン”が、ネコのことだなんて…
ていうか、この人ってネコ好きなのかしら⁇
「…家で、飼ってるの?」
何気なく聞くと、まぁ、とだけ彼は答えた。
「暫く行方不明だったとかそっち系?」
「…」
黎は微かにうなずいた。

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美しい

あなたが言った「美しい」は
あんなにも意味を持って煌めくのに

僕が吐いた「美しい」は
どうしてこんなに薄っぺらいんだろう

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止まった時

自分はずっとあの時から進めていない
どうしてもまだ心が揺れている
君が離れてからずっと
まだたくさんの後悔と幸せな思い出の中でいきている。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 7.サイレントレイヴン ⑩

「…」
フードをいつものように被ったレイヴンは、無言でこちらを肩越しに見る。
…その目は、いつも通り冷たい。
そういう目を向けられて、わたしは少し凍り付いたように動けなかった。
…暫くの間、路地裏に微妙な空気が流れたが、何を思ったのか、レイヴンはまた向こうを向いて駆け出してしまった。
「あ! 待って!」
傘…と言いかけたところで、彼は立ち止まった。
「…傘…ないんなら入れば?」
「…」
…やっぱり沈黙。無視しているのかどうか分からないけど、こうなるのは何となく予想できていた。
…嫌いな奴と帰るのは、誰だって嫌だろうし。
でもこの強くなり始めた雨の中、傘なしで帰るのはちょっとかわいそうだった。
「て…いうか、むしろコレそのまま貸しちゃった方が良い…」
「別にいい」
「へ?」
急に喋ったので、わたしはポカンとしてしまった。