ライオネルはため息をついた。
「もういい、リアム」
リアムはさも残念そうに落胆の声を挙げる。
「えー、なんで?この女、おうさまのこと殺そうとしてたんだよ?相応の報いは必要じゃない?」
「そういった考え方は前王の時代だけで十分だ」
ライオネルは吐き捨てるように言った。
「誰に命じられた」
聞かれた真っ青な顔のメイドは、今にも倒れそうであったが、口を引き結んでいた。
ライオネルのただでさえ鋭い眼光が、よもや凶器と呼べるほど鋭利なものになる。
リアムはといえば、既に飽きたかのようにソファに座り、窓から差し込む光にナイフをかざし、手入れをしていた。
ライオネルは瞳を揺らす。
「では、問いを変えよう。捕らわれているのは誰だ?」
「……私の、ただ一人の肉親、父でございます……」
空間が決壊した。リアムはぎょっとしたようにライオネルを見る。
「おうさま、泣かせたの?今度はどんな__」
「馬鹿者。
__誰に命じられたかを言え。即急に救い出す。今ならまだ間に合うだろう」
ライオネルに促されメイドの口から紡がれた言葉に、ライオネルはため息をついた。
「反吐が出る」
疲れていた。何にって言われても、そう簡単に答えが出るようなものではないことは、僕が一番わかっていた。
昔から不器用だった。運動もできず、勉強もできず、何をしていてもダメ出しを食らうことは日常茶飯事。正直こんな人生やめてやるって何度も思った。こんな人生終わってしまえって思っていた。
だから泣かせにくるのが見え見えなラブストーリーも、ああ、こいつ死ぬだろうなって分かるキャラクターも、好きになれなかった。どこか達観していたのだろう。それなりに。
そうやって何十年も生きてきた。行き着いた道は誰もが「普通」の象徴として掲げる、サラリーマンの姿だった。だけど、それなりに人生の楽しみ方を見つけていたつもりだった。通勤の電車で人間観察をする、ということ。いかに楽をして生きられるか、湯船に浸かりながら考える、ということ。どんな死に際なら、最期くらい世間に注目されるか、ということ。
僕はたくさん考えてきた。それなりに。
医者なんて怖い被り物だと思うことにした。どこか似ている気がするから。子供は大声で叫びながら連れていかれるし、病名を告げるAIのように無機質な声なんて気味が悪いほど似ていた。
僕の寿命を宣告しやがった時だって、少しくらい同情の念くらい差し出せばいいのに、ぐっと何かを押し殺して言っていることくらいバレバレだ。
僕を支えてくれた妻に、あと少ししか生きられないことを告げなければいけなかった時、かすかにベッドのシーツを握ってガラスのように脆い涙を流した。子供の頃からヒーローになりたいなんて白昼夢だと分かっていた僕だから、涙なんて初恋が叶わなかった時以来かもしれないなあ、なんてそう思った。
ベランダに漏れる灯りが
ひとつまたひとつと消えてゆく
汽水域の24時
遠くの工場地帯咳こむ星たち
常夜灯の下にはラブソングみたいな二人
頬を赤らめた月と囃し立てる夜光虫
さあすべてを忘れてムになろう
向かい合う闇の先
水を切る音に耳をすまして
どんな言葉もこぼれおちていくよ?
違う違う違う
またこうやって、詩にして
乗り越えたつもりになってるんでしょ
理解して整理したつもりになってるんでしょ
それは線香花火みたいなわずかな光だった。
でも、久しぶりに思い出したその熱と光は、夢だと分かっていても愛おしいものだった。
だから、ありがとう。
もう打上花火は上がらないと知っていても、そのわずかな煌めきは希望になってくれたよ。
空いている窓から風が吹き抜ける。カーテンが揺れた。窓の外は快晴、奥に広がるは昼下がりの森林。どこからともなく狼の遠吠えのようなものが、風に運ばれてくるようでさえあった。
扉を軽く叩く音がする。
「失礼いたします。お茶を持って参りました。少し、休憩なさってはいかがですか」
メイドである。
「そうしよう」
ほっと息をつき、応えたのは王。名を、ライオネルという。
香るは果実、透き通った赤い色が、白い陶器に注がれた。
「今日はローズヒップか」
「はい」
そう微笑むメイドの手は、心なしか震えて見えた。
ライオネルは、眉を顰める。
「……具合が悪いのか?給仕などいい。休め」
再びカーテンが揺れた。椅子から立ち上がりかけたライオネルは、これ以上ないというほど、顔を顰めた。
「……お前は何をしている、リアム」
「何って、それはこっちのセリフだよ、おうさま」
注ぎ終えたカップを持つメイドの手は、完全に震えていた。カップの中に生まれていく波紋が痛々しい。
リアムと呼ばれた青年は、どこから現れたのかメイドの背後に立ち、メイドの喉元にナイフをあてがっている。
「キミ、何してるの?」
「お、お茶を……」
