彼女の視界に何かがうつり込んだ。
ばさっ、と音を立てて現れた”それ”が、手に持った黒鉄色の大鎌(デスサイズ)を目の前の精霊に振りかざす。
突然の乱入者に驚いた精霊は、振り下ろされた刃が当たる前に姿を消した。
「…」
大鎌を抱えた”それ”は何もいなくなった雪原を見つめて立っていた。
「…お前、」
グレートヒェンはぽつりと呟く。
「…勝手に戻ったんじゃないのね」
”それ”は無言で振り向いた。
「…別に」
”それ”ことナツィは視線を逸らしながら答える。
「ただ…気になっただけ」
「ふーん。何それ」
グレートヒェンは鼻で笑う。
「まぁ良いわ、助けてもらったんだし…にしても」
彼女はナツィが持つ大鎌に目をやった。
「蝶がかたどられた鎌、ね…やっぱり、”黒い蝶”と呼ばれるだけあるわ」
それを聞くと、ナツィの手から大鎌が消えた。
「…なぁに、隠さなくたっていいのよ。お前の武器なのだから…とりあえず、帰るわよ」
もう寒いでしょう、と言って、グレートヒェンは元来た方に向かって歩き出した。
少し経ってから、ナツィは黙って彼女の後を歩き始めた。
「…という訳で件の精霊を見つけられたのだけど」
「…撤退した、と…」
まぁ仕方ないのよ、とグレートヒェンはテーブルの上に紅茶のカップを置きながら言う。
「もう辺りも暗くなり始めていたし、第一こちらもまだ準備が整っていなかった。―下手に抵抗するよりはマシだと思うのだけど」
自分を好きになるためには、自分の弱いところを真正面から見つめ、受け入れることが必要だと思う。
私は、誰なのだろう?
私は、何がしたいのだろう?
私は、何を求めているのだろう?
私は、なんで泣いているのだろう?
私は、この世界に何も求めていないはず…
友達が悪口言ってたからって…
親がウザイって言ったからって…
親が嫌いって言ったからって…
信頼していた人に裏切られたからって…
家族に殴られたからって…
何をされても傷つかなかったのに…
何も分からない
分からない
今まで何があっても傷つかなかったのに
何で君の「もう会えない」がこんなに心に残るのか
私には…分からない
分からないから苦しいんだ
「恋の駆け引きって、できないよな?
本気で好きならそんなこと考えるひまもない
とか考えちゃうんだよな、最近。」
彼はそういった。
だから、最近の彼はあんなにキラキラ輝いて
かっこよく見えたんだね…。
恋をしたから。
自分だけに話してくれる過去とか
自分だけに話してくれる好きな異性のタイプとか
自分だけに向けてくれる笑顔だとか
先輩のくせに「○○くん」呼びしていいとか
全部都合よく妄想できてしまう
片想いはなんて不自由なんだ
悔しくて泣いた日もあったな
励ましの声が感情のどちらにも転がった
もう辞めようか 耐えられなくなった
どうしようが構いはないけど
今をどうか大事に
こんな日は 幸せがよく似合う日だ
悩み事がある僕も 今はとても幸せだ
暖かい日だ 目に留まるだけでこんなにも
春はいつも僕らの道を照らしてくれる太陽だ
定期便の汽笛が
"サヨナラ"の合図なら
君の最後の嘆き声が
町中に響き渡るね
複雑に入り組んでた
僕の心の海岸線を
君はあの仕草や態度で
削ってくれたね
深い霧が出れば
愛を乗せた船は戻る
そんな望みは瓶に詰めて
蒼い海に流しましょう
白い波止場では
老人が釣りをしている
ウミネコが叫ぶ
それまでだった恋だと
僕のことは
髪の色さえ忘れても
磯の香り、潮騒の音は
忘れないでね…
僕のことは
髪の色さえ忘れても
磯の香り、潮騒の音は
忘れないでね…
たった1本の
「同じ夢」という 細いような 太いような糸で繋がっていた私たちは
その共通点がなくなった瞬間
「バイバイ」って言ったっきりになってしまう
そんなに脆い関係だったんだ
1度は夢見た「理想」になれなかった私を恨むのは
現実にしたかったからか
それとも あなたにもっと近づきたかったからか?
夢、叶えてね
「バイバイ」
風にのってあなたを撮りたい。
いくつ眼があれば足りるのだろうね、
何もかも忘れたくなくて
全ての瞳から涙を流す、あなたを
少しも切り取りたくなんかないのに。
久しぶりなのに君がいて
久しぶりなのに君もいた
そこにいるだけで十分なんて、聞いても安心できないから、言うならもっともなことを言えと、
いつまでも反抗期な私と
朝まで同じこと考えてれば
徹夜できるのかなんて
君はどれくらい馬鹿なのかしら
朝が来るまで横にいて。
そうすればいい夢見れそうなの
そうすればいい未来も消えるさ
春の匂いが温かく包み込む季節になると君はつぶやく。
“春の季節が来たのね”と。
春の風に髪をなびかせ少し寂しそうに笑う。
君の横顔は“別れの季節ね”と言いたいようだった。
いつも綺麗な君の横顔は今日も綺麗だが、
桜が舞うたびに哀しそうな顔になる。
春の匂いがすると君が哀しそうな顔をするから、
この季節は嫌いだ。
それに今年は
僕も別れをつげなければいけない。
君も僕と同じ人に別れをつげるから、
いつもより寂しそうな顔なんだろうな。
君は言った。
“じゃあ行こうか。あの人のところへ。”
僕はこれから、あの人にさよならを伝えに行くんだ。
爪先を穿つ雨雫
泣きたくなるような石畳と雨の匂い
雑踏で名前を呼ばれたような気がして
振り向いてしまうような
ほんの刹那夢を見せてあげる
楽しい夢でもとびっきりの悪夢でも
ほんの刹那夢を見せてあげる
この上なく安っぽいその夢を
雨に打たれて燃え尽きて
灰も残らず左様なら
次には忘れてしまえるほどの
ほんの刹那夢を見せてあげる