初めて見るのがこれっていうのはかわいそうだよな、と大賢者は思う。実は現在魔法使いたちが戦っているだろう海の向こうの3万のファントム軍の構成のほとんどは、イツキたちが普段慣れ親しんでいる獣型のファントムなのだ。初めてみたファントム軍が武骨な鎧武者みたいな人型じゃなかったら、もう少し彼の精神も安定していたかもしれない。
普段見慣れているファントムでも、3万も寄り集まった光景だったらなかなかに地獄だろうが。
(……まあ君の出番はもう暫くないからゆっくりしていてくれたまえ)
心の中で優しく語りかけてから、大賢者はバックミラーの方に目を移す。
さてと。
鏡写しの少女は大賢者の視線を受け止めると、神妙に頷いた。
私の出番もそろそろ終わり。魔法陣を発動させれば、あとはこの子に託すことになる。
***
遅くなりました(毎回言ってる気がする)、#12更新です。
もっと早く更新できれば良いのですが、こういうので書ききった例がないので……。もしかしたらまた時間かかるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
そういえばイツキはこれ見るの初めてだったなー。
先ほどに続き二つ目の魔法陣を描いている大賢者の頭は、真剣な表情とは裏腹に雑念で満ち溢れていた。魔法陣の生成は非常に難しく、普通の魔法使いならひたすら集中力を注ぎ込んで作らなければならないが、人間など軽く凌駕している大賢者にとっては造作もない。昔から遊び慣れてきた玩具を弄ぶように杖を振り、魔法の線を次々と描いていく。今回のような規模が大きい魔法陣は無駄に生成時間ばかり長く、こうして全く関係ないことを考えながら組み立てることも大賢者にとっては日常茶飯事であった。
イツキが見るのが初めてな”これ”とは魔法陣のことではない。大攻勢のことだ。
前回の大攻勢が起きたのがおよそ20年ほど前。イツキは当然幼く、魔法使いという存在も知らなかった頃。大攻勢の様子など映像に残せるようなものでもないから、今の世代は口伝えにしか大攻勢の様子を知らない。
初めて見た”大攻勢の敵”は、どうやらイツキの想像の遥か及ばない存在だったようだ。かなりのショックを受けたようで、ちらりと横を見れば、運転席で呆然としているのが見える。
サヨナラは悲しい言葉じゃない
有名な曲に確かそんな詞がある
本当にそのとおりだと思う今日
「さよなら」を交わした放課後
少しだけ目を細めるきみの姿が
夕日に照らされてより眩しくて
咄嗟に閉じた瞼にもきみの姿を
焼きつけてゆっくり家へ帰るよ
パラレルスペック 12th. 詩集
『PINOCCHIO[ピノキオ]』
01. PINOCCHIO
02. 魔法の国のアリス
03. シンデレラ・リバティ
04. 灼けたマーメイド
05. 少女B
06. ロンサム・ビーチ
07. 鳥になって
嘘ついて
ズルもして
陰口も言って
可哀想なオマエ
わたしの時間還せ
名前も呼びたくない
だからオマエはオマエ
もうアナタには戻れない
金輪際関わらないでほしい
でもそれでもあの日あのとき
ワタシたちがおしゃべりしたり
笑いあったり一緒に弁当食べたり
そんな何気ない日々は偽りじゃない
そう信じ続けているワタシの愚かさよ
「ねみぃなぁ」
思わず漏れた感想を紛らわすように携帯をつつく手のスピードを上げた
朝は嫌いだ
日光に全てを吸い取られる感覚がするしこれから長い時間集団生活に拘束されるのだと思うと気が重い
「おっはー.....って眠そうだね何時に寝たの?昨日」
正直初瀬の挨拶が若干目覚まし代わりになりつつある
「4時」
「寝てなすぎっしょ」
寝ないのは明日が来る事への抵抗かもしれない
日付が変わっても寝ない限り自分の中では1日が終わっていない気になれるから
でも結局日付は変わるし次の日眠いしで良いことは1つも無い
「じゃ行くか」
「おっす」
正直学校へ着いた後からは
放課後を迎えるまでほぼ記憶が無い
大体寝てたからだろうか
重い身体を起こし目を擦りながら文研部の部室へ歩みを進めていると
「どこだっけなぁ、えーんと」
僕の目の前で
見慣れた制服を来た見慣れない女の人がキョロキョロしていた
見慣れないという事は恐らくは上級生だと思うが
「おっ、人居た」
げっ、見つかった
と正直思ってしまった
関わらずに通り過ぎるつもりだったからだ
「キミ、キミ、キミ、特殊工作室ってこの棟の所にあるって聞いたんだけど知らんかな?」
「えっと、それなら外に見えるあのボロ小屋ですけど」
「えっ、外なの?マジかーミスったなこりゃ
ありがとう。じゃ、またねー」
そういうと見慣れない上級生は走り去って行った
廊下ダッシュ禁止
生徒指導部がこれでもかと貼っているポスターが如何に仕事をしていないか
「変な奴多いなここ」
ちなみに僕はこの後もっと変な奴らと出会う事になるがそれはまた次の機会に
夢を見ていたあの頃
まだ何も知らなかったあの時
世界の不思議も身の回りの何故も
誰かに聞けば教えてくれた
でも今は?
失恋の痛みを知っても、この痛みの治し方は
誰も知らないみたいだね
誰に聞いても分からない
小さい頃よく聴いた
童謡の一節には
こんな意味があったのかな
嗚呼
ほら
月が
綺麗
あゝ。
月と星
美しい
今宵は
貴方と私
この夜に
愛を謳う
人は今日も
月を見上げ
俯く人々も
そっと
顔を上げる。
まだ君が私のヒーローだった頃
ひとりぼっちで影に落ちそうだった私を
君がたくさんの言葉で助けてくれたのに
私が今寂しいのは
君のせいだってこと
君はきっとわかってない