震えた声で応えるメイドに、リアムは口角を上げた。ぞっとするほど優しい微笑みだった。
「へぇ……苦しみながらそのお茶飲むのと、一瞬で喉かっ裂かれるの、どっちがいい?選ばせてあげるよ」
神様が動物たちにこう言いました。
「元日の朝に最初に挨拶に来た動物十二種類を一年に一種類、十二年周期でその年のボスとする」
牛は歩くのが遅いので、前日の夜から家を出ました。鼠はその背中にこっそり乗りました。
まだ日の昇らない薄暗い頃にに牛が神様の家へ着くと、既に家の前には多くの動物が並んでいました。
牛が前に居た動物に尋ねると、
「俺も驚いたよ。だって四時起きしたのに既にこの行列だぜ?」
その前に居た動物に聞くと、
「俺なんか徹夜で日付が変わった瞬間にダッシュしたってのにこの順位だぜ。全く、家が遠くなきゃもう二十は上の順位だったぜ」
その更に五つか六つ前の動物に聞くと、
「馬鹿だなあ、いや、牛か。こうゆーのは前日から並んどくに決まってんだろ?」
そこに神様が現れ、言いました。
「徹夜組は駄目。そこより前は全員退場。」
大方の動物は残念そうに去っていきました。
「え、俺が一番っすか?恥ずかしいなー……。そうだ兎!お前に前譲ってやんよ!」
虎が言いました。
「いやいや、アジアン百獣の王様の先を行くなんてとてもとても」
兎がやんわり断りました。
「いや……すぐ後ろにドラゴン連れといてそりゃあねーだろ……」
「それは許したって。我も怖い」
すると前から四番目に居た蛇が叫びました。
「げえっ、このままだとわちき四番目!?嫌だ嫌だ。四って数は縁起が悪いんだ。そうだ牛、せっかくだし俺の前行って良いぞ。それでも俺ランクインするし」
「四が無理な割に四時起きだったのか……」
「げえっ、そういえばそうだった」
「何ならわしの前もドゾ」
「マジすか。あざっす龍の旦那」
「ああ、虎さん、ちょうど良い奴がやって来ましたよ」
「おお、牛よ!俺の前に行ってくれないか?流石に一番は……」
「あ、ありがとうございます」
そして牛が緊張子ながら門をくぐろうとすると。
「グズグズしてんなら先行かせてもらうよ」
鼠がその背中から飛び降り一位になりました。
「寂しくないの?」
そう聞かれて私は
その言葉のチョイスはズレてると感じた
無いことに対する痛みは
与えられた 与えられていた者しか感じない
寂しさも同じ
最初から存在というステップを踏んでいない私にとっては
その痛みは
理解不能な不思議な事でしかない
何がって?
さぁね
あなたにとっては 「大切」 なのかも ね
いつも来る、あのお客さん。
どんな人かなんて知らない
きっと誰にでも優しくできる人
手が届かない世界にいる
勇気出したら届くのかな
いや届くんだ絶対に
あのひ
おおきなせなかにあこがれていて
いまがある
とんでみようか
りろんとかきまりごととかぜんぶむしして
朝は小鳥の単調な歌を
聴きながら迎えるものです。と
壊れかけのラジオから
君が拾ったのは
「僕」という世界でした
君はいつも外にいる
君はみんなの目には見えないのをいいことに
いつの間にか胸の奥に入っていく
時に命を滅ぼす君は
いつになったら消えていくのか
もうストーカーはやめないか
降り続ける雨の音
暗闇の中落ちていく
小さな小さな宝石たち
やまない雨はない なんて
きっと嘘だと目を閉じて
涙を雨のせいにして
まだやまないで
誰も来ないでと
宝石たちに埋もれていく
そろそろ雨はやみはじめ
月のうつる水たまりは
深い黒色に輝き出す
夜はまだ長い。
あぁ会いたいな
その笑顔に触れたくて
その声を聞きたくて
「大好きです。」って言いたくて
フィクションの世界が
今、目の前の現状に置かれると
人間は誰でも一瞬止まり
悪いことなら憎しみが生まれ
いい事なら嫉妬が生まれる。
そして消えるのは信頼
四つ折りにした淡い想いは
誰に気づかれることもなく
ヒラヒラと風に舞い
あなたにとっての明日が
普通のものであるように
私にとっての明日は、少し特別
ぼんやりとした気持ちは
到底世界に敵いはしなくて
けれどあなたにだけは届いてほしかった
強い人ばかり前に進んで行く
わたしはずっと此処に居る
知らないところで泣いてる誰かの涙が
落ちた瞬間に光ればいいな
願いは染みて消えていくのに
心は沁みていくだけです
真っ暗な心を照らしたきみは
まるで星みたいで
ろうそくみたいな力が
ぼくにはちょうどよくて温かかった
夢の中は不思議なんだ。色々な事が思い浮かんで
脈絡無く切り替わる。時には過去に行って
今に戻って。現実での経験が無い事を夢の中で
する。感覚も同じなのに同じ事をしているのに
全て安らぎの感覚なのはどうしてだろう…
雨が降って
晴れになって
風が強くて
明日の天気なんかだれも知らない。
とにかく今は不要不急の外出は控えましょう。